Amazonのビジネスモデル図解:特徴は物流投資とプラットフォーム化によるマケプレ開放

AmazonのUI(ユーザーインターフェース)改善施策

ここまでは物流などの目に見えにくい部分の話でしたが、ここからはAmazonの利用者が直接目にする部分、つまりUI(ユーザーインターフェース)における施策について考えてみましょう。

代表的なものとしては、

  • ワンクリック特許
  • ユーザーレビュー

の2つ。

Amazonのワンクリック特許はAppleさえも魅了した

AmazonのUI施策として有名なのが、1997年に出願され、1999年に特許が認められた「ワンクリック特許」です。(2017年にアメリカで特許が失効。)

これはその名の通り、ボタンを1回クリックするだけで注文が完了するという仕組み。Amazonの商品ページを開くと「カートに入れる」のすぐ下に「今すぐ買う」というボタンがあるはず(以前は「1-Click で今すぐ買う」という表示)。

以下のアフィリエイトリンクで比較してもらうとわかりますが、Amazonの商品ページにはボタンがありますが、楽天の商品ページには同様のボタンは存在していません(執筆時点)。

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ブラッド・ストーン
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通常のネットショップの購入までの流れは、

  1. カート(買い物カゴ)に入れる
  2. チェックアウト(購入)に進む
  3. 配送先を設定する
  4. 支払い方法を設定する
  5. 購入の最終確認をする
  6. 「注文する」ボタンを押す

といったプロセスがあります。

ネットショップを運営したことがある方はご存知だと思いますが、この複数のプロセスの途中で、購入をやめちゃう人たち(いわゆる「カゴ落ち」)が結構いるんです。その分、売り上げも落ちます。

しかしワンクリック特許を使えば、

  1. 今すぐ買う」ボタンを押す

だけで注文完了。

プロセスが皆無なので、購入を途中やめにする人はゼロになります。これは利用者にとっても手間が減り、購買体験も改善します。その結果、売上が大きく伸びるわけです。

その効果は公式に明かされていないものの、年間で5%ほどの売り上げ押し上げ効果 があるとも試算されています。2023年度のAmazonのオンライン小売売上高は2318億ドルなので、5%であれば約116億ドル、つまり約1兆8000億円(執筆時1ドル155円で計算)の押し上げ効果となります。

これに目をつけたのが、当時オンラインで自社ハード&ソフトウェアの販売を拡大していたAppleです。

2000年にAppleは、Amazonからワンクリック特許のライセンスを受け、自社のオンライン直販サイト「Apple Store」にて1-Clickで商品を購入できるようにしました。

アップルは本日、同社のオンラインストア「Apple Store(アップルストア)」での利用を目的として、Amazon.com(アマゾンドットコム)より「1-Click(ワンクリック)」の特許および商標のライセンスを受けたことを発表しました。これは、Amazon.comとの電子商取引特許に関するクロスライセンス契約の一環です。また、本日よりApple Storeでは、1-Clickショッピングが可能となり、今後はApple Storeで販売される全ての製品を1-Clickを使ってお求めいただけます。

Appleプレスリリース 2000年9月19日より引用 

つまり、ワンクリック特許の使用料としてAmazonに支払う金額が、1-Clickボタンを追加することでAppleが得られる利益を上回る見込みがあったということ。おそらくですが、特許使用料に十分見合った利益は得られているはずです。

このようなワンクリック特許の、

  • 売上高の押し上げ効果
  • 顧客体験の改善効果

を図解に落とし込むと以下のとおり。

Amazonのビジネスモデル図解:UX/UIの改善による顧客体験の向上

上の図のように、生み出した利益を人材採用育成活動に投資することで、

  • UX/UI改善活動が促進され…
    • 商品販売数が伸びる
    • 顧客体験が改善する

といった効果を得ることができます。

ご紹介した「ワンクリック特許」はその中でも代表的なものの1つですが、当然ながらワンクリック特許以外にも数えきれないほどの大小さまざまな改善施策が存在しています。

Amazonの利用者が増えるほど有益になるユーザーレビュー

Amazonを利用する人が必ずといっていいほど参照するのが、ユーザーレビューです。

商品の良いところや悪いとことが書かれていて、購入する際に非常に参考になりますよね。もちろん、いまだにヤラセレビューや、嘘のレビューが多数存在するなど完璧な仕組みではありませんが、あるとないでは大違いなのも事実。筆者は近所のお店で何か買うときにも、Amazonのレビューを事前に見るほど活用してます。

今でこそレビューの投稿機能は一般的ですが、こちらもAmazonが登場するまではあまり見かけない機能でした。

ではなぜ、すべてのネットショップでユーザーレビューが採用されていないかというと、取引先の商品の悪評を書かれたら困るからです。下手をすると仕入れができなくなってしまう。このようなことを避けるために、気軽に導入できないシステムなんです。

しかし、Amazonは前のページで紹介した仕入れの交渉力も相まって、ユーザーレビューの存在が顧客体験にプラスの効果をもたらします。

これを図解したのがこちら。

Amazonのビジネスモデル図解:レビューの存在が顧客体験を改善

上の図では、

  • 商品販売数が増えるほどレビュー件数も増える
  • レビュー件数が増えれば顧客体験が改善する

ということを表しています。

これは「品揃え」を増やすことで起こる、「粗悪品」の増加に対するカウンターであり、取扱商品の新陳代謝を促進する機能とも言えるでしょう。

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