【書評】FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 − ハンス・ロスリング 著

あなたは今の世界の本当の状況を、どれだけ正しく知っているでしょうか? 著者ハンス・ロスリング氏は、私たちは10の思い込みによって「ドラマチックすぎる世界の見方」をしているためだと説きます。この本を読めば、10の思い込みを払拭して世界の見え方が変わるかもしれません。

今回はAmazon ビジネス・経済書 売れ筋ランキング(2019年1月14日) より、ハンス・ロスリング氏の「FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 」の書評をお送りします。

※ 一田氏による読了後の違和感に対する考察記事と、本書訳者の上杉氏による補足情報へのリンクを追記しました(2019/03/12)

この本を一言で表すと…

皆が世界をドラマチックな見方をしていることを「チンパンジー以下」と煽りながら、ドラマチックに反論している本です。

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング, アンナ・ロスリング・ロンランド
1,944円(06/25 23:00時点)
発売日: 2019/01/11
Amazonの情報を掲載しています

恣意的なデータでドラマチックに煽る

本書は医師で教授のハンス・ロスリング氏が世界の貧困や医療について、みんなの思い込みを覆すデータを紹介しながら「ファクトフルネス」という考え方を伝える内容になっています。

チンパンジークイズ

書籍の冒頭には13の三択問題があって、これらの質問の答えの解説がその後400ページに渡って書かれています。ここで事前のオンライン調査での平均正解率が、12問中2問と非常に低いことが強調されているのですが13問あるのに「12問中」??? なぜか特定の1問を除いた平均正解率です。

この正解率の引き合いには、チンパンジーが登場します。要するに適当に選んでも三択問題なので3分の1は正解するということなのですが、平均正答率33%以下の問題が出てくるとちょいちょい登場して煽られます。

著者の主張を正当化するデータ

この本は全体にわたって、人々の思い込みや心理的な偏りを指摘しながら様々な「ファクト」を伝える内容です。それらの「ファクト」は世界中の統計データが元なのですが、残念ながら時々データの使い方に恣意性を感じました。

読者の10の思い込みを否定するために、否定できるデータだけを「ドラマチック」に畳み掛けたりします。またグラフには時々「対数目盛(グラフが圧縮して見える)」が使われているのですが、なぜその統計データは「対数目盛」なのかの説明はありませんでした。

(これらの疑問や違和感に関しては、後日訳者の上杉氏がブログで回答されています。こちらのページも参照ください。「『ファクトフルネス』批判と知的誠実さ: 7万字の脚注が、たくさん読まれることはないけれど」 

煽りに反応した人が対象読者

下記のような人は、本書がターゲットとする読者かもしれません。

  • アフリカやアジアには痩せこけた子供がたくさんいると思ってる人
  • 世界の貧困や医療衛生環境について興味がある人
  • 「〇〇が大絶賛!」という謳い文句に弱い人

全体を通してロスリング教授の様々な体験に、統計データを交えた面白いエピソードが語られています。特にアフリカやアジアの貧しいイメージを払拭するような内容が多いため、そのようなイメージがある人は読んでいて面白いと思います。

またロスリング教授は、長年世界中の貧困や公衆衛生に携わってきた人物なので、そのような分野を志している人にもおすすめです。

帯にはビル・ゲイツ氏が「大絶賛」したと書かれていて、手に取る人が「素晴らしい本に違いない」と考える「思い込み」をうまく利用しています。そのため、この謳い文句に反応した人は、「10の思い込み」に陥っている可能性が高いはずです。

統計データを解釈する方法は書かれていない

一方、タイトルに「データを〜」とあるので、統計データの読み方も書かれていると思いきや、ほとんど書かれていません。第1章や第3章で「平均値」「対数目盛」「分布」について少し触れているものの、統計データを読み解くための本ではないため最低限の内容になっています。

この本には統計データが大量に参照されているものの、統計データを読み解くための力は付きません。そのため統計データの読み方に慣れていない読者は、ロスリング教授が挙げるデータを「そういうものだ」と信じて受け入れることしかできません。

思い込みを払拭することを目的としている本なのに、ロスリング教授の主張や根拠となるデータは思い込むしかないという、矛盾を抱えた1冊です。

【追記】 さらに理解を深めるための情報

読了後の違和感については、作家の一田和樹氏による深い考察記事があります。読んで違和感を感じた方は、こちらの記事が参考になります。

参考 大ベストセラー『ファクトフルネス』に抱いた、拭いきれない違和感と困惑 − 一田和樹ハーバー・ビジネス・オンライン

また、訳者の上杉周作氏が自身のブログにて、読者の感じる違和感や内容に対する批判に回答されています。私が感じていた違和感もいくつか解消されました。こちらの記事も、本書を読んだ後に読むことをおすすめします。

参考 『ファクトフルネス』批判と知的誠実さ: 7万字の脚注が、たくさん読まれることはないけれど上杉周作 本を読む時間がない、という時は
なかなか読書の時間を取れない人には、要約サービスやオーディオブックがおすすめです。

要約サービスのflier(フライヤー)は、1冊の本が10分ほどで読める分量にまとめられているので、ひと駅移動する間に1冊読めちゃいます。さらに要約を音声で読み上げる昨日もあるので、オーディオブックとして使うこともできます。アマゾンのAudible(オーディブル)や audiobook.jp は、ビジネス書を一冊丸ごと朗読してくれます。クルマでの通勤時間が長い方や、徒歩での移動時間が多い方には、オーディオブックがおすすめです。自分で使ってみた感じでは、話題のビジネス書のラインナップは「flier(フライヤー)」が一番充実しているイメージです。いずれも無料のお試しキャンペーンなどをやっているので、気になる方は確認してみてください。
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング, アンナ・ロスリング・ロンランド
1,944円(06/25 23:00時点)
発売日: 2019/01/11
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書籍の目次
  • イントロダクション
  • 第1章 分断本能 「世界は分断されている」という思い込み
  • 第2章 ネガティブ本能 「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み
  • 第3章 直線本能 「世界の人口はひたすら増える」という思い込み
  • 第4章 恐怖本能 「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み
  • 第5章 過大視本能 「目の前の数字がいちばん重要」という思い込み
  • 第6章 パターン化本能 「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み
  • 第7章 宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
  • 第8章 単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
  • 第9章 犯人捜し本能 「だれかを責めれば物事は解決する」という思い込み
  • 第10章 焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
  • 第11章 ファクトフルネスを実践しよう
  • おわりに
  • 付録
  • 脚注
  • 出典


タイトルFACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
著者
出版社日経BP社
ISBN-13978-4822289607
発売日

(Amazon 登録情報より Reviewed by  2 out of 5