【書評】父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。– ヤニス・バルファキス 著

2019年の1月に「世界の超富裕層26人、世界人口の半分の総資産と同額の富を独占(AFPBB News) 」という見出しの記事が話題になりました。これは国際NGO「オックスファム」が発表した調査結果です。

オックスファムは同様の調査を2016年にも行っており、その時はたった「62人」の超富裕層が世界人口の半分の総資産の富を独占しているというものでした。つまりわずか三年で、富の一極集中がさらに進んだということになります。

お金持ちはどんどんお金持ちになり、貧しい人は貧しいまま。このような事実を知って、あなたはどう感じたでしょうか?

富の格差が生まれることは「良いこと」なのか「悪いこと」なのか。そして、そもそもなぜそのような格差が生まれてしまうのか?この本を読めば、その疑問も解決するかもしれません。

今回はAmazon ビジネス・経済書 売れ筋ランキング(2019年4月1日) より、ヤニス・バルファキス氏の「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 」の書評をお送りします。

「父が娘に語る〜経済の話。」を一言で表すと…

1万2千年前の農耕技術の誕生から現代の仮想通貨まで、世界経済を歴史の変化と共にわかりやすい言葉で説明した本です。

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

ヤニス・バルファキス
1,620円(10/18 17:27時点)
発売日: 2019/03/07
Amazonの情報を掲載しています

著者 ヤニス・バルファキス

著者であるヤニス・バルファキス教授は、オーストラリアのシドニーで生まれ育ち、ギリシャ経済危機の頃に短期間ですが財務大臣を務めた経歴を持つ、アテネ大学の経済学者です。

参考 ヤニス・バルファキスウィキペディア 参考 ギリシャ経済危機(2010年)ウィキペディア

現在はアテネ大学で教鞭を振っていますが、アメリカやオーストラリアでも経済学を教えていたようです。

この本の冒頭でも、オーストラリアを引き合いに出して、

  • なぜ、(オーストラリアの先住民族である)アボリジニがイギリスを侵略しなかったのか?

というところから、話が始まります。

1冊で1万年分の経済の歴史を学ぶ

この本では、なぜ「格差」が生まれるようになったのか、そして経済がどのように発展してきたかについて、200ページほどにまとめられています。

話のスタートは1万2千年前にさかのぼり、農耕技術が生まれるところから始まります。そこから現在の「経済」を織りなす要素が少しずつ生まれてくる様子が、いろいろなエピソードと共に語られる形式になっています。

後半は「労働」と「お金」の話になるのですが、映画「ブレードランナー」や「マトリックス」が引き合いに出てきます。映画を観たことがある人にとっては想像がしやすく、「労働」「テクノロジーの発展」「価値」について学ぶことができます。

さらに仮想通貨の誕生まで語られており、1冊で経済の歴史を俯瞰することができます。

経済モデルではなくエピソード

著者のバルファキス教授は、大学で経済学を教える学者です。しかし、この本の中には経済学で学ぶような「〇〇曲線」とか「〇〇理論」などの経済モデルは登場しません。

この本は、

  • 父が娘にわかりやすく経済の話をする

という体裁で書かれています。

そのため、

  • 学生にもわかるような言葉づかい
  • わかりやすい例え話

で説明がされています。

経済学にアレルギーがあるような人でも、手にとって読みやすい本だと思います。

例えば第7章では「通貨」について書かれているのですが、戦時中の捕虜収容所でタバコが通貨として流通していたエピソードが面白かったです。

タバコが徐々に「通貨」としての役割をもち、収容所の爆撃によって「デフレ」が起こり、戦争が終わることで「捕虜収容所内の経済活動」が終わりを迎える様子はとても印象的です。

その「通貨の本質」を感じるエピソードから、現代の仮想通貨へと話は繋がります。このように全体を通して、エピソードで経済を学ぶことができます。

「父が娘に語る〜経済の話。」の備忘録

この本で目に留まった内容を箇条書きしておきます(内容は意訳・省略されてます)。この中にピンとくるフレーズや興味深い内容があれば、ぜひ書籍を読んでみてください。

  • 農作物の生産によって、初めて経済の基本になる要素が生まれた。それが「余剰」だ。(狩りや漁は余剰を生み出さない)
  • 「文字」それは余剰を記録するためのものだった。だから農業が発達しなかった社会では、文字が生まれなかった。
  • ユーラシア大陸で文明が発展したのは、東西に広がる気候が似た地域に農耕技術が伝達したから。
  • 逆にアフリカ大陸は縦長で地域ごとに気候が異なるため、農耕技術の移転ができなかった。
  • 「土地」「資本」「労働」の生産の三要素が「商品(コモディティ)」になることで、市場社会が誕生した。
  • 市場社会では、すべての富が借金によって生まれる。
  • 銀行はお金を、どこからともなくパッと出す。
  • 経済学は「公式のある神学」

新社会人&就活生におすすめの一冊

この「父が娘に語る〜経済の話。」は、

  • 新社会人や就活生
  • 経済の歴史を俯瞰したい人

などにおすすめです。

新社会人や就活生は社会に出て経済活動の一部を担うことで、これから様々な疑問が生まれると思います。この本で経済活動がどのように発展したかを知ることで、資本主義経済の疑問にぶつかっても解消できるかもしれません。

また社会人でも学生でも、経済の歴史に興味がある人にはオススメの本です。200ページ余で1万2千年分の経済の歴史がまとまっているため、短時間で知識や教養を身に付けることができます。

本を読む時間がない、という時は
なかなか読書の時間を取れない人には、要約サービスやオーディオブックがおすすめです。

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父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

ヤニス・バルファキス
1,620円(10/18 17:27時点)
発売日: 2019/03/07
Amazonの情報を掲載しています
書籍の目次
  • プロローグ 経済学の解説書とは正反対の経済の本
    • 目の前の混乱から離れて世界を見つめ直す
    • 資本主義を解き明かす
  • 第1章 なぜ、こんなに「格差」があるのか?――答えは1万年以上前にさかのぼる
    • なぜ、アフリカから強国が出てこなかったのか?
    • 地域内格差――金持ちは100万ドルを簡単につくれる
  • 第2章 市場社会の誕生――いくらで売れるか、それがすべて
    • ふたつの価値――経済学者はすべてを「値段」で測る
    • 世界はカネで回っている?
  • 第3章 「利益」と「借金」のウエディングマーチ――すべての富が借金から生まれる世界
    • 悪魔が考えた「地獄」より残酷なこと
    • 富と競争――競争に勝つには借金するしかない
  • 第4章 「金融」の黒魔術――こうしてお金は生まれては消える
    • 起業家はタイムトラベラー――未来から無限の交換価値をつかみとる
    • 歯車が「逆回転」しはじめる
  • 第5章 世にも奇妙な「労働力」と「マネー」の世界――悪魔が潜むふたつの市場
    • 狩人のジレンマ――全員で鹿を狙うか、ひとりでうさぎを狙うか?
    • 悪魔が潜む場所――「マネー・マーケット」とは何か?
    • 予言は自己成就する――もしソポクレスが経済の教科書を書いたら?
  • 第6章 恐るべき「機械」の呪い――自動化するほど苦しくなる矛盾
    • 巨大企業にとっての「すばらしい新世界」
    • 絶望を見せてくれるのは誰か?
  • 第7章 誰にも管理されない「新しいお金」――収容所のタバコとビットコインのファンタジー
    • 誰も税金を払いたくなければ、どうすればいい?
    • ビットコイン――「1通のメール」がもたらした衝撃
  • 第8章 人は地球の「ウイルス」か?――宿主を破壊する市場のシステム
    • 節度のない者は「愚か者」になる――駄目と知りながら競争を止められない
    • 未来のすべてを決める対決――「すべてを民主化しろ」vs「すべてを商品化しろ」
  • エピローグ 進む方向を見つける「思考実験」
    • 思考実験――君は理想の世界に行きたいか?
    • 占い師のロジック――私が経済学者になった理由


タイトル父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 
著者
出版社ダイヤモンド社
ISBN-13978-4478105511
発売日

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