SmartHRのビジネスモデル図解:資金調達とユニコーン化までの変遷

156億円(シリーズD)の資金調達とユニコーン化

2021年6月8日、SmartHRは156億円の資金調達 を行いました。この結果、ついに推定評価額1731億円に達し、日本国内6社目のユニコーン企業 となりました。

「シリーズDラウンド」の資金調達はシリーズCと同じく、上場(IPO)を目指して事業の拡大を行うための資金調達になります。

しかし、なぜSmartHRは156億円もの多額の資金調達ができたのでしょうか?

その鍵は、ARR(Annual Recurring Revenue、年間定期収益)の大きさにあります。

ARRとは、その企業が年間で安定的に得られる売上のこと。SmartHRでは、月額利用料の年間合計や年額利用料に該当し、顧客が解約しない限りは定期的に得られる収入を指します。

SmartHRのようなSaaS(Software as a Service)ビジネスでは、このARRが非常に重要な指標となるため、投資家も投資判断の材料として数値を注視しています。

これまでSmartHRが、顧客体験を改善し続け、継続顧客数を増やし、月次継続率を高い水準で保とうとしていることは、ARRの向上につながるわけです。SmartHRのビジネスモデル図で言えば、内側と外側のループが重なる場所になります。

そしてこのSmartHRのARRは、2021年には45億円に達することが公表 されました。2020年の同時期は、ARR 22億円だったということで、2倍以上に伸びています。この成長速度は、海外のユニコーン企業に引けを取らないスピードです。

このことが国内外の投資家の投資意欲を高めたことは間違いありません。実際に、156億円の大半は海外投資家から のものであると報じられています。

SmartHRのARRが45億円に達する

SmartHRが調達した156億円の使い道

今回の資金調達の目的としては、

当社は、調達した資金を活用し、人事・労務分野の業務効率化に加え、企業による「働きたいと思う環境の整備」のための人事・労務情報のデータ活用を強く推進します。(中略)また、上記の実現のため、採用強化やマーケティング活動への継続した投資も決定しました。

プレスリリース で語られています。

  • 採用強化
  • マーケティング活動への継続した投資

については、これまでと同じですが、

  • 人事・労務情報のデータ活用

については、シリーズBラウンドの15億円の調達後に発表された「プラットフォーム化構想」にもつながるところでしょう。

これをビジネスモデル図解に書き加えてみると、以下のとおり。

SmartHRの人事労務データの蓄積

「継続顧客数」が増えるほど「人事労務データ」が蓄積されるわけですが、今度はこれを活用しようというわけです。

これまでの取り組みで、ビジネス基盤が固まった今、新たに調達した資金で「人事労務データ」を活用した新たなループを作り出すことになるでしょう。

社会に訴えかけるブランドムービーの公開

2021年8月18日に、「“働く”の100年史|100 YEARS of WORK in JAPAN」というタイトルの動画と特設サイト が公開されました。

https://www.youtube.com/watch?v=kNQMX–3E5Q

1920年代からの100年の働き方の変化をまとめた動画で、年配の人には懐かしく、若い層には新鮮に感じる内容に仕上がっています。

SmartHRはこの動画を通して「働く」ということを消費者に問いかけています。そして、以降もSmartHRが「働き方」にまつわる社会的課題に取り組むことを宣言しています。

この動画はこれまでのような、新規顧客を増やすための動画ではなく、「人事労務効率化市場」全体においてブランド力や存在感を高めるための施策となっています。

SmartHR ブランドムービー

おそらく今後もこういったプロモーションを行い、いわゆるPR(パブリック・リレーション、広報)についても資本を投下しながら、存在感を高めていくはずです。

SmartHR ユニコーン化までのビジネスモデル変遷まとめ:次はIPOか?

ということで、ここまでSmartHRというサービスが正式リリースされてから、ユニコーン化に至るまでの事業戦略とビジネスモデルの変遷をご紹介しました。

ここまでのビジネスモデル図解をまとめると、以下のとおり。

SmartHRの戦略ループ

やはり、次なる戦略の要は「人事労務データ(ループ右下)」の活用です。

これまでの内側や外側のループにつながる施策であれば、直接的に市場占有率の向上につながります。他方、これまでのループに接続しないのであれば、新たなビジネスモデルの確立と収益性の拡大が求められます。

いずれにせよ、道筋が見えて来れば、次のステップはIPO(Initial Public Offering、新規公開株式)となるでしょう。

今後の戦略の打ち手がどうなるのかも楽しみですね。

また新しい動きがあれば、この記事に追記していく予定です。最新の記事については、Twitter(@dyzoconsulting) でもお知らせするので、ご興味のある方はお気軽にフォローください!

ここまで長文をお読みいただき、ありがとうございました!

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