【書評】日本人の勝算:人口減少×高齢化×資本主義 − デービッド・アトキンソン 著

人口減少と超高齢社会の進行は、日本が直面している大きな社会問題です。日本人がそれらの問題に立ち向かうには、現在の日本政府の政策は有効なのか? 何が問題の根源で、どう解決していかなければならないのか? 他の国はどのような対策をして、どのような研究結果が得られたのか? この本を読めば、今の日本人が何をすべきかわかるかもしれません。

東洋経済オンラインのAmazon週間ビジネス・経済書ランキング(2019年1月13日〜19日) より、デービッド・アトキンソン氏の「日本人の勝算:人口減少×高齢化×資本主義 」の書評をお送りします。

必読!ビジネス書ベストセラー 2019年1月 厳選5冊

この本を一言で表すと…

日本が抱える社会問題の根源である「生産性の低さ」に対する提言を、様々な論文や研究結果を元にロジカルに説明してくれる本です。

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

デービッド アトキンソン
1,620円(04/23 18:27時点)
発売日: 2019/01/11
Amazonの情報を掲載しています

具体的には?

元ゴールドマン・サックスの共同出資者で、現在は「株式会社小西美術工藝社 」という日本の重要文化財の修繕や補修を行う企業の会長兼社長であるデービッド・アトキンソン氏が書いた本です。日本が直面している「人口減少」と「超高齢化」という社会的課題に対して、「生産性の向上」という視点で様々な提言をしています。

この本はとにかくロジカルで読みやすい、の一言につきます。各章ごとの理論展開はもちろんのこと、この本全体を通して、しっかりとした理論の道筋が通ってます。そしてそれぞれの章を論じる流れも、スムーズであり、読者が欲しいと感じる情報が順序立てて提供されます。各章の扉ページの裏には、その章の要約が書かれているため、読み返すのも楽です。

また扱っている統計データや理論についても、信頼のできる情報ソースや学術的な研究論文が元になっています。そのため論拠の信頼性は高く、安心して読むことができる本です。

この本のメインとなる「生産性の向上」については、様々な側面から考察がされています。さらにアトキンソン氏の提言に対して想定される反論についても、ちゃんと答えが用意されています。そのため批判的な読み方をしても、納得感が高いと感じました。

ちなみに同時期に発売された本として、投資家ジム・ロジャーズ氏の著書「お金の流れで読む 日本と世界の未来 世界的投資家は予見する 」がありますが、こちらは「品質の向上」を論点としています。一緒に読むと面白いはずです。

【書評】お金の流れで読む 日本と世界の未来 世界的投資家は予見する – ジム・ロジャーズ 著

第3章は輸出や観光についての書かれているのですが、そのような産業に関わっている人にとっては基礎的な知識としてぜひ目を通してもらいたい内容です。また第6章は経営者にとって、最低賃金の引き上げに対してどう向き合うべきかのヒントが得られるはずです。

備忘録

この本を読んで、目に留まった内容を箇条書きしておきます。この中にピンとくるフレーズや興味深い内容があれば、ぜひ書籍を読んでみてください。

  • 電子部品などの中間財を「輸入」する国の生産性が上がるという研究結果が複数ある(そして日本は電子部品などの中間財を輸出しまくっている)
  • 大企業の方が所得が高くて生産性も高い(しかし日本は中小企業が99.7%)
  • 最低賃金を徐々に引き上げたイギリスは生産性が上がったが急激に上げた韓国は失敗した
  • 最低賃金の引き上げと人材教育はセットで行わなければならない
  • 最低賃金を引き上げても失業への影響がないという予想外の結果が出た
  • 最低賃金の引き上げでは特にサービス業の生産性が改善した
  • 最低賃金の引き上げで生産性の低い企業が淘汰されて生産性の高い企業の雇用が増えた

誰が読むべき?

  • 日本の行く末が多少なりとも心配な人
  • 経済学を少しでもかじったことがある人
  • 理論展開や構成がしっかりしている本が大好きな人

アトキンソン氏の文章からは、日本に対する愛情のようなものが感じられ、日本の将来を真剣に考えていることが伺えます。日本の将来が心配な人にとっては、非常に興味深い内容だと思います。

本書には統計データや経済学の用語がたくさん登場します。そのため経済学の知識や用語について全く知識が無い場合は、ちょっと読みづらいかもしれません。逆に経済学をかじったことがある人は、内容がどんどん頭に入ってくるでしょう。

また、あなたがロジカルに物事を考えるタイプの人であれば、非常に読みやすく感じるるはずです。論の展開が美しく、根拠となる統計データも信頼性が高く感じます。本全体に対して一貫性が見られ「この本を書いた人はめちゃくちゃ頭が良いんだろうな」と感じ取ることができます。

書かれていること書かれていないこと

書かれてること
  • 人口減少に対する課題と対応策
  • 高齢化に対する課題と対応策
  • 日本企業の生産性向上の重要性と実現のための提言
書かれてないこと
  • 企業が生産性を向上させるための具体的内容や事例

この本は日本の行く末を案じているだけあって、メインに取り上げている「人口減少」と「高齢化」についての課題と対応策も、マクロ的な側面から提言されています。また日本企業の特徴を取り上げ、生産性向上の重要性を解いています。

一方で、例えば翌日から実践できるような、生産性を改善する具体的な方法については言及されていません。しかし中小企業経営者にとって、とても刺激的な内容です。この本から得られることは多く、広い視点で今の日本に起こっていることが考えられるようになるはずです。

本を読む時間がない、という時は
なかなか読書の時間を取れない人には、要約サービスやオーディオブックがおすすめです。

要約サービスのflier(フライヤー)は、1冊の本が10分ほどで読める分量にまとめられているので、ひと駅移動する間に1冊読めちゃいます。さらに要約を音声で読み上げる昨日もあるので、オーディオブックとして使うこともできます。アマゾンのAudible(オーディブル)や audiobook.jp は、ビジネス書を一冊丸ごと朗読してくれます。クルマでの通勤時間が長い方や、徒歩での移動時間が多い方には、オーディオブックがおすすめです。自分で使ってみた感じでは、話題のビジネス書のラインナップは「flier(フライヤー)」が一番充実しているイメージです。いずれも無料のお試しキャンペーンなどをやっているので、気になる方は確認してみてください。
日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

デービッド アトキンソン
1,620円(04/23 18:27時点)
発売日: 2019/01/11
Amazonの情報を掲載しています
書籍の目次
  • 第1章 人口減少を直視せよ―今という「最後のチャンス」を逃すな
  • 第2章 資本主義をアップデートせよ―「高付加価値・高所得経済」への転換
  • 第3章 海外市場を目指せ―日本は「輸出できるもの」の宝庫だ
  • 第4章 企業規模を拡大せよ―「日本人の底力」は大企業でこそ生きる
  • 第5章 最低賃金を引き上げよ―「正当な評価」は人を動かす
  • 第6章 生産性を高めよ―日本は「賃上げショック」で生まれ変わる
  • 第7章 人材育成トレーニングを「強制」せよ―「大人の学び」は制度で増やせる


タイトル日本人の勝算:人口減少×高齢化×資本主義
著者
出版社東洋経済新報社
ISBN-13978-4492396469
発売日

(Amazon 登録情報より Reviewed by  5 out of 5