だいぞう
ポーターの3つの基本戦略とは、
- コスト・リーダーシップ戦略
- 差別化戦略
- 集中戦略
の3つの戦略のことです。
なお「集中戦略」は「コスト集中戦略」と「差別化集中戦略」の2つに別れるため、実際には4つの戦略があります。
ポーターの3つの基本戦略のマトリクス
ポーターの3つの基本戦略は、1980年にマイケル・ポーター教授によって発表された戦略のフレームワークです。
「戦略的ターゲット」と「戦略的優位性」の2つの軸から、「コスト・リーダーシップ戦略」「差別化戦略」「コスト集中戦略」「差別化集中戦略」の4つの戦略が導き出されます。
さらに中心には、いずれの戦略も取ることができない「窮地(Stuck in the Middle)」に立たされた企業がいるとされます。
発表当時は「コスト優位」と「差別化」のどちらかという極端な理論でしたが、その後ポーター教授自身も、「コスト優位」と「差別化」は同時に実現できることを認めています。
そしてその両方を実現する戦略を「ハイブリッド戦略」と呼びます。
この「コスト優位」と「差別化」はいずれも、得られる利益(=価格ー原価)を増やすという点では共通しています。
- コスト優位 → 原価が押し下げられて利益が増える
- 差別化 → 価格を維持または上げることが出来て利益が増える
前述のファイブフォース分析が「他の業界より儲かるかどうか」に焦点があるように、3つの基本戦略は「他社より儲かるかどうか」に焦点があります。
コスト・リーダーシップ戦略
コスト・リーダーシップ戦略とは、
- 業界全体に対して圧倒的な低コストを武器に戦うコスト優位な戦略
のことです。
この「低コスト」というのは、安売りや低価格戦略のことではありません。「低い費用」「低い原価」という意味です。
大規模な設備投資などを行い、規模の経済やオペレーションの改善などの経験曲線効果を追求することで、製品の生産にかかる費用を大きく引き下げることで実現します。
また製造だけでなく、原材料の調達や商品やサービスの提供に至るまで、バリューチェーン(価値連鎖)がすべて一体となって費用を下げる取り組みを行います。
費用(コスト)の下がった分はすべて利益になります。この利益をもとにさらなる投資や効率化を行い、他社が追随できないように戦います。
利益は「マージン」とも呼ばれています。コストとマージンの関係は、バリューチェーンの記事も参照ください。
コスト優位とファイブフォースとの関係
コスト優位であれば、競争圧力に対して有利に働きます。
- 新規参入の脅威:供給量の増加で価格が下がっても利益が出せる
- 代替品の脅威:低価格な代替品に対抗して値下げしても利益が出せる
- 顧客の交渉力:値下げ圧力が強くても利益を出せる
- 供給業者の交渉力:原料価格が高騰しても競合より利益を出せる
- 既存企業のポジション争い:価格競争に突入しても長期戦で勝つことができる