マズローの欲求段階説:利己的欲求
階層の下から4つの「生理的欲求」「安全欲求」「所属と愛の欲求(社会的欲求)」「尊重欲求」は、他者しか満たすことが出来ない欲求で、「欠乏欲求」と呼ばれます。
一方で「自己実現欲求」は、自分で満たすことができます。これらすべてをまとめて「利己的欲求」、つまり自分の利益を中心に考える欲求と言われます。
生理的欲求(Physiological)
生理的欲求とは、食欲、性欲、睡眠欲など三大欲求に代表されるような、人間の生存に関わる原始的・本能的な欲求です。
例としては「腹が減ったから何か食べたい」などです。
安全欲求(Safety)
安全欲求とは、生命の危機を避けるための安全性を求め、安定した状況を確保するような欲求のことです。
例としては「路上で寝るのは嫌だから宿に泊まりたい」など。
物理的・肉体的な安全性については、アルダファーのERG理論の「存在欲求(Existence)」に相当し、対人的な安全性については「関係欲求(Relatedness)」に相当しています。
所属と愛の欲求(Belongingness and Love)
所属と愛の欲求は「社会的欲求」とも表現されます。集団や社会に所属し、他者によって愛情を満たすことを求める欲求です。
例としては「ひとりでは寂しいので社会人サークルに属したい」などです。
尊重欲求(Esteem)
尊重欲求は、「自尊欲求」や「評価欲求」などとも表現されます。他者から尊重されたり、敬意を表されたりすることを求める欲求と言えます。
例としては「仕事において自分の実力を認められることで尊敬されたい」などです。
対人的な尊重欲求は、アルダファーのERG理論の「関係欲求(Relatedness)」に相当し、自己成長に対する尊重欲求は「成長欲求(Growth)」に相当しています。
自己実現欲求(Self-actualization)
自己実現欲求とは、自分の持っている能力を最大限に発揮して、自分自身が理想とする状態になろうとする欲求のことです。そのため4つの欠乏欲求と違って、自己努力で満たすことが可能です。
また満たされることで、より一層欲求が強化される性質を持っています。
例としては「歌手になってたくさんの人に自分の曲を聴いて欲しい。」などです。
マズローの欲求段階説:自己超越欲求(Self-transcendence)
1971年にマズロー教授自身によって追加された、6段階目の欲求が「自己超越欲求」です。
自己超越欲求は利他的(他人のため)で、
- 自分の利益を超えて他者のために何かを成したい
というような欲求です。
自己の領域の外にあるゴールを実現することで、自分自身を見つけることが出来ると考えられています。
マズロー教授自身が自己実現欲求について批評し、晩年に追加された高次概念として知られています。宗教学や哲学において共通点が多く見られる概念です。
おすすめの書籍
マズロー教授の理論については、こちらの「人間性シリーズ」2冊を確認ください。
古い理論なので、そのままは使えませんが、現代のモチベーション理論に通じる何かしらの示唆があるかと思います。