一般的なバイト求人情報媒体の3つの問題点
一般的なバイト求人情報媒体には、
- 逆選択の発生
- 面接・契約の煩雑さ
- 給与支払いの遅さ
の3つの問題点が存在しています。
タイミーが狙いを定めた「スキマバイト市場」では、この3つの問題点が大きな壁として、労働力の流動性を高められない要因となっていました。
逆選択(アドバース・セレクション)の発生
逆選択(アドバース・セレクション)とは、情報の非対称性によって市場取引の効率性が低下する現象のこと。
例えば、
- 不健康な生活をしている人ほど医療保険に入りたがる
- 不健康な保険加入者が増えると保険会社は損をするが、保険会社は加入者が不健康な生活をしているかどうかは知り得ない
- お金にだらしない人ほどお金を借りたがる
- 返済できない人にお金を貸してしまうと銀行は損をするが、銀行は借り手がお金にだらしないかどうか見抜きにくい
など、相手の情報が不十分であるため、本来望まないような取引が発生してしまうことを逆選択と呼びます。
この逆選択は、バイト求人情報媒体でも、
- 無断欠勤などの問題行動を起こす求職者もバイト先を探そうとする
- バイトがすぐに辞めるブラックな職場環境の店舗も求人情報を出す
という形で起こります。
下図は、逆選択をループ図で表現したものです。
つまり、媒体の利用者が増えることで、
- 広告掲載店舗数が増えるほどハズレ店舗率が上昇する
- 媒体閲覧者数が増えるほどハズレ労働者率が上昇する
といったことも起こります。
ハズレ店舗(ブラック環境な店舗)も、バイトの欠員を満たすためには、利用者の多い求人媒体に広告を出した方が採用がしやすくなります。また、ハズレ労働者(問題行動を起こす求職者)も、次のバイト先を探すためには、求人情報の多い媒体を見るのが一番です。
その結果、逆選択が起こってしまうのです。
面接・契約の煩雑さ
求人媒体でマッチングすることは喜ばしいことですが、一方で、面接・契約という作業も双方に発生します。
雇用したい店舗側にとっては、
- 忙しいからバイトを雇いたいのに、面接の時間を作らなければいけない
- 採用することになれば、各種雇用契約の手続きをしなければならない
といった面倒が生じます。
他方、バイト先を探す求職者も、
- すぐに働きたいのに面接を避けることはできない
- 不採用ならまたバイト先を探さなければならない
といった面倒があります。
これらの事柄は、当たり前すぎて通常ではほとんど意識されませんが、双方の利用体験においてマイナスの影響(上図、点線矢印)を与えていることは否めません。
給与支払いの遅さ
給与の支払いは、日払い、週払いなども存在しますが、雇用主(店舗側)にとっては、1ヶ月単位などにまとめて行ったほうが振込手数料も少ないですし、作業もまとめてできるので効率的です。
そのため、月末締めで翌月に給与が支払われることも多くあります。
一方、労働者としてはすぐにお金が振り込まれることに越したことはありません。ですが月ごとに支払われるのは当たり前なので、不便に思いつつも受け入れているのがほとんどかと思います。
これらのことを表したのが以下のループ図です。
月末締めの習慣によって、バイト代の入金速度は低下し、
- 雇用主(お店)にとっては支払いが先延ばしにでき、作業も効率的なのでプラスの効果
- 求職者(バイト)にとっては報酬がすぐに手に入らないのでマイナスの効果
が現れます。
結果、雇用主の利用体験は良くなりますが、求職者の利用体験は悪くなります。
スキマバイト市場への影響
ここまでご紹介した3つの問題点は、タイミーが狙う「スキマバイト市場」では、
- ハズレ店舗/労働者が多いと、安心して媒体を利用できない
- 数時間単位の単発バイトの度に面接と契約を結ぶのは現実的ではない
- すぐにお金が欲しいのに入金が遅い
という致命的な問題になってしまいます。
スキマバイト(単発・短期バイト)では、店舗側は即戦力を求め、都度の面接などの手間はかけられません。他方、求職者はスムーズにバイト先が決まり、可能な限り早く報酬を受け取れることが理想的です。
つまり、これら3つの問題点を解決しなければスキマバイト市場は拡大しないということ。
そこで、見事な解決策を見つけたのがタイミーでした。
次のページからは、ここまでの説明を踏まえて、タイミーのビジネスモデルを解説します。