サプライチェーンとは、原材料が加工を経て顧客の手に渡るまでの、供給の一連の流れのことです。供給連鎖とも呼ばれ、文字通りサプライヤー(供給業者)がチェーン(連鎖、数珠つなぎ)になっている状態です。
そして似ている用語の「バリューチェーン」とは、商品やサービスが最終顧客(エンドユーザー)の元に届くまでに様々な価値が加わる様子を表したものです。
一言で違いを言い表すと、
- サプライチェーン:複数の企業のモノの流れ
- バリューチェーン:1つの企業の中の価値の加わり方
になります。
さらに、両方を1つの図に表すと、下図のようになります。
ここでは2つの用語を、対比や図解でわかりやすく説明します。
サプライチェーンとバリューチェーンの違い
サプライチェーンとバリューチェーンの違いを表にすると、
サプライチェーン | バリューチェーン |
供給の連鎖 | 価値の連鎖 |
モノの流れに注目 | 価値の加わり方に注目 |
複数の企業で構成 | 1つの企業で完結 |
となります。
サプライチェーンは、モノの供給が連鎖した状態を表しています。そのためモノがどのように流れて(供給されて)いるかに、注目した考え方です。そしてその連鎖は、最終的な顧客に届くまでの一連の流れのことなので、たくさんの企業が関わっています。
一方でバリューチェーンは、商品やサービスにどのように価値が加わっていくかを表しています。一つの企業の中で、手を加えていくことによって、どのように価値が増えるかを考えることができます。
ちなみに「価値の加わり方に注目」して「複数の企業が関係」している考え方として、「バリューシステム(Value system)」というものがあります。
簡単に言えば、
- モノではなく価値に注目したサプライチェーン
のようなものです。
このバリューシステムの考え方は、バリューチェーンと同じくポーター教授によるものです。
サプライチェーンとは?
サプライチェーン(Supply chain)とは「供給連鎖」とも呼ばれ、原材料の調達から顧客の手に渡るまでの供給の流れを表しています。
サプライチェーンを図で表すと、下図のようになります。
モノが次々と供給され、製品になり、最終顧客の手元に届くまでの流れを表しています。
- 2次原料供給者は1次原料供給者に原料を供給する
- 1次原料供給者は加工業者に原料を供給する
- 加工業者は店舗や卸売業者に製品を供給する
- 店舗や卸売業者は最終顧客に製品を供給する
このように供給が連鎖しているため、供給連鎖(サプライチェーン)と呼ばれます。
例えば「寿司」のサプライチェーンを考えてみます。
- 漁師は魚の卸売業者に魚を供給する
- 魚の卸売業者は仲卸業者に魚を供給する
- 仲卸業者は寿司職人に魚を供給する
- 寿司職人は顧客に寿司を供給する
つまり、
- 漁師 → 卸売業者 → 仲卸業者 → 寿司職人 → 顧客
の一連の流れが、寿司のサプライチェーンになります。
しかし寿司のサプライチェーンは、一本だけではありません。漁師だけでなく魚の養殖業者からも供給されるかもしれませんし、仲卸業者は寿司職人以外にも食品スーパーにも供給するはずです。
またお米や調味料も供給してもらう必要があります。そのため単純に「寿司のサプライチェーン」と言っても、1本の鎖ではなく、複数の糸が寄り合わさっていく状態の方が実際のイメージに近いかもしれません。
サプライチェーンの3つの区分
供給連鎖(サプライチェーン)の流れは「購買物流」「製造」「出荷物流」という、3つに区分することができます。
購買物流
サプライチェーンの中で、原材料の調達から製造工程に進む前までの部分を指します。
先ほどの寿司の例では「漁師 → 卸売業者 → 仲卸業者 → 寿司職人」が購買物流に該当します。
「インバウンド・ロジスティクス」や「インバウンド・サプライチェーン」とも呼ばれます。
製造
サプライチェーンの中で、原材料を製品に加工する工程を指します。
先ほどの寿司の例では、寿司職人が寿司を握る部分に該当します。
出荷物流
サプライチェーンの中で、加工された製品を最終顧客が手にするまでの流れを指します。
先ほどの寿司の例では「寿司職人 → 顧客」が出荷物流に該当します。
寿司職人がお客さんに寿司を食べてもらうためには、店舗を構えたり出前をしたりします。店頭での受け渡しも、出前も出荷物流になります。
「アウトバウンド・ロジスティクス」や「アウトバウンド・サプライチェーン」とも呼ばれます。
サプライチェーン・マネジメント
サプライチェーン・マネジメント(SCM:Supply chain management)とは「供給連鎖管理」とも呼ばれ、
- サプライチェーン全体を効率的に管理する手法
のことです。
サプライチェーン・マネジメントは、1社だけでなく複数の供給業者が協力して、物流システムを作り上げます。
サプライチェーン・マネジメントは、1982年にイギリスの物流コンサルタントのキース・オリバー氏によって提唱された考え方です。
その後1990年代に大きく発展し、現在に至ります。供給のタイミングと在庫を最適化するという考え方は、JIT(ジャスト・イン・タイム)の考え方にもつながります。
バリューチェーンとは?
バリューチェーン(価値連鎖)を図で表すと、下図のようになります。
バリューチェーンは、企業が行う様々な活動から、価値が生み出されていく様子を表しています。そのため「価値連鎖」と呼ばれています。
価値を生み出すために必要な総コスト(費用)とマージン(利益)を足したものが、価値の合計(総価値)となります。詳しくはこちらの記事もご覧ください。
サプライチェーンとバリューチェンの関係
冒頭でも紹介しましたが、サプライチェーンとバリューチェーンを、一つの図の中に落とし込むと下図のようになります。
サプライチェーンは全体のモノの流れを表していて、バリューチェーンは各企業の価値の生み出され方を表しています。