戦略立案 – 英語版 Wikipedia 翻訳記事

この記事は英語版Wikipediaの「Strategic planning 」を翻訳したものです。GFDL およびCC-BY-SA 3.0 ライセンスの条項に準拠しています。

戦略立案(Strategic Planning)とは組織が戦略を定義するための過程、または方向付けであり、その戦略を遂行するために必要な資源分配を決定することである。また、戦略遂行(Strategic Implementation)を導くための統制構造とも言える。

概要

戦略立案は1960年代に企業において目立つようになり、戦略経営の重要な観点として知られることとなった。戦略立案は、その組織とそれを取り巻く競争環境に関する調査資料や多数の関係者を巻き込む形で、戦略立案者あるいは戦略家(ストラテジスト)によって遂行される[1]。

戦略については様々な定義があるが

  • ゴールの設定
  • ゴールに到達するための行動の決定
  • 行動を実行するための資源の動員

を伴うことが一般的である。

つまり、戦略からはその結末(ゴール)をどのような手段(資源)で得るのかを説明できる。また通常、組織内では上位の指導者が戦略の決定を担っている。

戦略は、組織が置かれた環境や競争下に順応しようとする中で、計画(意図)されたものとして、または活動のパターンとして見出すことができる。

戦略は策定と遂行の過程を含んでいるが、戦略立案はその双方を調和させることに役立つだろう。

しかしながら、戦略立案は分析的(例えば「点を見つける」ような)性質を持っているにも拘わらず、戦略策定自体は戦略思考による統合(例えば「点と点をつなげる」ようなこと)を必要とする。ゆえに、戦略立案は戦略が形成される過程で生じるのである[1]。

戦略立案の過程(プロセス)

戦略立案とは、

  1. 入力情報(Inputs)
  2. 活動(Activities)
  3. 出力情報(Outputs)
  4. 結果(Outcomes)

という、一連の過程(プロセス)である。

形式的または非形式的であり、その過程を通してフィードバックの輪によって反復される。その過程におけるいくつかの要素は継続され、また、その他の要素はプロジェクト毎に期間限定で実行される。

戦略立案は戦略思考に対して、実際の戦略形成のガイドとなるインプットを提供する。結果的に、企業戦略は、

  • 外部環境と競争的局面の判断
  • その企業が何を成し遂げようとしているかの指針
  • 指針を達成するための鍵となる構想または行動計画

を含むのである[2]。

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1980年に、マイケル・ポーターは競争戦略の策定において、次の4つの要素を考慮する必要があると記している。

  1. 企業の強みと弱み
  2. 重要な遂行者(経営者や経営陣など)の個人的な価値観
  3. 産業の機会と脅威
  4. 広義の社会的期待[3]

はじめの2つの要素が企業の内部的要因(内部環境など)に関連しているのに対し、残りの2つの要素は企業の外部的要因(外部環境など)に関連している [3]。これらの要素は戦略立案の一連の過程を通して考慮される。

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入力情報

戦略立案に必要なデータは、主要経営陣に対するインタビュー、競争や市場に関する公開文書、1次データ(訪問や観察による競合の実地調査や価格比較)等の様々な情報源から集められる。

これらは競合諜報活動の一部でもある。入力情報は競争環境における機会とリスクをよりよく理解するために収集される。そ

の他にも、経営陣・株主・上級マネージャなどの主要な事業関係者の価値観への理解も入力情報に含む。これらの価値観は、組織のビジョンやミッション(使命)ステートメントとして表現されていることが多い。

経営理念とは?ミッション・ビジョン・バリューの意味の違い

活動

競争戦略の策定のエッセンスは、企業とそれが置かれた環境との関係性である。(マイケル・ポーター[3])

戦略立案の活動では、組織のリーダーとメンバーの間で、競争環境そのものについて、また、その環境で組織が何をなすべきかについて共通の理解を醸成するために、打合せやその他のコミュニケーションを行う。後述する様々な戦略的計画のためのツールは、活動の一部として行われるだろう。

組織のリーダーは、戦略策定や入力情報の収集の過程で、下記のような一連の問いかけに答えることになるだろう。

  • その組織のビジネスあるいは興味は何なのか?
  • 顧客や購買層が価値を感じるものは何なのか?
  • 提供すべき、あるいは提供すべきではない商品・サービスはどれなのか?
  • その組織の地理的範囲はどこまでなのか?
  • 顧客や事業関係者が、その組織と競合を区別するものは何なのか?
  • その組織内で力を入れるべき技術や経営資源はどれなのか[1][4]?

出力情報

戦略立案の出力情報では、その組織の戦略そのものと、それを計画としてどのように遂行するのかを、文書化し伝達する。

戦略は、

  • 競争状況の判断
  • 組織のゴールを達成するための指針
  • 遂行するための具体的な行動計画

を含んでいる[2]。戦略計画は、複数年にまたがり、定期的に見直される。

組織は、バランスト・スコアカードや戦略マップなどといった、目標への到達度合いを評価しモニタリングするための様々な手法を使用する。

企業ではゴール設定の一環として、数年先までの財務(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)の計画も行う。

「実行予算」という言葉は、その組織の翌年の事業成績を予測を表すものとしても使われる。

「資本予算」は、特に情報通信技術(ICT)とより強い関連性を持つものとして、戦略計画においての屋台骨を形成している。

結果

前述したとおり、戦略立案の過程が「出力情報」を生み出す一方で、戦略遂行または戦略計画の遂行によって「結果」が生み出される。

これらの結果は、戦略のゴールと同一のものになるはずである。結果が、戦略のゴールやビジョンにどれくらい近いかが、その戦略計画が成功したか否かを決定づけるだろう。もちろん、予期しない結果が生まれることもありうる。

ツールとアプローチ

戦略立案には、様々な分析ツールや手法が使われている[1]。下記のものは戦略立案のフレームワークとして、企業や経営コンサルティング会社によって発展したものである。

PEST分析:「政治」「経済」「社会」「技術」という4つの外的環境要素を分析する。これに「法律・規制」「エコロジー・環境」を加えたものをPESTLE分析という。

PEST分析とは?読み方とその目的:政治・経済・社会・技術で外部環境を分析

シナリオ立案:元来は軍事的な手法として生まれたが、近年では大企業などが将来のシナリオを分析するために使われている。

ポーターの五力分析:ファイブフォース分析とも呼ばれ、「買い手の交渉力」「供給企業の交渉力」「代替品の脅威」「新規参入の脅威」という4つの要素から、市場の魅力度と競合との敵対関係を分析する。

ファイブフォース分析とは?ポーターの5つの競争要因の例

SWOT分析:内部要因である「強み」「弱み」と、外部要因である「機会」「脅威」を分析する。

SWOT分析とは?意味と読み方:自社の強み・弱み・機会・脅威を知る方法

成長シェアマトリクス:事業を存続させるか手放すかの意思決定を行うためのポートフォリオ。

バランスト・スコアカード戦略マップ:戦略を評価し統制するための体系的なフレームワーク。

成功の9ステップ(TM)[5]:バランスト・スコアカード協会が提供する戦略立案と経営のためのフレームワーク。

戦略立案と財務立案

競合環境を考慮せずに、財務計算書の将来における見通しに単純に話を広げると、それは財務計画や予算の形成であって、戦略立案ではない。ビ

ジネスにおいて「財務計画」という用語は、将来的なその組織の業績を指すことが多い。また「予算」という用語は、翌期の財務計画を指す時に使われる。

概して「業績予測」とは期首から今までの実際の業績に加えて、その期末までの業績の予測を組み合わせたものとなる。

よって、一般的に財務計画や年度予算と比較されるのである。一方、戦略計画を伴った財務計画については、3〜5年の業績計画を含むことになるだろう。

1970年代に、マッキンゼー・アンド・カンパニーは、立案過程の高度化を説明するために、戦略経営を最上位に置いた能力成熟度モデルを開発した。その4つのステージは下記のものになる。

  1. 財務立案:主に年間の予算と事業の機能的部分の焦点を当てており、市場環境に対する考慮は限定的である。
  2. 事業予測起点の立案:上記に加え、複数年度における財務計画と、事業単位を横断したより強固な資本分配を伴う。
  3. 外部要因志向の立案:上記に加えて、状況分析と競争環境の評価が伴う。
  4. 戦略経営:上記に加えて、広範囲にわたる戦略思考が行われ、定義づけされた戦略フレームワークが使用される。

なお、1および2ステージは非戦略的な戦略立案に分類され、3および4ステージは戦略立案に分類される[6]。

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戦略立案と戦略思考

戦略立案は、体系化の難しい「統合」や「点と点をつなぎ合わせる」ような本質的に創造的な活動であるとヘンリー・ミンツバークが主張する中、戦略思考と戦略形成を体系化しようとする試みとしては批判されている。

ミンツバークは、戦略立案は計画立案に向かう努力を同調させ、戦略のゴールへの進捗を測る手助けになるとしながらも、戦略形成過程の中ではなく戦略形成の「周囲」で起こると主張している。

さらに、ビジネスの「最前線」または競争環境との接点(例えば、競争においての影響が最も明確に現れる接客の場面など)からかけ離れた場所でしか機能しないような戦略立案は、戦略への努力を補助するには効果的ではないだろう[1]。

脚注

  1. ^ a b c d e Mintzberg, Henry and, Quinn, James Brian (1996). The Strategy Process:Concepts, Contexts, Cases. Prentice Hall. ISBN 978–0–132–340304.
  2. ^ a b Rumelt, Richard P. (2011). Good Strategy / Bad Strategy. Crown Business. ISBN 978–0–307–88623–1.
  3. ^ a b c Porter, Michael E. (1980). Competitive Strategy. Free Press. ISBN 0–684–84148–7.
  4. ^ Drucker, Peter (1954). The Practice of Management. Harper & Row. ISBN 0–06–091316–9.
  5. ^ “Nine Steps To Success TM”. The Balanced Scorecard Institute.
  6. ^ Kiechel, Walter (2010). The Lords of Strategy. Harvard Business Press. ISBN 978–1–59139–782–3.

上記コンテンツは古市大三によるWikipedia:en:Strategic planning (28 July 2015, at 09:02 UTC)の翻訳記事です。GFDLおよびCC-BY-SA 3.0ライセンスの条項を満たす場合のみ利用可能です。