【書評】天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ − 北野唯我 著

「職場の上司とうまくコミュニケーションが取れない」「同僚は立ち回りが上手いのに自分とは何が違うのか」「部下が何を考えているのかわからない」など、職場では人間関係の悩みが尽きないものです。

しかし「天才・秀才・凡人の才能論」のエッセンスを学べば、職場でのコミュニケーションが上手くいくようになるかもしれません。

今回はAmazon ビジネス・経済書 売れ筋ランキング(2019年2月11日) より、北野唯我氏の「天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ 」の書評をお送りします。

この本を一言で表すと…

社内で新しい取り組みが受け入れられず、イノベーションが殺されるメカニズムに「才能」という視点からメスを入れた本です。

天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ

天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ

北野 唯我
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発売日: 2019/01/17
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具体的には?

「天才を殺す凡人」は、主人公「青野トオル」が忠犬ハチ公「ケン」のアドバイスを受けながら、成長していく物語です。読者は物語を通して、主人公トオルと一緒に「天才・秀才・凡人の才能論」のエッセンスを学ぶことができます。

「天才・秀才・凡人の才能論」とは、人が持つ才能を、

  • 創造性を持つ天才
  • 再現性(論理性)を持つ秀才
  • 共感性を持つ凡人

の3つに大きく分けて、その関係性を説明するものです。

元となったブログ

この本の内容は、著者の北野氏が「はてなブログ」に投稿したこちらの記事が元になっています。

参考 凡人が、天才を殺すことがある理由。ーどう社会から「天才」を守るか?『週報』 北野唯我のブログ。

「天才・秀才・凡人の才能論」の要点はすべてブログに書かれているため、まずはブログに一通り目を通してみるのが良いかもしれません。

ブログに対する書籍の位置付け

じゃあなんでブログに書かれているのに、本を買う必要があるのかというと2つの点が挙げられます。

  • ストーリーによる読みやすさ
  • 複数のブログ記事の統合

まずこの本では「天才・秀才・凡人の才能論」の要点がストーリーを通して学べるようになっており、読者の疑問点も主人公と狂言回し役のケンのやり取りで丁寧に解説されます。そのため内容がスムーズに理解できます。

またブログでは上記の記事だけではなく、複数の記事に理論が分散していました。しかしこの本ではブログの記事としてバラバラになっていた内容も、1つの物語として統合されているため読みやすくなっています。

才能タイプが無限に存在するという矛盾

著者の北野氏は最後の「解説」の章で、世の中の「自己分析ツール」や「才能に関する本」は才能の種類が20~30以上にも分かれていることが問題だと指摘します。

才能の分類が多すぎると、

  • ビジネスの現場で具体的にどう活かせばいいかわからない
  • 才能の種類が多すぎてわからない

という問題が発生するため、この本では「創造性」「再現性」「共感性」の3つに絞り込んだと言います。

本書の冒頭でも「自分がどれに近い人間か?」という問いで、「天才(創造性)」「秀才(再現性)」「凡人(共感性)」の特徴をあげています。読者はなんとなく「自分はこれかな?」と想像しながら読み始めることができます。

しかし物語が進んでいくにつれて状況は複雑になります。物語の登場人物と合わせて「天才」「秀才」「凡人」「エリートスーパーマン」「最高の実行者」「病める天才」「サイレントキラー」「共感の神」という9つのタイプが存在していることが明かされます。

これらの9つのタイプは「創造性」「再現性」「共感性」の比率で説明できるといい、「エリートスーパーマン」のいち例として、

  • 創造性:再現性:共感性 = 5:1:4

という比率が挙げられています。

もしこの比率が人によってみんな違うということであれば、実際にはタイプが無限に存在することになってしまいます。

著者の北野氏は、既存の才能分類ツールの問題点を解決するために3つの才能に絞り込んだと言います。しかし後半に才能の「比率」という考え方を持ち込んだため、矛盾が生まれ、混乱してしまう読者も少なくないかもしれません。

イノベーターのジレンマとの共通性

この「天才を殺す凡人」で素晴らしかったのは、「天才」の振る舞いや革新的なアイデアに対する「秀才」や「凡人」のリアクションから、組織内でイノベーションが阻害されるメカニズムを指摘している点です。

文中の、

  • 「天才は二度殺される。一度は成果を出す前に。もう一度は成果を出した後に」

という言葉が全てを物語っているように思えます。

組織や事業単位で技術革新(イノベーション)が既存事業を淘汰する様子を描いたのが、クリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ 」でした。この本では新しい技術が登場した時に、既存の企業は自らイノベーションを起こすことができず、新しい企業に取って代わられる様子が説明されています。

「天才を殺す凡人」では、クリステンセン教授よりもよりもっとミクロな視点から、イノベーションに反応する組織内の動きを紐解きます。そのためこの2冊を照らし合わせながら読めば、「個人単位」そして「組織単位」の両方の視点を得ることができるはずです。

ハーバード・ビジネススクール“クリステンセン

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グローバルタスクフォース
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誰が読むべき?

  • 職場で同僚や上司に理解してもらえず悩んでいる人
  • なぜ社内でイノベーションが生まれないか悩んでいる人

この本の副題に「職場の人間関係に悩む、すべての人へ」とあるように、どのような立場の人でも得るものがあるはずです。

読者は実際の職場で、「この人は〇〇性が強く出てる人なのかな?」などとアタリをつけてコミュニケーションを試せるようになります。特に、明らかに「天才」「秀才」「凡人」のどれかに分類できそうな人物に対しては、本書の内容を実践しやすいと思います。

また読者自身も「創造性」「再現性」「共感性」がいつどんな場面で強く出るのか、客観的に分析する助けにもなります。自分自身を客観的に分析できれば、他人とのコミュニケーションがスムーズになる工夫も行えます。

また前述した通り、社内でイノベーションが阻害されるメカニズムも説明されているため、社内でイノベーションを起こすためのヒントになるはずです。

備忘録

この本で目に留まった内容を箇条書きしておきます(意訳・省略されてます)。この中にピンとくるフレーズや興味深い内容があれば、ぜひ書籍を読んでみてください。

  • 天才の創造性を測るのは凡人の反発量
  • 凡人が天才を殺す武器は多数決
  • ビジネスは天才が創造し、秀才が拡大させ、凡人が金にする
  • 天才と秀才が同じ土俵で戦うと説明能力の高い秀才が勝ってしまう
  • イノベーションを見極めは「広くて浅い反発」と「狭くて深い支持」の割合
  • 共感性は物語のどこを切り取るかによって決まる
  • 「飽き」はイノベーションの原動力
  • 天才・秀才・凡人の「主語」は違う
  • コンプレックスを乗り越えた秀才は天才の参謀になる
  • 共感の神 = 根回しおじさん

書かれていること書かれていないこと

書かれてること
  • 天才・秀才・凡人のコミュニケーションの取り方

「天才を殺す凡人」のストーリーの中では、主人公トオルが様々なタイプの人物とコミュニケーションを取る様子が描かれています。

狂言回し役の忠犬ハチ公「ケン」のガイドによって、それぞれのタイプでどのようなコミュニケーションを取るのが有効か理論的に理解することができます。

「天才を殺す凡人」と同様に、ストーリーを通して組織内でのコミュニケーションを体系的に学べる本として、コッター教授の「カモメになったペンギン 」もおすすめです。

【書評】カモメになったペンギン – ジョン・P・コッター/ホルガー・ラスゲバー 著
書かれてないこと
  • 自分や他人がどのタイプに該当するのか診断する方法

とても残念なのは、この本を読んでも読者自身がどのタイプに該当しているか自分で判断できないことです。

とは言え、著者の北野氏はR25のインタビュー で、

この本が目指しているのは、自分が「天才」「秀才」「凡人」のどれに当てはまるかカテゴライズさせることなんかじゃなくて、“3つの才能を自覚して、自分の中にも「天才」や「秀才」がいると気づいてもらうこと”なんです。

と答えているように、そもそも判断させるつもりがないようです。

しかし9つのタイプがあると知った読者が、「自分がどれに当てはまるか知りたい」と感じることも自然です。

読者はこの物語を、身の回りの近しい人を想像しながら読んでいるわけですし、読了後にその想像が確信に変わらなければモヤモヤしたままです。

ということで、本書の内容で才能を判断できそうな方法としては、

  • 自分の振る舞いに近い登場人物を見つける
  • 7つのタイプの「主語」で判断する

などがあります。

登場人物で判断する方法としては、自分に近いキャラが居るといいですが、必ずしもピッタリくるとは限りません。むしろ前述したように、才能の比率は千差万別なので綺麗に当てはまることはないと思います。また本書の後半に登場する、7つのタイプの「主語」の使い分けも、なんとなくしか判断できない上に確信が持てません。

せっかく「創造性」「再現性」「共感性」という切り口から、コミュニケーションの取り方を学んだのに、読者はそれを現実世界に適応させせる方法を与えられません。

もちろん読み終わったあとは「わかった」ような気持ちにはなれます。本書の後半にも、ブログの読者が理論を絶賛する声が収録されており、「わかった感」「役に立った感」が醸成される作りになっています。

しかしこれでは「理論はわかったけど使えない」という、片手落ちの状態のままです。

併せて読みたいストレングス・ファインダー

その片手落ち感を解消するためには、「ストレングス・ファインダー2.0」を併せて読むことをおすすめします。

北野氏の意図には沿いませんが、読者の「そうは言っても、結局自分はどのタイプなの?」という素朴な気持ちを解消できるはずです。

【書評】さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0 – トム・ラス 著/古屋博子 翻訳

この本は著者の北野氏が指摘する、既存の才能分析ツールの「才能の種類が多すぎる」「仕事に活かせない」という問題点を解決しており、「天才を殺す凡人」を読む助けになります。

「ストレングス・ファインダー2.0」ではオンラインの診断ツールを使うことで、読者の才能を傾向の強良いものから5つ選んでくれます。さらにそれぞれの才能ごとに「仕事にどう活かせば良いか」「どのような才能を持った人物と相性が良いか」など詳細なアドバイスを得ることができます。

「ストレングス・ファインダー2.0」を「天才を殺す凡人」と一緒に読めば、複数の視点から自分自身の才能と他人の特性を理解する助けになります。この診断結果から、「天才を殺す凡人」の「創造性」「再現性」「共感性」のどれが強いか判断することで、この本をより実践的に活用できるはずです。
本を読む時間がない、という時は
なかなか読書の時間を取れない人には、要約サービスやオーディオブックがおすすめです。

要約サービスのflier(フライヤー)は、1冊の本が10分ほどで読める分量にまとめられているので、ひと駅移動する間に1冊読めちゃいます。さらに要約を音声で読み上げる昨日もあるので、オーディオブックとして使うこともできます。

アマゾンのAudible(オーディブル)や audiobook.jp は、ビジネス書を一冊丸ごと朗読してくれます。クルマでの通勤時間が長い方や、徒歩での移動時間が多い方には、オーディオブックがおすすめです。自分で使ってみた感じでは、話題のビジネス書のラインナップは「flier(フライヤー)」が一番充実しているイメージです。いずれも無料のお試しキャンペーンなどをやっているので、気になる方は確認してみてください。
天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ

天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ

北野 唯我
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発売日: 2019/01/17
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書籍の目次
  • まえがき
  • ステージ1 才能って何だろう
  • ステージ2 相反する才能
  • ステージ3 武器を選び、戦え
  • 解説
  • あとがき
  • ブログに寄せられた感想
  • blog 凡人が、天才を殺すことがある理由。


タイトル天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ
著者
出版社日本経済新聞出版社
ISBN-13978-4532322533
発売日

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