構造で読む:テスラのサイバーキャブは、UberとWaymoのいいとこ取り

構造で読む テスラ サイバーキャブの計画

2026年9月、テスラは米国テキサス州オースティンで、ハンドルもペダルも無い車「サイバーキャブ」を使ったロボタクシーの営業を始めました。 その前日には、サイバーキャブを買って走らせる法人を募る窓口も開いています。

この動きを事実から順に追ったのが、筆者が先に書いた「サイバーキャブでテスラが狙っているのは、他人の金で作るタクシー網」という記事です。Uber(ウーバー)、Waymo(ウェイモ)、テスラの3社で車両を誰が所有しているかを比べ、テスラがタクシー事業をフランチャイズにしようとしていると読んでいます。窓口に並んだ選択肢やサイバーキャブの充電をめぐる事情など、材料になった事実を1つずつ確かめたい方は下の記事をご覧ください。

サイバーキャブでテスラが狙っているのは、他人の金で作るタクシー網2026年9月、テスラはハンドルもペダルも無いサイバーキャブで客を乗せ始めました。その前日には、車両を買う法人を募る窓口も開いています。自分で走らせている車を、なぜ他人に買わせるのか。Uber・Waymo・マクドナルドと並べて読み解きます。

この記事では、上記の記事で比べた3社の違いと、テスラがフランチャイズにしようとしている仕組みを「ビジネスモデル構造式」と「ビジネスモデル回路図」で読み解きます。上記の記事では扱っていないテスラの電気自動車の販売とのつながりも見ます。上記の記事を読んでいなくても分かるように、必要な事実はその場で説明します。

左上にテスラのサイバーキャブ、右上にUberの配車をしている青いセダン、下にWaymoの自動運転車を並べた写真。
写真:右上と下はDllu(Wikimedia Commons:右上・下/CC BY-SA 4.0)、左上はUlkl(パブリックドメイン)。3枚を並べたこの画像も、CC BY-SA 4.0で公開します。

最後まで記事を読んでいただくと、次の2つについてビジネスモデルの構造が理解できるはずです。

  1. Uber・Waymo・テスラの3社のビジネスモデルの違い
  2. テスラの電気自動車の販売とロボタクシーのフランチャイズの構造的なつながり

1つ目は、同じように「アプリで配車する」3社がそれぞれ何を会社の中に持ち、何を外に出し、誰からお金を受け取っているかです。ビジネスモデル構造式で描いた、次のような構造式が読めるようになります。

テスラ ロボタクシーの計画

2つ目は、テスラの電気自動車の販売とロボタクシーのフランチャイズが何を共有していて、それがどちらの客に効いているかです。2つの事業をビジネスモデル回路図でつないだ、次の回路図が読めるようになります。

テスラの電気自動車の販売とロボタクシーのフランチャイズをつないだ回路図

どちらも初めて見る方には、記号の多い図だと思います。読み方は最初から1つずつ説明し、この2枚が読めるところまで順に進めていきます。

「ビジネスモデル構造式™」と「ビジネスモデル回路図®」は、ビジネスモデル研究家の古市大三が考案した記法と作図法です。以下、ビジネスモデル構造式を「構造式」、ビジネスモデル回路図を「回路図」と略して書きます。

構造式にすると、Uberの車は式の外、Waymoの車は式の中にある

Uber・Waymo・テスラは、どれも客がアプリで配車を依頼するサービスです。3社は、車両を誰が所有しているかで違います。所有しているのは、Uberでは運転手、Waymoと2026年9月のテスラでは会社自身です。構造式にすると、この違いは会社の中に何を持ち、何を外に出し、誰からお金を受け取っているかの違いとして構造式に表れます。

Uberの構造式の価値元素は1つだけ。価値元素でビジネスモデルを読みとく基礎知識

Uberの構造式は、下のとおりです。

Uberの構造式。接続元素(Nt)が1つで、右側に乗客と運転手

上の構造式の「Nt」は、ビジネスモデルの元素記号です。構造式では、会社が価値を生み出す働きを「価値元素」と呼びます(化学の元素とは別物です)。価値元素(以降は、元素と呼びます。)は次の3種類で、どんな会社のビジネスモデルもこの3種類の組み合わせで表現することができます。

元素記号どんな働きか
接続元素Nt人や組織どうしをつなぐ
変換元素Ch材料や案件を、決まった手順で製品やサービスに変えて届ける
解決元素Sh答えの決まっていない問題を見つけ、試しながら解いていく

最初にお見せした構造式の、元素記号の右側に書いてあるのは、その元素に対してお金を払う人で、構造式では「支払者」と呼びます。Uberの支払者は、乗客と運転手の2者です。

Uberの元素は「乗客と運転手をつなぐ(Nt)」の1つだけです。乗りたい人と自分の車で来る運転手を結びつける働きで、車を作るための元素も所有するための元素も、式のどこにも出てきません。この接続元素が機能するためには、つなぐ対象となる参加者が必要です。Uberがつなぐのは乗客と運転手の2種類。その片側の運転手が、運転という労働と車両という資産を、一緒に持ってきます。

この構造式は、Uberの配車の本体だけを描いています。テキサス州オースティンとジョージア州アトランタでは、UberのアプリでWaymoの自動運転車も呼べますし、 Uberは電気自動車メーカーのリビアンから自動運転車を購入する契約も結んでいます(最初の運行は2028年の予定)。 これらを表現するための元素については、比較しやすくするために今回は省略しています。

Waymoの構造式には、自動運転AIと直営ロボタクシーが並び、車の製造と整備は組織の外にある

Waymoの構造式は、下のとおり。価値元素が4つ並び、そのあいだを線が結んでいます。

Waymoの構造式。自動運転AI(Sh)と直営ロボタクシー(Ch)、角括弧の中のロボタクシー製造と車両の充電清掃整備

並んでいる元素は4つですが、種類は解決元素と変換元素の2種類です。4つの元素は、下の表のとおりです。

元素の名前記号何をしているか支払者
自動運転AISh自動運転のソフトウェアを開発するなし
直営ロボタクシーCh自社の車で乗客を運ぶ乗客
ロボタクシー製造[Ch]自動運転用の車を作るなし
車両の充電清掃整備[Ch]拠点で車を充電・整備するなし

角括弧で囲まれた2つは、Waymoの会社の外にある働きです。構造式では、外注や委託で外部の会社が担う働きを、角括弧で囲んで示します。Waymoの車を作るのは、ジャガー(旧世代)やジーカー(現行世代)で、 拠点での整備と運営は、都市ごとに別の外部の会社に任せています。

「自動運転AI(Sh)」を解決元素に置いているのは、自動で運転させるための走行の課題を、データを集めて試しながら解いていく働きだからです。そしてこの元素の右側には、支払者がいません。乗客が払っているのは「直営ロボタクシー(Ch)」の運賃で、自動運転AIそのものに直接お金を払う人はいないということです。

Waymoにも自社の配車アプリがあるのに、接続元素(Nt)がありません。Waymoのアプリがつなぐのは、乗客とWaymo自身のロボタクシーだけだからです。マッチング・運賃設定・決済という配車の仕組みは3社とも持っていますが、構造式でそれを接続元素として書くのは、Uberの運転手のように乗客と運転手をつなぐことで価値を生み出し対価を得ている場合です。

Waymoでは、マッチングしたことで誰かに対価を払っているわけではないので、配車の仕組みは「直営ロボタクシー(Ch)」の働きの一部として扱います。なお、前述のようにオースティンやアトランタのWaymoはUberから配車してもらうことが可能ですが、構造式を単純化するために例外として省略しています。

構造式の結合の本数は、4つの問いで判定する

Waymoの構造式で価値元素どうしを結ぶ線は「結合」と呼びます。本数は1本から4本で、2つの元素がどれだけ強く依存し合っているかを表します。

本数は見た目の印象ではなく、4つの問いの答えで決めます。問いに使うのは、元素ごとに決まっている2つの要因です。「成長要因」は、増えるほど効率や価値が上がるもの。「駆動要因」は、供給されなければ事業が成立しないもの。

成長要因には、元素ごとに次の3つがあります。

  • ネットワーク効果:参加者が増えるほど、やり取りの質(配車なら、車の捕まりやすさや待ち時間の短さ)が上がること
  • 規模の経済:扱う量が増えるほど、1件あたりの費用が下がること
  • 知識と評判の蓄積:解いた課題がたまって賢くなり、信頼されること(自動運転AIなら、走行データと解いた課題がたまって賢くなること)
元素成長要因駆動要因
接続元素(Nt)ネットワーク効果つなぐ参加者
変換元素(Ch)規模の経済投入するものと、届ける経路
解決元素(Sh)知識と評判の蓄積解くべき課題

接続元素のつなぐ参加者は、乗客と運転手のように2種類をつなぐなら、その両方です。

2つの元素をAとBとすると、次の4つをこの順に問います。

  • 成長:Bを外すと、Aの成長要因が効きにくくなるか
  • 駆動:Bがなくなると、Aは駆動要因を自前で用意しないと事業が回らないか。すでに別のところから得ていて、改めて用意しなくても事業が回るなら、回らないとは言わない
  • 成長:Aを外すと、Bの成長要因が効きにくくなるか
  • 駆動:Aがなくなると、Bは駆動要因を自前で用意しないと事業が回らないか

問うのは、2つの元素のあいだで直接起きることです。ほかの元素を経由して起きることは、その元素とのあいだの結合として数えます。Waymoの元素で言えば、自動運転AIが賢くなって運行が広がり、そのぶん製造するロボタクシーの台数が増えるのは、運行を経由して起きることなので、「自動運転AI(Sh)」と「ロボタクシー製造([Ch])」の結合には数えません。作る車が自動運転AIを載せる前提で設計されていることは、この2つのあいだで直接起きることなので数えます。

弱くても確かに効いていれば結合しているとみなします。

Waymoの4つの結合のうち、まず「自動運転AI(Sh)」と「直営ロボタクシー(Ch)」の結合です。

Waymoの自動運転AIと直営ロボタクシーは、4本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「直営ロボタクシー(Ch)」を外すと、「自動運転AI(Sh)」の知識と評判の蓄積が進みにくくなるか自動運転AIを育てる走行データは、直営ロボタクシーの走行から得ている○
駆動「直営ロボタクシー(Ch)」がなくなると、「自動運転AI(Sh)」は解くべき課題を自前で用意しないと事業が回らないかWaymoには、自動運転のソフトウェアを載せて走る車が、直営ロボタクシーのほかに無い。解くべき課題も、直営の走行から得ている○
成長「自動運転AI(Sh)」を外すと、「直営ロボタクシー(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか自動運転AIの性能が上がるほど、1台あたりの乗車回数が増え、1回あたりの車両費が下がる○
駆動「自動運転AI(Sh)」がなくなると、「直営ロボタクシー(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか自動運転AIが無ければ、無人で乗客を運ぶ手段が無い○

つまり結合は4本です。

次は「自動運転AI(Sh)」と「ロボタクシー製造([Ch])」の結合です。

Waymoの自動運転AIとロボタクシー製造は、1本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「ロボタクシー製造([Ch])」を外すと、「自動運転AI(Sh)」の知識と評判の蓄積が進みにくくなるか車を作ること自体は、走行データを生まない×
駆動「ロボタクシー製造([Ch])」がなくなると、「自動運転AI(Sh)」は解くべき課題を自前で用意しないと事業が回らないか車を作ること自体は、解くべき課題を生まない。課題は、走る車から得ている×
成長「自動運転AI(Sh)」を外すと、「ロボタクシー製造([Ch])」の規模の経済が効きにくくなるか生産台数を増やすのは運行の広がりで、自動運転AIは運行を通して効くだけ×
駆動「自動運転AI(Sh)」がなくなると、「ロボタクシー製造([Ch])」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないかWaymoは、ジーカーの車を、自社の自動運転AIを組み込んで無人の配車に使うために設計された車と説明している。 自動運転AIは、作る車に欠かせない部品として投入するもので、無ければ無人で走る車として成り立たない○

つまり結合は1本です。

3つ目は「ロボタクシー製造([Ch])」と「直営ロボタクシー(Ch)」の結合です。

Waymoのロボタクシー製造と直営ロボタクシーは、4本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「直営ロボタクシー(Ch)」を外すと、「ロボタクシー製造([Ch])」の規模の経済が効きにくくなるか直営が広がるほど生産台数が増え、メーカーの側の規模の経済が効く、と筆者は読む○
駆動「直営ロボタクシー(Ch)」がなくなると、「ロボタクシー製造([Ch])」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか作られた車の行き先は、Waymoの直営だけ○
成長「ロボタクシー製造([Ch])」を外すと、「直営ロボタクシー(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるかジーカーは、この車を、自動運転のために設計した量産車と発表している。 量産される車なので1台の車両費が抑えられ、直営が台数を増やすほど、1回あたりの車両費が下がりやすい、と筆者は読む○
駆動「ロボタクシー製造([Ch])」がなくなると、「直営ロボタクシー(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないかWaymoは車を作らない。メーカーがいなければ、直営は走れない○

Waymoの車を作るのは外の会社なので、量産で下がる費用のうちどれだけをWaymoへの値下げに回すかは、メーカーとの取り決めしだいです。値下げに回る分が小さくても確かに効いていると読んで、結合していると判断しました。よって結合は4本。

最後は「直営ロボタクシー(Ch)」と「車両の充電清掃整備([Ch])」の結合です。

Waymoの直営ロボタクシーと車両の充電清掃整備は、4本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「車両の充電清掃整備([Ch])」を外すと、「直営ロボタクシー(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか拠点の運営を、都市ごとに外部の会社に任せている。 任せることで展開する都市を増やせ、直営の1台あたりの固定費が下がる、と筆者は読む○
駆動「車両の充電清掃整備([Ch])」がなくなると、「直営ロボタクシー(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか充電と整備をしなければ、車は走れない○
成長「直営ロボタクシー(Ch)」を外すと、「車両の充電清掃整備([Ch])」の規模の経済が効きにくくなるか直営の台数が増えるほど、1台あたりの拠点の設備費と人件費が下がる○
駆動「直営ロボタクシー(Ch)」がなくなると、「車両の充電清掃整備([Ch])」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか拠点の仕事はWaymoの車のためのもので、直営が無ければ仕事が無い○

つまり結合は4本です。

4つの結合を並べると、Waymoのビジネスモデルの姿が見えてきます。4本で結ばれているのは、どれも「直営ロボタクシー(Ch)」とのあいだです。自動運転AIも、Waymoのために車を作る働きも、Waymoの車のための拠点の働きも、直営ロボタクシーが無ければ回らず、直営ロボタクシーも、そのどれが欠けても走れない(メーカーや拠点を運営する会社は、ほかの事業も持っているので、会社としては回り続けます)。Waymoの構造式は、直営ロボタクシーを真ん中に、ほかのすべてが直営の運行のためにある構造です。

2026年9月に始まったテスラのロボタクシーの構造式は、外注・委託先が1つも無い三角形

2026年9月にオースティンを走っているサイバーキャブは、車を作るのも、所有するのも、走らせるのもテスラ自身です。 構造式にすると、Waymoと同じ価値元素を持ちながら、角括弧(つまり、外注や委託している活動)が1つも出てきません。

2026年9月のテスラのロボタクシーは、車の製造も運行も会社の中にある

2026年9月のテスラのロボタクシーの構造式は、下のとおりです。

テスラ 2026年9月のロボタクシー

上の構造式の3つの価値元素は、Waymoの構造式と同じ価値元素です。

元素の名前記号何をしているか支払者
自動運転AISh自動運転のソフトウェアを開発するなし
直営ロボタクシーCh自社の車で乗客を運ぶ乗客
ロボタクシー製造Ch直営に出す車を作るなし

Waymoと違うのは、「ロボタクシー製造(Ch)」に角括弧(外注や委託)が無いことです。サイバーキャブは、テキサス州にあるテスラ自身の工場で作られています。 「車両の充電清掃整備([Ch])」の元素もありません。サイバーキャブの充電の拠点は、テスラが自分で建てています。

構造式には、客が払う理由に直接つながらない社内の働きを通常はのせません。この構造式で、要素として加えるかどうかの判断は次のとおり。

  • 「自動運転AI(Sh)」:書く。支払者はいないが、無人で走れることが、乗客がこの車に乗る理由そのもの
  • テスラの充電の拠点:書かない。自社の車を充電するだけの社内の働き
  • 車の製造:本来は書かない側だが、Waymoと比べるために、あえて書く

車を作る働きが会社の中にあるかどうかで、生産台数が増えて原価が下がったとき、その分が誰の利益になるかが変わります。テスラのように内製していれば、原価が下がった分はそのままテスラの手元に利益として残る。Waymoのように外注や委託をしているのであれば、コストが下がった分はまずメーカーの利益になります。

3つの結合も、Waymoと同じ4つの問いで結合度合いを判断します。まず「ロボタクシー製造(Ch)」と「直営ロボタクシー(Ch)」の結合です。

テスラのロボタクシー製造と直営ロボタクシーは、4本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「直営ロボタクシー(Ch)」を外すと、「ロボタクシー製造(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか直営が広がるほど生産台数が増え、規模の経済が効く○
駆動「直営ロボタクシー(Ch)」がなくなると、「ロボタクシー製造(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか2026年9月の時点では、作った車の行き先が直営しかない○
成長「ロボタクシー製造(Ch)」を外すと、「直営ロボタクシー(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか生産台数が増えるほど1台の原価が下がり、直営の1回あたりの費用が下がる○
駆動「ロボタクシー製造(Ch)」がなくなると、「直営ロボタクシー(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないかテスラが作らなければ、直営は走れない○

つまり結合は、Waymoと同じ4本です。

次は「自動運転AI(Sh)」と「ロボタクシー製造(Ch)」の結合です。

テスラの自動運転AIとロボタクシー製造は、1本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「ロボタクシー製造(Ch)」を外すと、「自動運転AI(Sh)」の知識と評判の蓄積が進みにくくなるか車を作ること自体は、走行データを生まない×
駆動「ロボタクシー製造(Ch)」がなくなると、「自動運転AI(Sh)」は解くべき課題を自前で用意しないと事業が回らないか車を作ること自体は、解くべき課題を生まない×
成長「自動運転AI(Sh)」を外すと、「ロボタクシー製造(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか生産台数を増やすのは運行の広がりで、自動運転AIは運行を通して効くだけ×
駆動「自動運転AI(Sh)」がなくなると、「ロボタクシー製造(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないかハンドルもペダルも無いサイバーキャブは、 自動運転AIを載せる前提で作られている。自動運転AIは、作る車に欠かせないソフトウェアとして投入するもので、無ければ走れる車として成り立たない○

結合は、こちらもWaymoと同じ1本です。

残るのは「自動運転AI(Sh)」と「直営ロボタクシー(Ch)」の結合です。

自動運転AIと直営ロボタクシーの結合は、Waymoが4本、テスラが3本

同じ2つの価値元素の結合を、Waymoとテスラで並べます。下記のWaymoの構造式と結合の判定表は、比較のために先ほど説明したものを再掲しています。2つの表で答えが分かれるのは、「直営ロボタクシー(Ch)」がなくなったときに「自動運転AI(Sh)」が回らなくなるかの問いだけです。

まずWaymo。

Waymoの自動運転AIは、直営ロボタクシーなしには回らない
要因問い答え判定
成長「直営ロボタクシー(Ch)」を外すと、「自動運転AI(Sh)」の知識と評判の蓄積が進みにくくなるか自動運転AIを育てる走行データは、直営ロボタクシーの走行から得ている○
駆動「直営ロボタクシー(Ch)」がなくなると、「自動運転AI(Sh)」は解くべき課題を自前で用意しないと事業が回らないかWaymoには、自動運転のソフトウェアを載せて走る車が、直営ロボタクシーのほかに無い。解くべき課題も、直営の走行から得ている○
成長「自動運転AI(Sh)」を外すと、「直営ロボタクシー(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか自動運転AIの性能が上がるほど、1台あたりの乗車回数が増え、1回あたりの車両費が下がる○
駆動「自動運転AI(Sh)」がなくなると、「直営ロボタクシー(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか自動運転AIが無ければ、無人で乗客を運ぶ手段が無い○

次がテスラです。

テスラの自動運転AIは、直営ロボタクシーがなくても育ち続ける
要因問い答え判定
成長「直営ロボタクシー(Ch)」を外すと、「自動運転AI(Sh)」の知識と評判の蓄積が進みにくくなるか直営ロボタクシーが無人で走って集めるデータも、自動運転AIを育てている。外せば、そのぶん鈍る○
駆動「直営ロボタクシー(Ch)」がなくなると、「自動運転AI(Sh)」は解くべき課題を自前で用意しないと事業が回らないか解くべき課題は、売った電気自動車の走行からもすでに得ている、と筆者は読む×
成長「自動運転AI(Sh)」を外すと、「直営ロボタクシー(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか自動運転AIの性能が上がるほど、1台あたりの乗車回数が増え、1回あたりの車両費が下がる○
駆動「自動運転AI(Sh)」がなくなると、「直営ロボタクシー(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか自動運転AIが無ければ、無人で乗客を運ぶ手段が無い○

結合の数は、Waymoが4つ、テスラが3つです。

テスラはロボタクシーとは別に電気自動車を売っていて、その車の多くは自動運転のソフトウェアを載せて道を走っています。テスラの年次報告書は、自社の車両が集める大量の走行データで、ニューラルネットワーク(データから学んで判断を身につけるプログラムで、自動運転AIの中身にあたる)を訓練し続けている、と書いています。 ここでいう車両には客に売った電気自動車も含まれる、と筆者は見ています。

遠隔で車を見守る仕事や、人を乗せずに走るときにしか出てこない課題は、人が運転席に座って監視する電気自動車の走行からは得られません。それでも筆者は、自動運転AIが解くべき課題の大半は、道路を走る車ならどれでも出会うもので、電気自動車の走行から得られると読んでいます。そう読むと、直営ロボタクシーを外しても自動運転AIは育ち続ける。だから先ほどの判定表の2行目は結合していないという判定です。

なお、結合の本数は、結合の強さであって、良し悪しではありません。結合は依存し合う関係なので、強いほど片方のつまずきがもう片方に及びます。テスラが1本少ないのは、ロボタクシーの事業がつまずいても自動運転AIは電気自動車の走行で育ち続ける、ということでもある。

テスラの自動運転AIにも、構造式の中に支払者はいません。自動運転AIそのものにお金を払っている人は、ロボタクシーの構造式には出てこない、電気自動車の購入者です。自動運転のソフトウェアのFSDは、2026年2月14日から単体の買い切り販売をやめ、月額99ドル(約1万5,000円。円は1ドル150円で換算しています。以下も同じです)に切り替わりました。 払っているのは、テスラの電気自動車を購入して自分で乗っている人です。つまり2つの事業が同じ自動運転AIを共有している、ということ。電気自動車の販売は、客が違うので、ロボタクシーとは別の構造式になります。

「テスラのロボタクシーの計画」の構造式では、加盟者が3つの価値元素にお金を払う

テスラが2026年9月に開いた窓口は、サイバーキャブを買って走らせる相手と拠点を設けて運営する相手を、別々の項目で募っています。 筆者は、これをタクシー事業のフランチャイズの募集と読んでいます。この記事では、テスラが目指すこの事業を「ロボタクシーのフランチャイズ」と呼び、まだ計画の段階なので、その構造式を「テスラのロボタクシーの計画」の構造式と呼びます。計画を構造式にすると、サイバーキャブを買う加盟者は3つの価値元素にお金を払い、3つのどれからも車を手放すまでは離れられない構造になる、と読めます。

「テスラのロボタクシーの計画」の構造式には、価値元素が6つ並ぶ

「テスラのロボタクシーの計画」を構造式にすると、下のようになります。

テスラ ロボタクシーの計画

上の構造式の6つの価値元素は、次のとおりです。

元素の名前記号何をしているか支払者
自動運転AISh自動運転のソフトウェアを開発するなし
直営ロボタクシーChテスラ自身の車で乗客を運ぶ乗客
ロボタクシー製造販売Chサイバーキャブを作って加盟者に売る。直営の車も作る加盟者
乗客と加盟者をつなぐNt乗客と、加盟者の車を、配車でつなぐ乗客・加盟者
電気の供給Ch拠点で、加盟者の車に電気を供給する加盟者
車両の充電清掃整備[Ch]充電・清掃・整備の拠点を運営するなし

サイバーキャブを買ってテスラの配車のネットワークで走らせる人や組織をこの構造式では「加盟者」と表現しています。この記事では、加盟者の車と乗客がつながる場のことを配車のネットワークと呼んで、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」という価値元素を置いています。上の構造式は、真ん中の「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」をはさんで、上に3つの元素でできた三角形、下にもう1つの三角形が並んでいます。この記事では、下を「車両の三角形」、上を「充電の三角形」と呼びます。

2026年9月のテスラのロボタクシーの構造式と比べると、「自動運転AI(Sh)」と「直営ロボタクシー(Ch)」は、そのまま残ります。2つのあいだの結合も残っていますが、上の構造式では、その線を省いています。「自動運転AI(Sh)」「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」「ロボタクシー製造販売(Ch)」「直営ロボタクシー(Ch)」の4つは互いにすべて結ばれていて、6組すべての線を描くと、どの線がどの元素どうしを結んでいるのか読めなくなるためです。

「ロボタクシー製造(Ch)」は、加盟者に車を売る働きが加わって「ロボタクシー製造販売(Ch)」になり、支払者に加盟者が付きます。そのほかに、3つが新しく現れます。

  • 「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」:加盟者の車を乗客とつなぐ働き。加盟者の車はテスラの外の人が所有する車で、乗客とつなぐ車に、会社の外の持ち主が出てきたので、Uberの構造式と同じ接続元素が現れる
  • 「電気の供給(Ch)」:加盟者の車に、テスラが電気を売る働き。家で充電する仕組みが発表されていないサイバーキャブを、加盟者が走らせるようになるので現れる、と読んでいる
  • 「車両の充電清掃整備([Ch])」:拠点で車を充電・清掃・整備する働き。拠点を運営するのはテスラが募集している外部の相手(この記事では「地域パートナー」と呼ぶ)なので、会社の外にある働きとして角括弧で囲む

この構造式は、下記のようにテスラが計画を実現したときに想定される状況を描いたものです。

  • 加盟者の車が、走っているロボタクシーの大半になっている
  • 充電が、ワイヤレス充電(プラグを挿さず、床のパッドの上に止まるだけで充電する方式)に移り、加盟者の車は拠点の専用のパッドで充電している(家で充電する仕組みは、テスラから発表されていない)

2026年9月の時点では、どちらもまだ実現していません。

運賃の分配のされ方や、加盟者から徴収する費用なども、テスラからは示されていませんが、 以下のようになると想定して書いています。

  • 乗客が加盟者の車に乗ったとき:乗客が払った運賃はいったんテスラに入り、テスラがその一定の割合をシステム利用料として差し引いて、残りを加盟者に渡す。乗客は運賃を、加盟者はシステム利用料を、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」に払う支払者
  • 乗客が直営の車に乗ったとき:運賃は、そのまま「直営ロボタクシー(Ch)」の売上

「テスラのロボタクシーの計画」の構造式で、加盟者は3つの価値元素にロックインされる

加盟者がテスラに対してお金を払うのは、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」「ロボタクシー製造販売(Ch)」「電気の供給(Ch)」の3つの価値元素です。

加盟者は、お金を払う3つの元素のどれからも離れられない

上の構造式で赤い「加盟者」は、3つの元素のすべてで元素記号の右下に付いています。「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」では、「乗客」が右上、「加盟者」が右下です。右上は、その支払者がほかへ移ろうと思えば移れること。右下は移れない、つまりロックインされていることを表します。加盟者が右下に付く理由は、元素ごとに違います。

  • 「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」:サイバーキャブにはハンドルもペダルも無く、 テスラの自動運転AIでしか走れない。そのAIを、テスラは自社の配車のネットワークの外では使わせない、と筆者は読んでいる。だから、ほかの会社の配車のネットワークと掛け持ちできない
  • 「ロボタクシー製造販売(Ch)」:配車のネットワークから離れられないので、買い足す車も、買い替える車も、サイバーキャブに限られる。新しい車両の購入先は、テスラになる
  • 「電気の供給(Ch)」:家で充電する仕組みは、テスラから発表されていない。この構造式が描くワイヤレス充電の時点では、専用のパッドのある拠点で充電する。走らせているあいだは、拠点で電気を買い続けることになる

3つのうち、サイバーキャブの購入は買うときに効くロックインで、配車サービスと充電はサイバーキャブを営業させているあいだずっと効くロックインです。

フランチャイズから抜ける道が無いわけではありません。一般のフランチャイズでも、やめたい加盟者の店を本部が直営に戻したり、近くで複数の店を持つ加盟者が買い取ったりして、抜けられるようにしていることがあります。テスラの加盟者にも、車を直営やほかの加盟者に引き取ってもらう道はありそうです。それでも、抜けるには車を手放すしかない。手放すまでは、離れられません。

ここで、Uberの構造式をもう一度見ます。

Uberの構造式。接続元素(Nt)が1つで、右側に乗客と運転手

上の構造式のUberでは、運転手は乗客と並んで、元素記号の右上に付いています。Uberの年次報告書は、運転手がUberの競合のプラットフォームでも走れること、いつどこで走るかを自分で選べることを書いています。 だからUberは、走る運転手の数を、インセンティブ(運賃に上乗せして運転手に払う報酬)で調整します。インセンティブを大きく出してきたことも、同じ報告書にあります。 出せば運転手が集まり、止めれば離れる。

筆者の読みでは、テスラの加盟者はサイバーキャブを購入した時点で離れられなくなります。すでに買った加盟者は、インセンティブを止めても抜けません。テスラが配車の優先順位や走れる地域を変えられる立場にあると指摘する報道はあり、 すでに走っている車の使われ方は、テスラが左右できます。

サービスの利便性を向上させるために、加盟者のサイバーキャブの台数を増やすとなると話が変わります。打ち手は2つあると考えます。

  • システム利用料の割合を下げる:これから購入する人の採算も良くなるが、すでに走っている加盟者全員の取り分も変わる
  • 車両価格を値引きする:これから購入する人だけに効く
Uberの運転手テスラの加盟者
ロックインなしあり
持ち込むもの運転の労働と、ほかのアプリでも使える自分の車両テスラの配車のネットワークでしか使えないサイバーキャブ
参加する車を増やす手段インセンティブ(運賃に上乗せして払う報酬)システム利用料の割合を下げる/これから買う人への車両価格の値引き

どちらも車を持ち込んで参加します。違うのは、その車をほかでも使えるかどうか。同じ接続元素でも、参加する車の数を調整する手段が変わるということです。

「テスラのロボタクシーの計画」の構造式における「車両の三角形」

「車両の三角形」は、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」「ロボタクシー製造販売(Ch)」「直営ロボタクシー(Ch)」の3つの価値元素でできた三角形です。

ロボタクシーを売り、自分でも走らせる「車両の三角形」

上の構造式で強調されている三角形には、結合が3組あります。3組とも4本に届きません。結合していないのは、どれも駆動の問いです。作った車には加盟者と直営という2つの行き先があり、乗客を運ぶ車も加盟者の車と直営の車の2通りあるので、片方がなくなっても、もう片方で事業が回ります。

1組目は「ロボタクシー製造販売(Ch)」と「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」の結合です。接続元素の成長の問いでは、参加者の数そのものではなく、相手の元素がやり取りの質を押し上げているかを見ます。

ロボタクシー製造販売と、乗客と加盟者をつなぐ働きは、3本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」を外すと、「ロボタクシー製造販売(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか加盟者が増えるほど生産台数が増え、規模の経済が効く○
駆動「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」がなくなると、「ロボタクシー製造販売(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか加盟者に売れなくても、作った車は直営に回せる。直営の車を作る働きも、この元素に入っている×
成長「ロボタクシー製造販売(Ch)」を外すと、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」のネットワーク効果が働きにくくなるかサイバーキャブは3万ドル(約450万円)未満の価格を目指していて、 量産したときの製造原価の推計もその範囲にある。 量産で安く作れるから加盟者が車両を購入しやすく、加盟者の車が増えて、待ち時間が減る○
駆動「ロボタクシー製造販売(Ch)」がなくなると、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」はつなぐ参加者を自前で用意しないと事業が回らないかサイバーキャブが無ければ、加盟者は参加できない○

つまり結合は3本です。

2組目は「ロボタクシー製造販売(Ch)」と「直営ロボタクシー(Ch)」の結合です。

ロボタクシー製造販売と直営ロボタクシーは、3本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「直営ロボタクシー(Ch)」を外すと、「ロボタクシー製造販売(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか加盟者の車が大半になっても、直営の車を作るぶん生産台数は増える。小さくても、確かに効いている○
駆動「直営ロボタクシー(Ch)」がなくなると、「ロボタクシー製造販売(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか作った車には、加盟者という別の行き先がある×
成長「ロボタクシー製造販売(Ch)」を外すと、「直営ロボタクシー(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか量産が進めば、直営の車の車両原価も下がる○
駆動「ロボタクシー製造販売(Ch)」がなくなると、「直営ロボタクシー(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないかテスラが作らなければ、直営は走れない○

つまり結合は3本です。

3組目は「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」と「直営ロボタクシー(Ch)」の結合です。乗客はアプリで配車を依頼したときに、配車されるのが加盟者の車か直営の車かを選ぶことができないと考えるのが妥当。接続元素として立てているのは、加盟者の車を乗客とつなぐ働きです。

乗客と加盟者をつなぐ働きと直営ロボタクシーは、2本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「直営ロボタクシー(Ch)」を外すと、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」のネットワーク効果が働きにくくなるか直営の車も同じアプリで呼ばれる。直営の台数が増えれば待ち時間が減って乗る人が増え、加盟者の車にとっての価値も上がる○
駆動「直営ロボタクシー(Ch)」がなくなると、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」はつなぐ参加者を自前で用意しないと事業が回らないか加盟者の車が大半になったあとは、直営を外しても、つなぐ加盟者と乗客はいる×
成長「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」を外すと、「直営ロボタクシー(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか加盟者の車が増えて待ち時間が減れば乗る人が増え、その乗客は直営の車にも乗る○
駆動「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」がなくなると、「直営ロボタクシー(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか直営の車を乗客とつなぐ配車の仕組みは、直営ロボタクシーの働きの一部。加盟者の車をつなぐ働きがなくなっても、直営は2026年9月と同じやり方で走れる×

つまり結合は2本です。

加盟者の車が増えると、直営の車は同じ乗客を分け合うことにもなり、1台あたりの稼働は下がります。

「車両の三角形」からテスラに入るお金は、次の3つです。

  • 車両代:加盟者が「ロボタクシー製造販売(Ch)」に払う
  • 直営の車の運賃:乗客が「直営ロボタクシー(Ch)」に払う
  • システム利用料:「充電の三角形」とも共有している「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」で、加盟者の車に乗った乗客の運賃から差し引く

このうち車両代は、価格と原価の見込みがほぼ重なっています。

  • テスラが付けようとしている価格:3万ドル(約450万円)未満
  • 量産時の製造原価の推計(投資銀行のゴールドマン・サックス):2万〜3万ドル(約300万〜450万円)

この数字を見ると、サイバーキャブを売っても利益は少なそうですよね。

「テスラのロボタクシーの計画」の構造式における「充電の三角形」

「充電の三角形」は、「電気の供給(Ch)」「車両の充電清掃整備([Ch])」「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」の3つの価値元素でできた三角形です。この三角形は、ワイヤレス充電に移ったあとの時点で描いています。2026年9月の時点では、サイバーキャブはプラグを挿して急速充電していて、テスラが一般のテスラ車向けに広げてきた急速充電網(スーパーチャージャー)でも充電できます。 この構造式には、その既存の急速充電網は入れていません。

「電気の供給(Ch)」は、テスラから加盟者に電気を売る働きです。売る電気の量は、電力量の単位のkWh(キロワット時)で数えます。テスラの公式の動画では、車内の画面に「Wireless Charging」と出て、床のパッドから給電される様子が映っています。

「車両の充電清掃整備([Ch])」は、その電気を車に入れ、車を次の客を乗せられる状態に戻す拠点を運営する働きです。テスラの年次報告書は、清掃・整備・充電を含む、ロボタクシー専用の設備を整えていると書いています。 テスラの公式の動画には、ロボットアームに付いた掃除機が、サイバーキャブの座席と床のごみを吸い取る様子もあります。 無人の車には、ごみを拾う運転手がいません。電気を売るのが「電気の供給(Ch)」、その電気を車に入れる設備と作業を受け持つのが「車両の充電清掃整備([Ch])」です。

この構造式では、加盟者の車は「地域パートナー」の拠点で充電し、直営の車はテスラが自前の拠点で充電する、と分けて置いています。窓口が拠点を車の購入とは別の項目で募集しているので、 外部に委託する拠点が出てくるとは読めます。

営業に欠かせない充電を押さえる「充電の三角形」

上の構造式で強調されている三角形にも、結合が3組あります。3組は4本・3本・4本で固く結ばれていて、加盟者の車は、この三角形が無ければ走れません。

1組目は「電気の供給(Ch)」と「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」の結合です。

電気の供給と、乗客と加盟者をつなぐ働きは、4本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」を外すと、「電気の供給(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか走る車が増えるほど供給する電気が増え、充電のソフトウェアや保守といった、1kWhあたりのテスラの側の固定費が下がる○
駆動「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」がなくなると、「電気の供給(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか電気を売る相手は加盟者の車だけ。配車のネットワークが無ければ、売る相手がいない○
成長「電気の供給(Ch)」を外すと、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」のネットワーク効果が働きにくくなるか電気の供給が速く安定するほど、車が止まっている時間が減り、同じ台数でも呼べる車が増えて、待ち時間が縮む○
駆動「電気の供給(Ch)」がなくなると、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」はつなぐ参加者を自前で用意しないと事業が回らないかこの構造式の時点では、加盟者の車は拠点のパッドで充電する。電気の供給が止まれば、加盟者の車は走れない○

つまり結合は4本です。

2組目は「電気の供給(Ch)」と「車両の充電清掃整備([Ch])」の結合です。

電気の供給と車両の充電清掃整備は、3本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「車両の充電清掃整備([Ch])」を外すと、「電気の供給(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか供給する電気の量を決めるのは、走る車の台数と距離で、拠点の数ではない。拠点の運営を外しても、1kWhあたりの費用の下がり方は変わらない×
駆動「車両の充電清掃整備([Ch])」がなくなると、「電気の供給(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないかこの構造式の時点では、加盟者の車は、専用のパッドのある拠点で充電する。拠点が無ければ、充電できない○
成長「電気の供給(Ch)」を外すと、「車両の充電清掃整備([Ch])」の規模の経済が効きにくくなるか充電の仕組みの効率性が改善されれば、1つの拠点で回せる台数が増え、1台あたりの拠点の設備費が下がる○
駆動「電気の供給(Ch)」がなくなると、「車両の充電清掃整備([Ch])」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか拠点で充電できるのは、テスラが電気を供給するから○

つまり結合は3本です。

3組目は「車両の充電清掃整備([Ch])」と「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」の結合です。

車両の充電清掃整備と、乗客と加盟者をつなぐ働きは、4本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」を外すと、「車両の充電清掃整備([Ch])」の規模の経済が効きにくくなるか車が増えるほど、拠点の設備の稼働率が上がり、1台あたりの設備費が下がる○
駆動「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」がなくなると、「車両の充電清掃整備([Ch])」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか外部の拠点は加盟者の車のために置く。配車のネットワークが無ければ、拠点を使う車が無い○
成長「車両の充電清掃整備([Ch])」を外すと、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」のネットワーク効果が働きにくくなるか拠点が増えるほど、走れる範囲が広がり、車を呼べる場所が増えて、車の捕まりやすさが上がる○
駆動「車両の充電清掃整備([Ch])」がなくなると、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」はつなぐ参加者を自前で用意しないと事業が回らないかこの構造式の時点では、拠点が無ければ、充電も、清掃や整備もできず、加盟者の車は走れない○

つまり結合は4本です。

「充電の三角形」は、4本・3本・4本で固く結ばれています。加盟者の車は、この三角形が無ければ走れない。そして加盟者は、「電気の供給(Ch)」の右下に付いています(つまりロックインされています)。テスラが加盟者に電気を売るので、車が走り続けるかぎり、加盟者は拠点で電気を買い続けなければならないと考えるのが妥当でしょう。これは、車両を売って代金を受け取ったあとのテスラに入り続けるお金がある、ということです。

「テスラのロボタクシーの計画」の構造式でも、自動運転AIはロボタクシーがなくても育ち続ける

最後は、どちらの三角形にも入れなかった「自動運転AI(Sh)」と、そこから出ている結合です。

計画でも、自動運転AIはロボタクシーがなくても育ち続ける

上の構造式の「自動運転AI(Sh)」の結合は、3組です。3組目の「直営ロボタクシー(Ch)」とのあいだの線は、構造式に描いていません。1組目は「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」との結合です。駆動の問いは、2026年9月の構造式と同じく、解くべき課題の大半は電気自動車の走行から得られる、という読みで結合を判定します。

計画の自動運転AIと、乗客と加盟者をつなぐ働きは、3本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」を外すと、「自動運転AI(Sh)」の知識と評判の蓄積が進みにくくなるか加盟者の車が無人で走って集めるデータも、自動運転AIを育てている○
駆動「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」がなくなると、「自動運転AI(Sh)」は解くべき課題を自前で用意しないと事業が回らないか解くべき課題は、電気自動車の走行からすでに得ている×
成長「自動運転AI(Sh)」を外すと、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」のネットワーク効果が働きにくくなるか自動運転AIの性能が上がるほど、事故が減り、走るルートの選び方が良くなって、配車のネットワークの価値が上がる○
駆動「自動運転AI(Sh)」がなくなると、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」はつなぐ参加者を自前で用意しないと事業が回らないか自動運転AIが無ければ、加盟者の車は無人で走れず、参加できない○

つまり結合は3本です。

2組目は「ロボタクシー製造販売(Ch)」との結合です。

計画の自動運転AIとロボタクシー製造販売は、1本で結ばれる
要因問い答え判定
成長「ロボタクシー製造販売(Ch)」を外すと、「自動運転AI(Sh)」の知識と評判の蓄積が進みにくくなるか車を作ること自体は、走行データを生まない×
駆動「ロボタクシー製造販売(Ch)」がなくなると、「自動運転AI(Sh)」は解くべき課題を自前で用意しないと事業が回らないか車を作ること自体は、解くべき課題を生まない×
成長「自動運転AI(Sh)」を外すと、「ロボタクシー製造販売(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか生産台数を増やすのは加盟者と直営の広がりで、自動運転AIはそれを通して効くだけ×
駆動「自動運転AI(Sh)」がなくなると、「ロボタクシー製造販売(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないかハンドルもペダルも無いサイバーキャブは、自動運転AIを載せる前提で作られている。自動運転AIは、作る車に欠かせないソフトウェアとして投入するもので、無ければ走れる車として成り立たない○

つまり結合は1本です。

3組目は「直営ロボタクシー(Ch)」との結合です。構造式に線が無いので分かりにくいですが、駆動の問いは1組目と同じ読みで結合を判定します。

計画の自動運転AIと直営ロボタクシーの結合は、図には描いていない
要因問い答え判定
成長「直営ロボタクシー(Ch)」を外すと、「自動運転AI(Sh)」の知識と評判の蓄積が進みにくくなるか直営の車が無人で走って集めるデータも、自動運転AIを育てている○
駆動「直営ロボタクシー(Ch)」がなくなると、「自動運転AI(Sh)」は解くべき課題を自前で用意しないと事業が回らないか解くべき課題は、電気自動車の走行からすでに得ている×
成長「自動運転AI(Sh)」を外すと、「直営ロボタクシー(Ch)」の規模の経済が効きにくくなるか自動運転AIの性能が上がるほど、1台あたりの乗車回数が増え、1回あたりの車両費が下がる○
駆動「自動運転AI(Sh)」がなくなると、「直営ロボタクシー(Ch)」は投入するものと届ける経路を自前で用意しないと事業が回らないか自動運転AIが無ければ、無人で乗客を運ぶ手段が無い○

構造式に描いていないこの結合は3本です。

「車両の三角形」にある2つの価値元素、「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」と「直営ロボタクシー(Ch)」との結合は、どちらも3本で、4本に届きません。結合していると判定できなかったのは、どちらも駆動の問いです。ロボタクシーを外しても、自動運転AIは解くべき課題を電気自動車の走行から得て育ち続けます。

「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」は2つの三角形の両方に入っていますが、9組の結合は、3つのまとまりに3組ずつ、重ならずに分かれています。「車両の三角形」「充電の三角形」「自動運転AI(Sh)」の3つのグループを合わせると、この節の最初に見せた、「テスラのロボタクシーの計画」の構造式の全体像になります。

テスラ ロボタクシーの計画

この構造式でも、「自動運転AI(Sh)」と「直営ロボタクシー(Ch)」のあいだの結合(3本)は、線を省いています。

回路図で見ると、テスラの電気自動車の販売は2つのループを回している

ここからは「ビジネスモデル回路図」を使います。構造式で見えたのは、働きどうしがどれだけ依存し合っているかでした。電気自動車の販売と「ロボタクシーのフランチャイズ」が何を通じてつながり、その効果がどちらの客に及ぶのかは、量の増減を追わないと見えません。回路図は、量どうしの原因と結果を線でつなぐ図です。テスラの電気自動車の販売を回路図にすると、同じ販売台数から出てまた販売台数に戻ってくる流れが、2つあります。1つは車両価格を下げる流れ、もう1つは自動運転AIを育てる流れです。

回路図は、実線と破線で原因と結果をつなぐ

回路図の線は、システム思考で使う「因果ループ図」と同じ読み方をします。読み方の基本は、下の回路図のとおり。

ビジネスモデル回路図の読み方

上の回路図の左端の枠は「顧客体験」、右端の枠は「資金」です。回路図は、左端に客が受け取る体験を、右端に会社に入るお金を置き、そのあいだを名前の付いた要素(ノード)と線でつなぎます。矢印の向きは、原因から結果へ向かう向きです。

線は2種類あります。

  • 実線:出発点が増えるほど、行き先も増える(減れば減る)。上の回路図の「ノードB」→「ノードA」なら、ノードBが増えるほど、ノードAも増える
  • 破線:出発点が増えるほど、行き先は減る(減れば増える)。上の回路図の「ノードA」→「ノードB」なら、ノードAが増えるほど、ノードBが減る

線の端には、効き方の印が付くことがあります。

  • 白抜き三角(線の終点に付く):遅れ。効果は出るが、届くのが遅い。上の回路図では「ノードB」→「顧客体験」
  • 白丸(線の出発点に付く):閾値。出発点がある水準に届くまで、効果が出ない。上の回路図では「資金」→「ノードB」

線をたどって出発点に戻ってくる経路を「ループ」と呼び、回路図はループで読みます。上の回路図なら、「ノードA」→「ノードB」→「ノードA」が1つのループです。ノードAが増えるとノードBが減り、ノードBが減るとノードAも減るので、このループはノードAの行き過ぎを引き戻します。

テスラの電気自動車の販売を回路図にすると、下のようになります。

テスラの電気自動車の販売の回路図

上の回路図の左端の枠は「EV購入者の顧客体験」(EVは電気自動車のこと)、右端の枠は「資金」です。

左上の「ロイヤリティ」は、フランチャイズで加盟者が本部に払う対価のことではありません。客が持つ愛着のことです(英語の loyalty)。何に対する愛着かは、顧客体験に入ってくる線から読みます。この回路図で「EV購入者の顧客体験」に入ってくるのは、「自動運転AIの性能」と「車両価格」です。性能の良い電気自動車を妥当な価格で手に入れたと実感した人ほど、テスラの電気自動車への愛着が高まります。

テスラの電気自動車は、売れるほど安くなり、安くなるほど売れる

1つ目のループは、車両価格を下げる流れです。

売れるほど車が安くなり、安くなるほど売れる

上の回路図で強調されているループを、「販売台数」から順にたどります。まず「車両原価」までの流れです。

売れるほど、車両原価が下がる

上の回路図では、「生産効率」に2本の経路が入っています。

  • 「販売台数」→「生産台数」→「生産効率」:売れた分だけ作る。作る量が増えるほど、作った経験が蓄積し、部品もまとめて買えるようになって、生産効率が上がる
  • 「販売台数」→「資金」→「生産設備投資」→「生産効率」:売上が資金になり、資金が新しいラインに回って、作れる量そのものが増え、生産効率が上がる。いまあるラインで作れる量には上限があるので、量を増やし続けるにはこの経路が要る

そして「生産効率」→「車両原価」は破線で、生産効率が上がるほど車両原価は下がります。

上の回路図では、白抜き三角(遅れ)と白丸(閾値)が、次の線に付いています。

  • 「生産効率」の入口の白抜き三角:「生産台数」からと「生産設備投資」からの2本が、この1つの白抜き三角を共有しています。作った経験やまとめて買う量が効率と仕入れ値に表れるまでも、新しいラインが立ち上がるまでも、時間がかかる
  • 「資金」→「生産設備投資」の白丸:まとまった額が用意できるまで、新しいラインへの投資は始まらない
  • 「生産設備投資」→「生産効率」の白丸:工場のラインが完成するまで動かない

「車両原価」から先は、「EV購入者の顧客体験」を回って、「販売台数」まで戻ります。

安くなった車が、販売台数を増やす

上の回路図では、「車両原価」→「車両価格」の実線に白丸が付いています。原価が下がった分がある程度たまってから、値下げや安いモデルの投入に踏み切る、という意味です。テスラは2023年に電気自動車を全体に値下げし、平均の販売価格が下がったと年次報告書に書いています。 原価が下がった分を値下げに回すのはテスラが選んだことで、規模の経済そのものが値段を下げるわけではありません。

「車両価格」→「EV購入者の顧客体験」は破線で、車両価格が下がるほど顧客体験は良くなる。手に入れやすくなったという評判が「クチコミ」で広がり(白抜き三角=遅れ)、「新規購入者」が増え、「販売台数」が増える。ここで出発点に戻ります。顧客体験が良くなると、黒線で描いてある「ロイヤリティ」→「買い替え」の流れでも、販売台数が増えます。性能の良い電気自動車を妥当な価格で手に入れたと実感した人は、買い替えのときにまたテスラの電気自動車を選ぶ、という流れです。

このループには、破線が2本あります。黒線の「生産効率」→「車両原価」と、赤線の「車両価格」→「EV購入者の顧客体験」です。破線は増減の向きをひっくり返すので、2本通ると向きが元に戻り、ループは回るほど同じ方向へ加速します。こういうループを「自己強化型ループ」と呼びます。破線が偶数本(0本を含む)なら自己強化型です。

「生産台数」→「生産効率」の線に乗っている2つの効き方には、名前があります。作った経験が蓄積して効率が上がるのが経験曲線効果、作る量が増えるほど部品をまとめて買えるなどして1台あたりの費用が下がるのが規模の経済です。この回路図では、2つを1本の線にまとめています。分けて描くと線が増えて読みにくくなるためです。

テスラの電気自動車は、売れた車が走るほど自動運転AIが育つ

2つ目の流れは、「販売台数」から「走行データ」を通って、「EV購入者の顧客体験」へ向かいます。

売れた車が走るほど自動運転AIが育つ

上の回路図では、「販売台数」→「走行データ」→「自動運転AIの開発」→「自動運転AIの性能」→「EV購入者の顧客体験」と進みます。売れた車が走るほど走行データがたまり、それが自動運転AIの開発に使われて、性能が上がる(白抜き三角=遅れ)。性能が上がれば、電気自動車の購入者の体験が良くなる。

自動運転の性能が上がったという評判が広がり、そこから「クチコミ」→「新規購入者」→「販売台数」と、1つ前の回路図と同じルートで出発点に戻ります。破線は1本も無いので、これも自己強化型ループです。「自動運転AIの開発」には、黒線で描いてある「資金」からの線も入っています。売上を開発に回すことを表しています。

1つ前の回路図の、車両価格を下げるループと合わせると、同じ「販売台数」から2つのループが出ていることになります。同じ販売台数が、車両価格を下げ、自動運転AIの性能を上げている。

構造式で、テスラの自動運転AIと直営ロボタクシーの結合がWaymoより1本少なかったのは、直営ロボタクシーを外したときに、自動運転AIが解くべき課題を別のところから得られるかどうか、の違いでした。上の回路図のとおり、テスラでは売れた電気自動車が道を走っています。走行データも、走って出会う課題も、電気自動車の走行から得られる、と筆者は読んでいます。だからロボタクシーを外しても、自動運転AIは育ち続けます。

テスラのロボタクシーの回路図は、加盟者の顧客体験から描く

構造式で見た「テスラのロボタクシーの計画」を、回路図では事業の名前の「ロボタクシーのフランチャイズ」で呼びます。テスラの「ロボタクシーのフランチャイズ」では、車両が増えれば待ち時間が減って乗る人が増え、乗る人が増えれば車両を購入する加盟者が増える、と筆者は見立てています。回路図は、台数を増やすかどうかを決める加盟者の顧客体験を左端に置いて描きます。その回路図では、台数を増やすループと、増えすぎを止めるループが、同時に回っています。

テスラのロボタクシーの回路図の全体

テスラの「ロボタクシーのフランチャイズ」を回路図にすると、下のようになります。

テスラのロボタクシーのフランチャイズの回路図

上の回路図の左端は「加盟者の顧客体験」です。回路図は、1つの顧客体験から1枚を描きます。ロボタクシーの台数を増やすかどうかを決めるのは、車両を購入する加盟者なので、加盟者の体験を左端に置きました。乗客は、回路図の中の「乗客数」として出てきます。

右端の「資金」に入る線は、「システム利用料」からの1本だけです。「乗客数」が増えるほど、システム利用料が増えて資金に入る。「乗客数」は、直営の車と加盟者の車の乗客を合わせた数で、そのうち加盟者の車に払った運賃から、テスラの手元に残るのがシステム利用料の分です。

加盟者がお金を払う働きは、構造式では3つありました。この回路図での扱いは、次のとおりです。

  • 「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」へのシステム利用料:描いている
  • 「ロボタクシー製造販売(Ch)」への車両代:省いた。車両が売れるたびに入るお金だが、筆者は車両1台から出る利益は薄いと見ているため。車両を購入する流れ(「新規加盟者」「ロボタクシー追加購入」)は描いているが、そこから資金への線は引いていない。車両代の流れは、構造式で、加盟者が「ロボタクシー製造販売(Ch)」に払うお金として描いている
  • 「電気の供給(Ch)」への電気代:回路図を読みやすくするために省いた。条件は公開されていないが、電気代もシステム利用料と一緒に運賃から差し引く方式になると読んでいる

乗客が直営の車に払う運賃も、この回路図には描いていません。直営の売上も同じ資金に入り、「配車アプリ開発」などを通じて加盟者の体験に間接的に効きますが、この回路図は加盟者が払うお金の流れに絞って描いています。

テスラのロボタクシーは、台数が増えるほど乗客も加盟者も増える

「ロボタクシー走行台数」を通って「加盟者の顧客体験」に戻るループがあります。

台数が増えるほど乗客も加盟者も増える

上の回路図では、「加盟者の顧客体験」→「クチコミ」(白抜き三角=遅れ)→「新規加盟者」→「ロボタクシー走行台数」→「乗客数」→「稼働率」→「儲け易さ」→「加盟者の顧客体験」と1周します。利益を上げやすいという評判が加盟者のクチコミで広がり、新しい加盟者が増えて、走る台数が増える。台数が増えれば乗客が増え、1台あたりの稼働率が上がり、利益を上げやすくなって、加盟者の体験がまた良くなる。赤色のループに破線は無いので、自己強化型ループです。

「ロボタクシー走行台数」には、黒線で描いてある「ロイヤリティ」→「ロボタクシー追加購入」の流れも入っています。この回路図で「加盟者の顧客体験」に入ってくるのは「儲け易さ」です。利益を上げやすいので、加盟者は「ロボタクシーのフランチャイズ」の事業への愛着が高まり、もっと利益を上げられると考えて、ロボタクシーを追加購入する。そういう流れです。「乗客数」にも、「資金」を「配車アプリ開発」に回して乗客を増やす流れが入っています。「乗客数」から回路図の中ほどを大きく曲がって右上へ伸びる黒色の線は、全体の回路図で見た「乗客数」→「システム利用料」で、このループには入りません。

加盟者が増えるほど乗客にとっての価値が上がり、乗客が増えるほど加盟者にとっての価値が上がる。構造式で、接続元素(Nt)の成長要因として挙げたネットワーク効果(参加者が増えるほど、やり取りの質が上がること)にあたります。

ただし、この回路図には、乗客にとっての価値(車の捕まりやすさや待ち時間)を要素として置いていません。「ロボタクシー走行台数」→「乗客数」の1本に、台数が増えると車が捕まりやすくなり、乗る人が増える、という流れをまとめています。

テスラのロボタクシーは、台数が増えすぎると加盟が止まり、その損は加盟者が抱える

1つ前のループから「乗客数」を経由しないループが、もう1つあります。「ロボタクシー走行台数」から「稼働率」へ直接向かう破線を通るループです。

台数が増えすぎると、1台あたりの稼働率が下がる

上の回路図の破線は、走る台数が増えるほど、1台あたりの稼働率が下がる、という向きです。乗客の数が同じなら、台数が増えるほど1台が運ぶ乗客は減ります。この破線から「稼働率」→「儲け易さ」→「加盟者の顧客体験」→「クチコミ」→「新規加盟者」→「ロボタクシー走行台数」と戻ります。破線が1本なので、このループは回るたびに向きが入れ替わり、行き過ぎを引き戻します。こういうループを「バランス型ループ」と呼びます。破線が奇数本ならバランス型です。

「稼働率」に入る線は3本あります。

  • 黒色で描いてある「乗客数」からの実線
  • 赤色の「ロボタクシー走行台数」からの破線
  • 黒色で描いてある「自動運転AIの性能」からの実線

3本目は、走るロボタクシーが集めた「走行データ」で自動運転AIが育ち、1台の稼働率を上げる流れです(「自動運転AIの開発」には、「資金」からの線も入っています)。ここで見るのは、前の2本です。台数が増えれば乗客も増えるので稼働率は上がり、同時に乗客を分け合うので稼働率は下がる。この回路図は直営と加盟者の車を分けずに「ロボタクシー走行台数」にまとめているので、加盟者の車と直営の車が同じ乗客を分け合う関係も、この破線に含まれています。ただ、直営の車の台数がどこから増えるかは描いていません。直営の車を増やすかどうかは、テスラが自分の資金で車を持つかどうかの判断で、加盟者の体験から始まるループの外にあるためです。乗客が増える余地があるうちは実線の側が勝ち、余地が尽きると破線の側が勝ちます。

この「余地」、つまりその街でロボタクシーに乗りたい人の数の上限は、回路図には要素として置いていません。描くと回路図がさらに込み入るので省きました。文章で補って読んでいただければと思います。

加盟者向けの条件は公開されておらず、テスラが契約で台数に上限を設けるかどうかは分かりません。テスラが運賃の分け方や配車の優先順位、走れる地域を変えられる立場にあると指摘する報道もあります。

契約で上限を設けないなら、止まる前には一度行き過ぎる、と筆者は見ています。「加盟者の顧客体験」→「クチコミ」には白抜き三角(遅れ)があり、利益が上がりにくくなったことがクチコミに表れるまで時間がかかるからです。すでに買われた車はすぐには減らないので、行き過ぎた分は、加盟者が1台あたりの稼働率の低下として抱えることになります。

そして契約で定めなくても、台数の増え方を止めるのにテスラが市場の大きさを見積もる必要はないと考えます。加盟者が一人ひとり、自分の車が上げる利益を見て加盟するかを決め、その判断が積み重なった結果として台数が落ち着く。効いているのは、車両を購入するのが加盟者だということです。

Uberは、インセンティブを出したり止めたりして、走る運転手の数を増やすことも減らすこともできます。テスラの加盟者の車は、一度買われると、インセンティブのような打ち手を止めてもすぐには減りません。走る台数を抑えるなら、次のようなやり方になります。

  • 配車の優先順位を変える
  • 走れる地域を変える
  • 契約で台数に上限を設ける

台数を増やす方法の1つは、これから買う人への値引きです。サイバーキャブは価格の目標と原価の推計がほぼ重なっているので、値引きすれば車両1台では赤字になりえますが、車を売ったあとにシステム利用料と電気代が入り続けるので、その先の収入で取り返すことはできます。どの方法でも、テスラが決められるのは条件までで、それを見て何台買うかを決めるのは加盟者です。

2枚の回路図をつなぐと、ロボタクシーの加盟者が増えるほど電気自動車の車両原価が下がる

電気自動車の販売と「ロボタクシーのフランチャイズ」は、同じテスラの2つの事業で、生産台数と走行データを通じてつながり、資金も共有しています。ロボタクシーの加盟者が増えるほど生産台数が増え、電気自動車の車両原価が下がる方向に働く、と筆者は読んでいます。

テスラの2枚の回路図をつなぐと、資金と、自動運転AIまわりの3つの要素が1つになる

2枚の回路図をつなぐと、下のようになります。

テスラの電気自動車の販売とロボタクシーのフランチャイズをつないだ回路図

上の回路図の左端には枠が2つあります。上が「EV購入者の顧客体験」、下が「加盟者の顧客体験」です。回路図は1つの顧客体験から1枚を描くので、2枚をつなぐと、それぞれの顧客体験の枠がそのまま2つ並びます。右端の「資金」は1つで、2つの事業が共有しています。

2枚に共通する要素は、1つにまとめました。「走行データ」「自動運転AIの開発」「自動運転AIの性能」の3つです。

2枚に共通する3つの要素を、1つにまとめた

上の回路図の赤い3つの要素には、電気自動車の「販売台数」とロボタクシーの「ロボタクシー走行台数」の両方から、「走行データ」へ線が入っています。「自動運転AIの開発」には「資金」からも線が入り、「自動運転AIの性能」からは、「EV購入者の顧客体験」と「稼働率」へ線が出ています。

左端に近い「ロイヤリティ」と「クチコミ」には、どちらの客のものかが分かるように、「購入者の」「加盟者の」を付けています。「加盟者のロイヤリティ」も、加盟者が払う対価ではなく、利益の上げやすさから高まる「ロボタクシーのフランチャイズ」の事業への愛着です。

2枚をつないで初めて引ける線が、2本あります。「ロボタクシー追加購入」→「生産台数」と、「新規加盟者」→「生産台数」です。

ロボタクシーが買われるほど、生産台数が増える

上の回路図では、「ロボタクシー追加購入」と「新規加盟者」から、「生産台数」へ実線が1本ずつ入っています。どちらも、加盟者がサイバーキャブを買う流れです。すでにいる加盟者が買い足しても、新しい加盟者が買っても、その分だけ生産台数が増える。車両代を払うのは加盟者で、構造式では、加盟者が「ロボタクシー製造販売(Ch)」に払うお金にあたります。「ロボタクシー走行台数」からは、「生産台数」へ線を引いていません。生産を増やすのは買った台数で、走っている台数から線を引くと、すでに作った車をもう一度作ることになるからです。直営の車を作る分も、ロボタクシーの回路図と同じ理由で、「生産台数」への線を描いていません。

「生産台数」は、サイバーキャブと電気自動車の分を1つの要素にまとめています。分けて描くと回路図が込み入るためです。サイバーキャブはテキサス州にあるテスラの工場で作られていますが、 部品のまとまりを別々に組み、最後に1台にまとめる、専用の組み立て方をしています。 組み立てのラインは、電気自動車とは別です。

電気自動車の回路図で見たとおり、「生産台数」→「生産効率」には、経験曲線効果と規模の経済の2つが乗っています。サイバーキャブの生産台数が電気自動車の原価にどれくらい効くかは、量産が進むまで分かりません。サイバーキャブと電気自動車がどの部品を共通化しているかも、公開されていません。そのうえで筆者は、つないだ回路図でこの線が2つの事業をつないでいるのは、規模の経済のほうだと見ています。組み立てのラインが別なので、サイバーキャブを作った経験が、そのまま電気自動車の組み立てに表れるわけではありません。分け合えるのは、共通化できる部品と、その調達のほうです。2つの事業の生産台数を合わせるほど、共通の部品をまとめて買う量が増え、1台あたりの部品の費用が下がるはずです。

テスラの走行データの効果は、電気自動車の購入者と加盟者の両方に及ぶ

「走行データ」には、2つの事業から線が入っています。

電気自動車とロボタクシーの走行データが、自動運転AIを育てる

上の回路図では、「走行データ」に「販売台数」と「ロボタクシー走行台数」の2本が入っています。売れた電気自動車も、走っているロボタクシーも、走行データを出す。そこから「自動運転AIの開発」→「自動運転AIの性能」(白抜き三角=遅れ)と進み、「自動運転AIの性能」から2本に分かれます。

  • 「自動運転AIの性能」→「EV購入者の顧客体験」
  • 「自動運転AIの性能」→「稼働率」→「儲け易さ」→「加盟者の顧客体験」

走行データを出すのも、良くなった自動運転AIの恩恵を受けるのも、2つの事業の両方です。

テスラの加盟者の購入で増えた生産台数は、電気自動車の車両原価を下げる

今度は、「生産台数」に入る線と、そこから「車両原価」までの流れです。

2つの事業の生産が合わさって、車両原価が下がる

上の回路図では、「生産台数」に矢印が3本入っています。

  • 電気自動車の「販売台数」から
  • 加盟者の「ロボタクシー追加購入」から
  • 「新規加盟者」から

そこから先は、次の順に進みます。

  • 「生産台数」→「生産効率」:白抜き三角が付いた実線
  • 「生産効率」→「車両原価」:破線

ロボタクシーが売れて生産台数が増えるほど、生産効率が上がり、電気自動車の車両原価が下がる、と筆者は考えています。テスラは車を自社の工場で作っているので、 下がった原価の分は、そのままテスラの利幅になります。

この回路図には、サイバーキャブの原価や価格を表す要素を置いていません。

サイバーキャブは、価格の目標と量産したときの製造原価の推計が、ほぼ重なっています。 量産で下がる分は、すでにこの価格の目標に織り込まれている、と読めます。構造式で、「ロボタクシー製造販売(Ch)」から「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」への成長を結合すると判定したのは、量産を見込んだ価格だから加盟者が購入しやすいという効果でした。

加盟者の購入で増える台数は、この価格の目標の前提になっている量産そのものです。目標を超えてさらに原価が下がった分を、サイバーキャブの値下げに回すのか、1台の利益に回すのかは、テスラから示されていません。そのうえで筆者は、加盟者の購入で増える台数は、サイバーキャブにとっては約束した価格を実現するための台数で、その価格をさらに下げる分ではない、と読んでいます。

一方、電気自動車にとっては、加盟者の購入は、電気自動車そのものの販売とは別に加わる台数です。その分だけ電気自動車の車両原価が下がり、テスラの電気自動車の事業の利幅が増えるはず。

増えた利幅をどう使うかは、テスラ次第です。電気自動車の回路図の「車両原価」→「車両価格」の線のように値下げや安いモデルの投入に回せば、電気自動車の購入者に及ぶ。利幅として残せば、ほかの打ち手に使える。筆者は、規模の経済の良さは、下がった原価で打ち手の幅が広がるところにあると見ています。

この流れの入り口の1つが「新規加盟者」です。ロボタクシーの回路図で見た、台数が増えるほど乗客も加盟者も増えるループは、つないだ回路図の上では、下のようになります。

台数が増えるほど乗客も加盟者も増え、生産台数も増える

上の回路図の赤色で示したループは、「加盟者の顧客体験」→「加盟者のクチコミ」(白抜き三角=遅れ)→「新規加盟者」→「ロボタクシー走行台数」→「乗客数」→「稼働率」→「儲け易さ」→「加盟者の顧客体験」の1周です。そこから1本だけ、「新規加盟者」→「生産台数」が伸びています。ロボタクシーのループが回って加盟者が増えるほど、生産台数が増えます。その先は、この回路図では黒線で描いてある「生産効率」→「車両原価」の流れで、1つ前の回路図で見たとおり、電気自動車の車両原価が下がる。ロボタクシーのネットワーク効果が働くほど、電気自動車の規模の経済が効く、と筆者は読んでいます。

この記事で見た、2つの事業をつなぐ2つの流れを並べると、効果が及ぶ先が違います。

2つの事業をつなぐ流れ効果が及ぶ先
「走行データ」から「自動運転AIの性能」へ電気自動車の購入者と加盟者の両方
「生産台数」から「車両原価」へテスラの電気自動車の事業

2つの事業は、資金も共有しています。2つの事業をつないだ回路図では、システム利用料や電気自動車の売上から入った資金が、「生産設備投資」「自動運転AIの開発」「配車アプリ開発」に回ります。同じ会社の中でお金が行き来するのは当然なので、この記事では、客に何が及ぶかが見える、上の2つの流れを取り上げました。

まとめ:Uber・Waymo・テスラの違いと、電気自動車とロボタクシーのつながり

この記事で説明したかったのは、次の2つ。

  1. Uber・Waymo・テスラの3社で、ビジネスモデルがどう違うか
  2. テスラの電気自動車の販売と、「ロボタクシーのフランチャイズ」が、どうつながっているか

1つ目の、3社の違いから。

Uberの構造式
Waymoの構造式
テスラ ロボタクシーの計画

3社は同じように「アプリで車を呼ぶ」サービスですが、構造式にすると、価値元素の構成が違います。

  • Uber:「乗客と運転手をつなぐ(Nt)」の1つだけ。車は運転手が持ち込むので、式の外にある
  • Waymo:「自動運転AI(Sh)」と「直営ロボタクシー(Ch)」を4本で結ぶ。「ロボタクシー製造([Ch])」と「車両の充電清掃整備([Ch])」は角括弧で囲んで、会社の外に出している。どれも直営ロボタクシーの運行のためにある
  • 「テスラのロボタクシーの計画」:真ん中にUberと同じ接続元素を置き、そのまわりにWaymoと同じ「自動運転AI(Sh)」と「直営ロボタクシー(Ch)」を持つ。UberとWaymoを1つの式に重ねた構造式。Waymoでは外にあった車の製造は、会社の中で作って加盟者に売る「ロボタクシー製造販売(Ch)」になり、拠点のほかに、加盟者に電気を売る「電気の供給(Ch)」が加わる(「自動運転AI(Sh)」と「直営ロボタクシー(Ch)」のあいだの結合(3本)を省いています。)

UberとWaymoを重ねたといっても、同じにはなっていません。電気の供給が加わり、車の製造が会社の中に入ったほかに、構造式の上で目立つ違いが2つあります。

  • 加盟者が右下に付く:Uberの運転手はほかのアプリへ移れるが、サイバーキャブの加盟者は、車両・配車・電気の3つで、車を手放すまではテスラから離れられない、と筆者は読んでいる
  • 自動運転AIの結合が1本少ない:自動運転AIと、車を走らせる側の元素との結合は、Waymoでは「直営ロボタクシー(Ch)」とのあいだが4本。「テスラのロボタクシーの計画」では、構造式にある「乗客と加盟者をつなぐ(Nt)」とのあいだが3本で、省いた「直営ロボタクシー(Ch)」とのあいだも3本

2つ目は、電気自動車とロボタクシーのつながりです。

テスラの電気自動車の販売とロボタクシーのフランチャイズをつないだ回路図

テスラの電気自動車の販売と「ロボタクシーのフランチャイズ」は、走行データと生産台数でつながり、資金も共有しています。走行データは2つの事業の両方から集まり、良くなった自動運転AIの恩恵は、電気自動車の購入者と加盟者の両方が受ける。

生産台数は、ロボタクシーの加盟者が増えるほど増え、電気自動車の車両原価を下げる。ロボタクシーの加盟者が増えるほど、テスラの電気自動車の事業の利幅が増える、と筆者は読んでいます。加盟者が車両代を払ってサイバーキャブを購入することで生産台数が増え、下がった原価の使い道はテスラが選べ、台数を読み違えた損は、車を手放すまでテスラから離れられない加盟者が抱える。筆者には、フランチャイズという仕組みが、テスラにとって、他人のお金で生産台数を増やす手段であり、台数を読み違えるリスクを加盟者に移す手段でもある、と見えます。

構造式で「自動運転AI(Sh)」と「直営ロボタクシー(Ch)」の結合がWaymoより1本少なかったのは、解くべき課題の大半を電気自動車の走行からも得ている、と考えました。その読みでは、テスラの自動運転AIは、ロボタクシーを外しても、電気自動車の走行で育ち続ける。そして自動運転AIそのものにお金を払っているのも、自動運転のソフトウェアFSDの月額を払う電気自動車の購入者です。Waymoはロボタクシーのために自動運転AIを育て、テスラは電気自動車で育てた自動運転AIの上に、ロボタクシーを載せようとしている。筆者は、2社の違いをそう見ています。

構造式も回路図も、紙とペンがあれば描けます。気になっている会社があれば、その会社の客がお金を払う理由になっている働きを1つ、元素として置くところから描いてみてください。同じ業界に見える会社でも、元素を並べてみると、違う構造式が出てくるはずです。

参考・出典

よくある質問

ビジネスモデル構造式とは何ですか。

ビジネスモデル構造式は、ビジネスモデル研究家の古市大三が考案した記法です。会社が価値を生む働きを、接続元素(Nt)・変換元素(Ch)・解決元素(Sh)の3種類の価値元素と、元素どうしの結合で書き表します。元素の右側にはお金を払う人(支払者)を書き、結合の本数(1〜4本)で、2つの働きがどれだけ強く依存し合っているかを表します。

Uber(ウーバー)・Waymo(ウェイモ)・テスラのロボタクシーは、構造式にするとどう違いますか。

Uberは、乗客と運転手をつなぐ接続元素が1つだけで、車は運転手が持ち込むので式に出てきません。Waymoは、自動運転AIと直営ロボタクシーが4本の結合で結ばれ、車の製造と拠点の整備は外部の会社に任せています。「テスラのロボタクシーの計画」は、乗客と加盟者をつなぐ接続元素を真ん中に置き、自動運転AI・直営ロボタクシー・車の製造販売・電気の供給を持つ構造です。テスラの自動運転AIと直営ロボタクシーの結合は3本で、Waymoより1本少ない。筆者の読みでは、加盟者は車両・配車・電気の3つで、車を手放すまではテスラから離れられず、自動運転AIは電気自動車の走行からも解くべき課題を得るので、ロボタクシーが無くても育ち続けます。

テスラの電気自動車の販売と、サイバーキャブを使った「ロボタクシーのフランチャイズ」は、どうつながっていますか。

テスラの電気自動車の販売と「ロボタクシーのフランチャイズ」は、走行データと生産台数でつながり、資金も共有しています。売れた電気自動車とロボタクシーの両方から走行データが集まり、良くなった自動運転AIの恩恵は、電気自動車の購入者とロボタクシーの加盟者の両方が受けます。また、ロボタクシーの加盟者が車両を購入するほど生産台数が増え、電気自動車の車両原価を下げる方向に働く、と筆者は読んでいます。下がった原価を値下げに回すか、利幅として残すかは、テスラが選べます。

サイバーキャブの加盟者は、テスラに何のお金を払うのですか。

構造式で見ると、サイバーキャブの加盟者がテスラに払うお金は、次の3つの働きに対するものです。

  • サイバーキャブの車両(車両代)
  • 配車のネットワーク(システム利用料)
  • 拠点での電気の供給(電気代)

システム利用料と電気代を運賃から差し引く方式でテスラに払うことは、筆者の読みです。2026年9月の時点で、テスラが付けようとしている価格(3万ドル〈約450万円〉未満)は示されていますが、確定した車両の価格・運賃の分け方・電気代といった条件は、テスラから示されていません。