プラットフォーム型ビジネスモデル
プラットフォーム型ビジネスでは、生産者と消費者をお互いに引き合わせる場所、つまりプラットフォーム自体の価値を高めることによって利益を得ることを目的とします。
プラットフォーム型ビジネスの4つの役割
ボストン大学のアルスタイン教授、テュレーン大学のパーカー教授、プラットフォーム・シンキング・ラボのチョーダリーCEOによる論文「Pipelines, Platforms, and the New Rules of Strategy(2016) 」では、プラットフォーム型ビジネスを構成する要素として、
- 生産者(Producers):価値を提供する売り手
- 消費者(Consumers):価値を消費する買い手
- 提供者(Providers):生産者と消費者の接点
- 所有者(Owner):プラットフォームの運営元
の4つの役割を挙げています。
これだけではわかりにくい部分もあるので、以下、具体例を挙げます。
iPhone/iPad用ソフトウェアプラットフォームのAppStoreでは、
- 生産者:アプリ開発者
- 消費者:iPhone/iPadユーザー
- 提供者:iPhone/iPadなどの端末
- 所有者:Apple社
となります。
ショッピングモールであれば、
- 生産者:テナント店舗
- 消費者:来場者
- 提供者:ショッピングモール施設
- 所有者:施設のデベロッパー
となります。
オークションであれば、
- 生産者:出品者
- 消費者:入札参加者
- 提供者:オークション会場
- 所有者:オークション運営会社
となります。
転職エージェントであれば、
- 生産者:労働者
- 消費者:求人企業
- 提供者:キャリアアドバイザー
- 所有者:転職エージェント企業
となります。(労働者は労働力の生産者ですが、求人企業を労働機会の生産者と考えることも可能です。)
プラットフォームの所有者は、生産者と消費者の橋渡しとなる提供者を活用し、生産者と消費者が円滑に価値を交換することができるようにプラットフォーム全体をコントロールすることが役割です。
プラットフォーム型ビジネスの特徴
プラットフォーム型ビジネスで重要なのは、
- 外部の資源を活用
- ネットワーク効果の獲得
です。
プラットフォームは「生産者」という外部の資源を活用しなければ、プラットフォーム上での価値の交換が生まれません。さらに「提供者」についても必ずしも自社の経営資源とは限らないため、こちらもいかに外部の資源を活用するかがカギになります。
そしてネットワーク効果は、プラットフォームの事業拡大において非常に重要な概念です。
ネットワーク効果とは、
- 商品やサービスの価値や効用が、その利用者の数に依存する現象
のことですが、簡単に言えば、
- 利用者が多いほど、利用する価値が上がる
- 利用者が少ないほど、利用する価値が下がる
ということが起こります。
プラットフォームのように、生産者と消費者が分かれている場合には、互いの利用が互いにとっての価値を高め合います。
ちなみに、ネットワーク効果は、別名「需要側の規模の経済(demand-side economies of scale)」とも呼ばれます。すでにお気づきの方もいると思いますが、パイプライン型ビジネスで重要な「(供給側の)規模の経済」の逆の概念です。
パイプライン型では、企業側(供給側)の経営資源で規模の経済を生み出しますが、プラットフォーム型では、生産者や消費者という利用者側(需要側)で規模の経済を生み出すのです。
プラットフォーム型ビジネスの具体例
ここでは、単発・短期バイト(スキマバイト)の求人情報と求職者をマッチングさせるオンラインプラットフォームの「Timee(タイミー)」のビジネスモデルを例に見ていきましょう。
タイミーのビジネスを4つの役割に当てはめると、
- 生産者:短期バイトを望む求職者
- 消費者:短期的に人手が足りない事業者
- 提供者:アプリ
- 所有者:タイミー
となります。
単なる求職者や求人店舗というわけではなく、市場を単発・短期バイト(スキマバイト)に絞り込んでいるのが大きな特徴。
下の図は、タイミーのプラットフォームが生み出すネットワーク効果を表したものです。
上図の矢印の流れを解説すると、
- 広告掲載店舗数が増えると、仕事の選択肢が多くなって求職者の利用体験が改善する
- 求職者の利用体験が改善すると、短期バイトを求めて媒体閲覧者数が増える
ということが起きます。つまり4つの役割に当てはめると、消費者の増加が生産者の増加を引き起こすということです。
さらに、
- 広告掲載店舗数と媒体閲覧者数の両方が増えれば、バイトのマッチング件数が増える
ということで価値が生まれ、プラットフォーム利用者双方が満足を得られるという結果につながります。
似たようなビジネスモデルとしては、ハイクラス転職サイト「ビズリーチ(BizReach)」も同様です。
ビズリーチは、「求人企業」「ヘッドハンター」「転職希望者」の3者によるマルチサイドプラットフォームで、こちらも同様にネットワーク効果が働いています。
このように、プラットフォーム型ビジネスにはパイプライン型ビジネスには無い、ネットワーク効果を生み出すメカニズムが組み込まれているのです。
しかし、パイプライン型ビジネスでも、既存のビジネスにプラットフォーム型ビジネスを組み込むことが可能です。
次のページでは、パイプライン型ビジネスがプラットフォーム型に転換するための4つのシナリオをご紹介します。