Amazonの戦略ループ
ここからは、Amazonの戦略ループを一緒に読んでいきましょう。
この戦略ループは、2000年頃にAmazonが取っていた戦略で、現在の戦略よりもシンプルになっています。
なぜ今回Amazonを取り上げたかというと、創業者のジェフ・ベゾス氏もシステム思考による戦略形成を行なっていたからです。
こちらの図は、2001年にベゾス氏が1枚の紙ナプキンに描いたとされる、当時のAmazon全体のビジネス戦略像です。
この図は「善の循環(ヴァーチュアス・サイクル)」と呼ばれ、創業から月日が経った現在でも、Amazonの社内で従業員教育に使用されているそうです。
ベゾス氏オリジナルのループ図についての詳細は、以下の記事にまとめているのでご覧ください。
ここからは、戦略ループにアレンジしたAmazonの事業戦略を解説していきます。
すべての起点は「顧客体験」にあり!
Amazonの戦略の起点は、ループの左上の「Value(バリュー、提供価値)」にある「顧客体験」です。
この「Value(バリュー、提供価値)」のエリアには、戦略の対象(ここではAmazonの訪問者)が受け取る価値を記入します。
このAmazonの「顧客体験」というのは、
- 地球上で最も豊富な品揃え
をすべての顧客に提供すること、つまり「早くて」「安くて」「なんでもそろう」ことを価値として提供することを指します(カード最下部、オレンジ文字)。
「顧客体験」と「訪問者数」が示す因果は、
- 顧客体験が良くなれば、訪問者も増える
ということになります。
内側の「品揃え」のループの意味
まずは内側のループから。
戦略ループの右上のエリア「eXchange(エクスチェンジ、価値交換)」には「訪問者数」が書き込まれていて、先程の「顧客体験」からつながっています。
この右上の「eXchange(エクスチェンジ、価値交換)」では、Valueで価値が提供された結果、その価値の対価などを記入していきます。
話は戻って、Amazonへの訪問者が増えると何が起こるでしょうか?
ほとんどの人が、訪問者数が増えれば売上が伸びると考えるはずです。
でも、ベゾス氏は別の発想を持っていました。訪問者が増えるということは、売り手にとっての魅力が増すということ。つまり、物を売りたい人も惹きつける、と考えたわけです。
普通は、頑張って集めたお客さんを他社に明け渡すことは考えません。
しかし、2000年、Amazonはアメリカの玩具小売最大手の「トイザらス(Toys “R” Us)」と10年間の独占的な販売契約を結び、その品揃えに「おもちゃ」と「赤ちゃん用品」を加えました。
これが「出品者」から「品揃え」に伸びる矢印です。
ここまでをおさらいすると、
- 訪問者数が増えると出品者も増える
- 出品者が増えると品揃えが増える
ということです。
戦略ループの下半分のエリアは「Resources(リソース、資源)」で、ここでは、「顧客体験」という価値が「訪問者数」に変換されたことによって、「出品者」という戦略を動かす資源が集まり、その資源が「品揃え」という価値の提供につながっている、という状態です。
ここまでくれば、1つ目の内側のループが完成します。
Amazonの訪問者を他社に開放すれば、Amazonの品揃えが増えます。
その結果、Amazonの顧客体験は改善し、より多くの訪問者を惹きつけるようになります。
このループを回し続ければ、Amazonの訪問者が増える続けるのです。