書籍『ビジネスモデル進化論』とは?紀元前から21世紀まで、ビジネスモデル誕生の歴史

書籍「ビジネスモデル進化論」 — 開いた本の上に店と人が立つイラスト

1972年。創業したばかりの小さな航空会社が、資金に詰まっていました。赤字が続き、運転資金を作るために、持っている4機の飛行機のうち1機を売ることになります。

4機が3機になる。ふつうなら、飛ばす便も減ります。

ところが、地上の作業を担当していた副社長が、こう言い出しました。機材は減っても便数は減らさない。3機で4機分のスケジュールを維持する。

正直、無茶振りですよね。実現するには、1機あたりの回転を上げるしかない。つまり、空港に停まっている時間を削るしかありません。当時の業界の標準は、1時間近くでした。それを10分にする、というのです。

飛行機は、空を飛んでいるときだけ価値を生む。地上にいる時間は、減らせるだけ減らしたほうがいい。

それから現場はF1のピットのようになりました。飛行機がゲートに着くと同時に、給油も清掃も手荷物も乗客の乗り降りも、いっせいに始まります。パイロットも客室乗務員も、手が空いていればごみを拾いました。これは私の仕事ではない、と言う人はいません。

結果、本当に10分で回せるようになりました。同じ機材で、ほかの会社より1日に数便多く飛ばせる。1便あたりにかかる費用が下がった分、運賃を安くできました。

…これが、サウスウエスト航空のビジネスモデル誕生のストーリーです。

こんな話を、94本集めました

『ビジネスモデル進化論』という本を書きました。秀和システム新社から、近く発売されます。

約1万2000年前の農業革命から、2022年まで。ビジネスが生まれた瞬間の物語を集めた本です。

この記事では、そのうち3つの企業について、それぞれ少しだけ紹介します。ひとつ目が、いまのサウスウエスト航空でした。

コンビニのATMは誰のためにあるのか

あれは客が便利だから置いてある。そう思っていませんでしたか?

始まりは1987年でした。セブン-イレブンが、電気料金の支払いを店で受けるようになります。当時、公共料金は銀行や郵便局の窓口に出向いて払うものでした。窓口が開いているのは日中だけです。共働きの家や一人暮らしの人にとって、その時間に行くこと自体が面倒な用事でした。24時間開いている店が、その窓口になったわけです。

客は便利になりました。ところが店には、別の困りごとが起きます。現金が溜まるのです。 客から預かった現金がレジに積み上がる。防犯の面でも危ないし、数えて入金する手間もかかる。

そこで出した答えが、自分たちで銀行を作ることでした。2001年、アイワイバンク銀行、いまのセブン銀行です。流通業が銀行をやると言い出したとき、金融の世界からは、素人に銀行ができるわけがない、と批判されました。

作ったのは、企業にお金を貸さない銀行でした。収益の柱はATMの利用手数料です。そして、そのATMを自分の店の中に置きました。

店に溜まる現金と、ATMに入れておく現金。それまでは別々に運ばれていたものが、同じ店の中にあります。ここをつなげば、現金を運ぶ回数を減らせる。

小売の側で困りごとだった現金は、金融の側では商売の元手です。金融の側で費用だったATMの置き場所は、小売の側がすでに持っていました。片方が減らしたいものを、もう片方が欲しがっている。それが同じ店の中で起きていました。

フェラーリ:レースがしたいから車を売っていた

レースで勝つと、車が売れる。だからメーカーはレースに出る。ふつうはそうです。

エンツォ・フェラーリは、逆でした。

そもそもフェラーリは、車を作る会社として始まっていません。1929年にイタリアのモデナで生まれたスクーデリア・フェラーリは、レースに出たいアマチュアの走りを支えるチームでした。自社の車を売り出すのは、18年後の1947年です。

そして市販車を作った理由が、レースをする資金を稼ぐため でした。売上よりレースの予算が優先されるので、生産台数はわざと絞られます。欲しい人に行き渡らない状態が続き、それがブランドの価値になりました。

この姿勢の本気度が感じられるエピソードがあります。1963年、経営が苦しかったフェラーリに、フォードが巨額の買収額を提示しました。エンツォは土壇場でこれを断ります。もめたのは、レース部門を自分たちの自由にできるかどうかでした。

会社を救うお金より、レースの自由を選んだのです。

本の中身:序章と6つの章

序章と6つの章でできています。

時代とテーマ出てくるものの例
序章ビジネスモデルの誕生(農業革命〜)余剰食糧と専門職の誕生、シルクロード
第1章11世紀〜18世紀 ビジネスの黎明期メディチ家、商業銀行、三井越後屋
第2章19世紀 大量生産と大量消費百貨店、カタログ通信販売、コカ・コーラ
第3章20世紀前期 規模と継続性、そして戦争ライン生産方式、ウォルト・ディズニー、コンビニエンスストア
第4章20世紀中期 効率と高速化マクドナルド、トヨタ生産方式、クレジットカード
第5章20世紀後期 インターネットの始まりと終わりAmazon、Netflix、基本プレイ無料のゲーム
第6章21世紀 IT革命とAIの誕生SpaceX、クラウドファンディング、ミッドジャーニー

94本の記事に、101のビジネスモデルが出てきます。そのうち21本は、特定の企業を扱ったものです。さきほどのサウスウエスト航空、セブン-イレブン、フェラーリは、この21本に含まれています。(実際はもっと長い記事です。)

480ページを読み切る必要がない理由

分厚い本です。480ページあります。

ただ、最初から順に読む本ではありません。

1話は見開き2つ、4ページです。そのうち最初の1ページはほとんどイラストで、3ページ目も半分は図が入ります。文字だけを数えると、正味2ページ半といったところでしょうか。特定の企業を扱う21本は6ページですが、こちらもイラストを除けば約4ページ分です。

しかも、話どうしがつながっていません。前のページを読んでいなくても、次のページを読まなくても困りません。

休み時間に1話。寝る前に1話。目次を眺めて、気になった時代や知っている会社から開いてください。

ひとつ謝らなければいけないこと

この本、タイトルに「進化論」と入っています。ところが、進化論について論じているページは6ページしかありません。480ページのうちのわずか6ページです。原稿がほとんど書き上がった頃にタイトルが決まり、そこから進化論の話を書き足しました。

生物学の理論をビジネスに応用した本を探している方には、期待に沿わないと思います。

ただ、その6ページは真面目に書きました。各章の終わりに1ページずつ、その章に出てきたビジネスを、生き物の進化になぞらえて読み直しています。環境が変われば、それに合った商売が生まれ、合わなくなったものは姿を変えていく。ビジネスモデルの歴史は、進化論の文脈でも説明できることがわかります。

当たり前のものにも最初の誰かがいる

いま当たり前に使っているサービスにも、必ず最初の誰かがいます。その人が何に困り、何を思いつき、どこで躓いたのか。時代の事情も、そのまま形に残っています。

はじめから今の形だったものは、ひとつもありません。そういう話が、この本には94本入っています。書店で見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。1記事4ページ構成です。

Amazonで予約を受け付けています。

よくある質問

『ビジネスモデル進化論』はどんな本ですか。

約1万2000年前の農業革命から2022年まで、いま当たり前になっている商売が、どういう事情で生まれたのかを1話ずつたどった本です。94本の記事に101のビジネスモデルが登場し、そのうち21本は特定の企業を扱っています。序章と6つの章で構成しています。秀和システム新社から近く発売され、Amazonで予約を受け付けています。

1記事はどれくらいの長さですか。

見開き2つ、4ページです。最初の1ページはほとんどイラストなので、文字だけなら正味2ページ半ほど。特定の企業を扱う21本は6ページ構成で、イラストを除くと4ページ分です。話どうしがつながっていないので、どこから読んでも、どこでやめても困りません。

どこから読めばいいですか。

順番に読む必要はありません。気になった時代や、知っている企業名などから開いてください。

進化論の解説書ですか。

いいえ。480ページのうち、進化論について論じているのは、各章の終わりに置いたコラム6ページだけです。書籍のタイトルが決まった後に、進化論の内容を書き足しました。ビジネスが生まれた瞬間の物語がメインです。

予備知識は必要ですか。

必要ありません。経営学の用語を知らなくても読めるように書いています。


この本では、ひとつひとつのビジネスがどう生まれたかをたどりました。生まれたあとの仕組みが、どう回っているのか。それは、一枚の図に描けます。第5章に出てくるAmazonを例にしたビジネスモデル回路図の記事をご覧ください。

もうひとつ。どんなビジネスモデルも「価値の生み方」という視点で分解すると、たった3つの元素に行き着きます。その話はビジネスモデル構造式の記事に書きました。