PayPayが1日の電子マネー決済額の20%以上を占めた可能性:100億円をあげちゃった効果とは?

2018年12月上旬に世間を賑わせた電子マネーPayPay(ペイペイ)の、「100億円あげちゃうキャンペーン」。その影響力はどれくらいのものだったのでしょうか? 100億円は多かったのか、少なかったのか、考えてみたいと思います。

100億円あげちゃうキャンペーンについて

ヤフーとソフトバンクが共同出資する「PayPay株式会社」の電子マネー「PayPay(ペイペイ)」は、2018年12月4日から「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施しました。

どんなキャンペーンか、ざっくり説明すると以下のとおり。

  • 毎回支払額の20%がPayPay残高にチャージされる
  • 一定確率で支払額の100%がPayPay残高にチャージされる
  • 還元額が100億円に達したらキャンペーンが終了する

還元額の上限とか細かいルールとかは割愛しますが、要するにPayPayで支払えば2割は返ってくるということです。

実施の予定は2019年の3月末まででしたが、蓋を開けたらたったの10日間で100億円に達しました。つまり1日あたり10億円、残高へのキャッシュバックが行われたということです。

100億円って多いの?少ないの?

結論から言うと、1日あたりの決済額で換算すれば大きいものの、すでに普及している電子マネーのシェアを考えるとまだまだ厳しいようです。

ところで、そもそも日本国内の電子マネー決済金額っていくらなんでしょう?

調べてみると日本銀行が数字を発表してました。2017年は5.2兆円。

参考 決済動向(2018年1月) PDFファイル日本銀行 決済機構局

2017年12月だけだと、約5000億円です。

日本銀行 決済機構局「決済動向2018年1月」12ページより引用

この5000億円を31日で割ると、1日あたり平均約160億円となりました。2018年に電子マネーはさらに普及していると思うので、仮に2018年12月の1日あたりの電子マネー決済額を平均170億円とします。

一方でPayPayは、1日あたり10億円の還元額を消化しています。支払い金額の20%が還元されていることを考えると、10億円の5倍にあたる約50億円がPayPayのみで決済されたことになります。

ということはキャンペーン中の10日間は、

  • 1日あたり230億円(=170億円+50億円)の電子マネーの決済が行われ
  • PayPayは電子マネー全体の21.7%(=50億円÷230億円)を占めた

ことになります。

次にこの21.7%という数字は、大きいのか小さいのかを考えてみます。

PayPay株式会社はPayPayを普及させたいので、キャズム理論を使ってみましょう。キャズム理論とは、1991年にジェフリー・ムーア教授が発表した物事の普及の目安を知るための理論です。

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「キャズム」とは商品やサービスが普及するために、超えなければならない大きな谷のこと。その谷は普及率16%のところにあると言われています。

そして今回のPayPayはキャンペーン期間中の10日間だけですが、決済額ベースで21.7%を叩き出しました。しかし本来は利用者の数が、キャズムを超えることが望ましいはず。そしてこの利用者の数は、報道で190万人と報告されています。

参考 スマホ決済、競争過熱 普及には使い勝手が課題日本経済新聞 電子版

交通系電子マネー(Suica、PASMO、ICOCAなど)は数千万枚発行されていることを考えると、とても少ない数です。交通系を除いても楽天Edy、nanaco、WAONなどのシェアは大きく、PayPayの190万人という数はまだまだ少ないと言えるでしょう。

しかしたった10日で190万人が利用したことを考えれば、電子マネーのシェア争いに大きな存在感を示したことは間違いありません。

100億円はまだ動いていない

100億円の還元は規定により、多くの人が2019年1月10日以降になるようです。つまり現時点でまだ100億円はほぼ動いていません。PayPay株式会社の中にあります。

今回のキャンペーンでは、みんな自腹で支払いました。消費者の財布から500億円が出て行っただけです。そしてみんなが得たのは、後日100億円が残高にチャージされるという権利です。

この100億円をどのように奪い合うか、加盟店にとって本当の戦いは2019年1月10日に始まると言っていいでしょう。筆者の近所の大手家電量販店では、PayPay支払いで使えるクーポン券を配っていました。そのお店は再来店を促すことで、世の中に出回っている100億円を回収しようという施策に出ています。

PayPayの導入自体で、お店の価値が変わることはありません。PayPayのキャンペーンは、お店にとって来店を促す数あるキッカケのひとつでしかありません。

PayPay残高の消化のために来店した消費者に、いかにお店の魅力や価値を伝えるか。今回の一件をチャンスと捉えて、お店のあり方を見直す良い機会になるのではないでしょうか。