ビジネスモデルとは?具体例で図解の変遷もわかりやすく解説

ビジネスモデルを図解する様々な取り組み

ビジネスモデルと聞いて「ビジネスの型」をイメージする人も多いのではないでしょうか?

過去のビジネスモデル研究においても、ビジネスモデルを構成する要素を分解し、パターン化やフレームワーク化することは多くの研究者が挑戦してきました。

しかし、残念ながら世界的にスタンダードと呼べるような方法は、いまだに現れていません。…とは言え、注目を浴びた手法もいくつか存在しています。

今回はその中から、特に日本国内で知られている、

  • Customer Value Chain Analysis(2006年)
  • ピクト図解(2010年)
  • ビジネスモデル図解(2017年)
  • ビジネスモデル俯瞰図

について解説します。

なお、これからご紹介するビジネスモデルの図式化手法では、

  • 利害関係者との協力で価値を生み出す活動を図だけでは表現できない

という共通の問題点を抱えています。

企業と利害関係者による活動の具体例としては、

  • サプライヤーと受発注システムを統合してコストを削減する活動
  • ヘビーユーザーと共同で商品の企画・開発を行う活動
  • 一部の顧客をアンバサダーに任命して共同で販売促進を行う活動

などなど。

例を挙げるとキリがないのですが、ゾット教授らが指摘するこのようなビジネスモデル特有の要素を図式化できるメジャーな手法は存在していません

石井教授らのCVCA:顧客価値連鎖分析(2006年)

CVCA(カスタマー・バリューチェーン・アナリシス、顧客価値連鎖分析)とは、スタンフォード大学で開発された、製品設計のためのツールです。(近年では、ビジネスモデルの表現にも使用されています。)

前身には、企業と顧客を結ぶ利害関係者を図示する「カスタマーチェーン分析」という手法があり、それが「カスタマーバリューチェーン分析」へと発展しました。

これを論文としてまとめたのが、石井教授らによる2006年の論文

  • Customer Value Chain Analysis(顧客価値連鎖分析)

です。

CVCAは、様々な利害関係者に対する価値提案(バリュー・プロポジション)を特定し、顧客ニーズに基づいた意思決定を行うために用いられます。CVCAが価値提案を表すわけではありませんが、価値提案が必要なポイントを特定することが可能になります。

下の図は、論文に登場する自動販売機メーカーの顧客価値連鎖を翻訳したものです。

Donaldson, Ishii & Sheppard(2006)の図2-dより引用、筆者翻訳

主体となるのは、左上の黒い枠で囲まれた「自動販売機メーカー」で、モノ・カネ・情報の動きが理解できます。

ただし、CVCAはあくまで価値提案が必要なポイントを洗い出すのが目的であるため、ビジネスモデルにおける価値創造に関する活動までは表現できません。

板橋氏のピクト図解(2010年)

板橋悟氏によるピクト図解®︎は、本質的にはCVCAとほぼ同じですが、書き方やアイコンなどがある程度ルール化されたものになります。(ピクト図解®はエクスアールコンサルティング株式会社の登録商標です。)

ピクト図解:クックパッド

ピクト図解®︎メソッド公式サイト「ピクト図解®︎メソッド設計理念 」ページより引用

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CVCAとの違いとしては、

  • 時間軸による活動の変化を表現できる

という点です。

先ほどの図を見ると、図の右側に「↓T」という表記があることがわかります。これは、ビジネスの時間の経過によって要素が変化することを表しています。

また、後述するオスターワルダー教授らが開発した「ビジネスモデル・キャンバス」も併用しているようです。(下図、左側のフレームワーク)

「ビジネスモデル・キャンバス」と「ピクト図解」を2つセットで使う

ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー「ビジネスモデルを「見える化」するピクト図解(2014年3月17日) 」より図1を引用

そのため、ピクト図解のみでは価値創造の活動を表現できませんが、ビジネスモデルキャンバスの9つの要素の1つである「KA:主要活動」と紐づけることで分析が可能になっています。

近藤氏のビジネスモデル図解(2017年)

近藤哲朗(チャーリー)氏によるビジネスモデル図解も、CVCAと同様の表現手法になります。板橋氏のピクト図解よりも、一層CVCAに近い表現方法と言えるでしょう。

ビジネスモデル図解ビズグラム:Spotify

図解総研ホームページ「ビジネスモデル図解 」ページより引用

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CVCAとの違いとしては、

  • 9つのマスに利害関係者を当てはめていく
  • 上段と中段に事業ドメイン(誰に、何を、どうやって)を記載する
  • 下段にサプライチェーンに関連する利害関係者を記載する

といったルールが定められていること。

なお、図中に吹き出しで注釈を入れることが可能で、利害関係者との活動についても記載できますが、必須ではないようです。

また既存のビジネスとの違いを表す「逆説の構造」という概念を取り入れ、ビジネスモデルそのものの革新性についても表現する試みがされています。

ビジネスモデル俯瞰図(商流俯瞰図)

ビジネスモデル俯瞰図とは、商流俯瞰図とも呼ばれ、サプライチェーンの流れを表現する手法です。

ビジネスモデル俯瞰図は、各都道府県に設置されている中小企業活性化協議会が窓口となっている、早期経営改善計画経営改善計画(405事業)の事業計画書に必ず添付される図です。

そのため、中小企業診断士、税理士、銀行員などにとっては、とても知名度の高い図式化手法です。

まず、早期経営改善計画(経営改善の難易度が低めの事業)策定支援の記載例からの引用が以下の図になります。

ビジネスモデル俯瞰図:早期経営改善計画策定支援

中小企業庁 認定支援機関向け「早期経営改善計画策定支援 」参考資料より引用

そして405事業とも呼ばれる経営改善計画(経営改善の難易度が高い事業)策定支援の記載例が以下のものになります。

ビジネスモデル俯瞰図:経営改善計画策定支援

中小企業庁 認定支援機関向け「経営改善計画策定支援 」参考資料より引用

ビジネスモデル俯瞰図の書き方のルールとしては、

  • サプライチェーンの上流から最終顧客までの流れを図示する
  • 売上と仕入れの金額を記載する

の2つのみ。他に決まったルールはありません。

端的に言えば、サプライチェーンに取引金額を書き込んだだけの図です。あとは、資料を作成する専門家のさじ加減で、マーケティング関連の追加情報を記載したりしなかったり。

このビジネスモデル俯瞰図がいつ頃登場したのかは不明ですが、サプライチェーンと取引額の単純な組み合わせなので、かなり昔から存在していたのではないでしょうか。

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