【書評】THE MODEL(ザ・モデル)マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス − 福田康隆 著

皆さんは「マーケティング・オートメーション」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? 潜在顧客を増やし、見込み客を育て、営業につながらなかった見込み客も「再利用」する、そんな活動を支援するツールがこの世には存在しています。

この本を読めば、昔ながらの個別の営業マンが頑張るスタイルから脱却し、営業プロセスの分業、そして協業による効率的な営業モデルを作ることが出来るかもしれません。

今回は東洋経済オンラインのAmazon週間ビジネス・経済書ランキング(2019年2月24日〜3月2日) より、福田康隆氏の「THE MODEL(ザ・モデル)マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス 」の書評をお送りします。

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この本を一言で表すと…

マーケティングオートメーションのフルコース料理を短時間で食べさせられるような本です。

具体的には?

この「THE MODEL(ザ・モデル)」という本は、「レベニューモデル」と呼ばれる営業プロセスについて、マーケティングオートメーション(MA)を中心に解説しているビジネス書です。

マーケティングオートメーション(MA)とは、潜在顧客を見つけ見込み客に育てて営業に渡す、という一連の流れを、デジタルツールによって効率化する手法のことです。

著者 福田康隆 氏について

著者の福田康隆氏は、現在アドビシステムズというソフトウェアの会社で、「マルケト」というマーケティングオートメーションサービスの事業統括を行なっている方です。マルケトの前は、同様の営業支援大手のセールスフォース・ドットコムにお勤めになられてたようです。

その他、福田氏は様々な経歴をお持ちのようですが、本書の「レベニューモデル」の本質を語る上では無くても困らない情報なので割愛。どうしても気になる方は第1部第1〜3章に自伝のような感じで書かれているので、ご覧ください。

書籍全体の印象

全体の印象としては、良くも悪くも「詰め込みすぎ」の一言に限ると思います。

第1部の福田氏の自伝のような内容から始まり、第2〜3部で「ザ・モデル」「レベニューモデル」の細かな説明。そして後半の第4〜5部はの戦略論から組織マネジメントの細かなテクニックまでと、300ページ弱に欲張って詰め込みすぎた感があります。

おそらく福田氏はコンセプトからマネジメントまで一気通貫に伝えたかったんだと思います。しかしそれを300ページ足らずで伝えようとしたために、

  • マーケティングオートメーションに詳しい人
  • マーケティングオートメーションに詳しくない人

のどちらも読みにくさを感じるんじゃないでしょうか。

この分野に詳しい人にとっては、内容の範囲を広げすぎているために一つ一つの話題を深く掘り下げることができずに物足りなさがあるかもしれません。

一方でこの分野に明るくない人、例えばマーケティングオートメーションの初心者にとっては、話の範囲が広すぎて情報過多になり、途中から読むのが辛くなってくると思います。

頭字語と横文字のオンパレード

マーケティングオートメーションや営業支援ツールに詳しくない人にとってもう一つの難点が、頭字語と横文字が多いことです。

まず頭字語。

  • SMB, ERP, CMR, SR, EBR, AE, SFA, MQL, SQL …

などなど、冒頭から大量に頭字語が登場します。

初めて登場した時だけサラッと補足説明が付くのですが、それ以降は「知ってて当然でしょ」くらいの勢いで頻出します。

聞き慣れない人にとっては、頭字語が登場するたびに「何だっけ?」となり、読み返すにも一苦労します。さらに読み返しても大した説明がなかったりと、不親切な作りになっています。

横文字についても同様で、マーケティングオートメーションの用語はすべて横文字なので、基本的に文章は横文字だらけです。それに加えて、日本語に置き換えれそうな言葉もカタカナになっていたりと、一般人の感覚からするとやたら「意識の高い」文章になっています。

通常こういったタイプの書籍では、巻末に「用語集」などが付いています。しかし残念なことに、この本には用語集が付いていません。知らない頭字語や横文字があれば、自分で検索して調べる必要があります。

マーケティングオートメーション(MA)の運用

肝心なマーケティングオートメーションについては、福田氏がマルケトの前に在籍していたセールスフォース・ドットコムの「The Model(ザ・モデル)」と呼ばれる営業プロセス。そして、それを発展させた「レベニューモデル」の説明する流れで登場します。

「The Model(ザ・モデル)」とは、商品やサービスに興味を持った顧客に対して、分業制で対応する営業のプロセスです。営業の工程を、工場の生産工程と同じように考え、分業しながら管理を行います。

そして「The Model(ザ・モデル)」を発展させた「レベニューモデル」は、分業ではなく他の部署と連携しながら、見込み客や既存顧客を育てる仕組みになっています。

「レベニューモデル」は、新規見込み客の獲得コストと既存の見込み客の獲得コストの差に着目し、営業のプロセスの途中でふるい落とされた(営業対象から外された)見込み客を「リサイクル」する仕組みが特徴的です。

さらにこの「レベニューモデル」の運用について、「商談」「評価」「稟議決裁」「受注」などなど様々なノウハウが大量に書かれています。

こういった細かいノウハウのような項目は、実際に営業支援システムを活用したプロセスを採用している現場の人にとってヒントが得られるのではないでしょうか。

戦略から組織マネジメントまで言及

この本ではマーケティングオートメーションだけでなく、それを活用するための戦略や組織マネジメント手法まで幅広く説明されています。

第4部では3つの基本戦略として、

  • 市場戦略
  • リソースマネジメント
  • パフォーマンスマネジメント

を挙げています。

第5部の「人材・組織・リーダーシップ」では、経営者のあり方やマインドからチームの育成などについて書かれています。

このようなツールの使い方にとどまらない内容は、ビジネスプロセス全体を俯瞰するために役立つかもしれません。

マルケト贔屓じゃないことに好感

はじめにお伝えしたように、著書の福田氏は「マルケト」という営業支援サービスの提供に関わっています。しかし本書の内容は、マルケトのサービス内容などを説明しているものではありません。

もちろん本書の考え方やビジネスプロセスが、セールスフォースやマルケトなどの営業支援サービスの根底にあることは事実です。しかし「レベニューモデル」の概念は、ある程度一般化されたものであり、マルケトなどのサービスに限った内容ではないように思いました。

備忘録

この本で目に留まった内容を箇条書きしておきます(内容は意訳・省略してます)。この中にピンとくるフレーズや興味深い内容があれば、ぜひ書籍を読んでみてください。

  • 分業すれば同じリズムの仕事に集中することができる
  • 営業組織自体が教育機関の役割を担っている
  • 日本の独自性を訴える人たちは多い。しかし、違いに目を向けるより、共通点に目を向けて、それを利用する方がはるかに有意義だ。
  • 顧客は購買プロセスを、自分が決めたタイミングで、自分が信じられる有益な情報を好みの方法で入手し、営業担当者に売り込まれることなく自分のペースで進めたい。
  • 「顧客による調査・評価」のプロセスが重要度が増している
  • 事業の成長期にはアーリーアダプター以外(商談化率・受注率はアーリーアダプターより低い)にどうリーチ出来るかが鍵
  • リードをリサイクルする
  • グループに分けると、人は敵対する。パーティーや飲み会をしても大した効果はない。関係を良好にするには、共同作業で達成可能な共通の目標が有効。
  • 経営者に求められるのは「良い仕事」と「いい加減な仕事」を峻別して評価できる眼力
  • 全体のパフォーマンスを最大化するためには「同一性(Sameness)」ではなく「公正さ(Fairness)」が大切

誰が読むべき?

  • 営業支援サービスを導入している会社の社員

この本は、すでに何らかの営業支援サービスを会社で導入している場合に、その営業プロセスに関係がある人が読むのに適しています。頭字語や横文字で表現される専門用語も、日頃から聞き慣れていれば本書の内容がスムーズに理解できます。内容も広い範囲をカバーしているため、どの立場で読んでも得るものがあると思います。

逆にマーケティングオートメーションの初心者には、お勧めできない内容です。専門用語が多いことや、マーケティングオートメーション以外の事も説明されているため、全体内容を理解するのに時間がかかります。とりあえずマーケティングオートメーションを知りたいだけなら、別の入門書を探すことをお勧めします。

書籍の目次
  • 序文 アレン・マイナー
  • はじめに
  • 第1部 アメリカで見た新しい営業のスタイル
    • 第1章 マーク・ベニオフとの出会い
    • 第2章 営業のプロセス管理
    • 第3章 「ザ・モデル」のその先へ
  • 第2部 分業から共業へ
    • 第4章 2つの変化
    • 第5章 分業の副作用
    • 第6章 レベニューモデルの創造
  • 第3部 プロセス
    • 第7章 マーケティング
    • 第8章 インサイドセールス
    • 第9章 営業(フィールドセールス)
    • 第10章 カスタマーサクセス
  • 第4部 3つの基本戦略
    • 第11章 市場戦略
    • 第12章 リソースマネジメント
    • 第13章 パフォーマンスマネジメント
  • 第5部 人材・組織・リーダーシップ
    • 第14章 人材と組織
    • 第15章 リーダーシップ
  • おわりに


タイトルTHE MODEL(MarkeZine BOOKS)マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス
著者
出版社翔泳社
ISBN-13978-4798158167
発売日

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