だいぞう
今回は、バイトをしたことがある人にはお馴染みの、バイト求人広告媒体のビジネスモデルについて解説したいと思います。
なお、ここでのビジネスモデルの図表は、システム思考におけるループ図という手法をベースに、独自にアレンジした形式で表現しています。
以下の記事でループ図について詳しく解説していますが、このまま読み進めてもまったく問題ありません。
それでは順を追って、読み解いていきましょう。
広告掲載型のバイト求人情報媒体のビジネスモデル
もっとも歴史が古く、主流であり続けているのが「広告掲載型」のバイト求人媒体です。
始まりは新聞の求人欄に掲載される広告でした。その後、有料の求人情報誌やフリーペーパー、求人サイトなど労働者のニーズをとらえながら変化を続けています。
広告掲載型はその名の通り、媒体への広告掲載料として、求人広告を掲載したい利用者から料金を徴収するタイプのビジネスです。
毎月定額であることから、利用者の店舗側にとっては固定費として支出を予測しやすいことが好まれる理由の一つです。
また、媒体の運営側にとってもストック型のビジネスになるため、キャッシュフローが安定しやすいというメリットがあります。
2タイプの利用者:店舗と求職者
このビジネスモデルでは、
- 店舗(または法人)
- 求職者
の2つの異なる利用者が存在しています。
両者の存在は、
- 店舗の求人情報が増えるほど、媒体を閲覧する求職者が増える
- 媒体を閲覧する求職者が増えるほど、店舗の求人情報が増える
という作用を生み出します。
図で表すと以下のとおり。
これは「間接的ネットワーク効果」と呼ばれ、求人情報媒体は労働の需要と供給である「両面市場(two-sided marketplace)」を管理する「ツーサイド・プラットフォーム(two-sided platform)」と考えられます。
この媒体が機能を果たすためには、店舗と求職者の両方を集めなければいけませんが、どちらが先かといえば「店舗」です。
媒体としては、求人情報の掲載店舗数が、求職者にとっての品揃えに相当します。だからまずは仕入れ。つまり求人情報を集めなければなりません。
それを表したのが以下の図。
「労働需要」が存在している市場に対して「営業活動」を行い、「広告掲載店舗数」を増やします。
しかしそこで足枷になるのが「広告掲載料」の存在。採用できるかどうかもわからない段階で費用が発生するので、「広告掲載料」は「営業活動」に対して抑制の力(赤い点線)が働きます。
この抑制の力に抗うには、店舗側は「人が採用できるのか?」という心配を解消する必要があり、媒体の閲覧者数や広告掲載店舗の採用実績などの情報を提示することが求められます。
しかし媒体を初めて立ち上げる場合などには実績がないため、「初回掲載無料」「◯ヶ月間掲載料半額」といった施策で、まずは実績づくりをすることになるでしょう。
次に必要なのは、求職者を集めること。
「広告掲載店舗数」が増えれば「広告掲載料」が計上され、「利益・資金」としてビジネスを回すお金が集まります。そのお金を「広告宣伝費」に回すことで、求職者に対する媒体の認知度を高めます。
ここでいう広告宣伝費については、単純な広告だけでなく、媒体の制作・維持・管理も含みます。つまり、紙媒体であれば印刷費用や流通費用、デジタル媒体であればシステムのメンテナンス費用なども必要です。
また「広告掲載店舗数」が多いほど、求職者にとって閲覧する動機につながります。
求人情報の選択肢が多いほど、求職者のニーズを満たすことができるため、前述の「営業活動」による「広告掲載店舗数」の拡大は「媒体閲覧者数」の増加にもつながるのです。
求職者のマッチングと媒体としての提供価値
求人情報を載せた媒体と求職者がそろえば、求職者の応募という形でマッチングが成立します。
マッチングすることで、求職者を求める雇用主と、雇用を求める求職者のニーズが一致し「雇用主の利用体験」と「求職者の利用体験」が改善します。
この結果、店舗側も求職者も良い体験ができれば評判が向上し、「広告掲載店舗数」および「媒体閲覧者数」の増加につながります。
利用者の増加による弊害
しかし利用者が増えると良いことばかりではありません。
「あの媒体に広告を出せば人が集まる」「あの媒体なら仕事が探しやすい」という噂が広まれば、
- 労働環境の悪い店舗
- 勤務態度の悪い求職者
もマッチングを期待して登録が増加します。
この結果、「ハズレ店舗率」や「ハズレ労働者率」が高まります。
これらの上昇は「雇用主の利用体験」や「求職者の利用体験」にマイナスの影響を与えることになります。
広告掲載型のバイト求人情報媒体のまとめ
それでは全体を見てみましょう。
このビジネスモデルの要点は、成果が出る前に顧客を説得し、広告掲載料を徴収する必要があることです。
また「ハズレ店舗率」や「ハズレ労働者率」への対応はなかなか難しいところです。