スキマバイト市場に対するタイミーの3つの解決策
タイミーは3つの問題点を、
- 相互評価データによる逆選択の抑制
- バイト面接を無くす雇用支援システム
- 給与の振り込みを非同期化する即日入金
という形で解決しました。
それぞれの施策について順を追って見てみましょう。
相互評価データによる逆選択の抑制
スキマバイトでは、店舗側も労働者も単発での勝負になります。だからこそお互いにハズレに出会いたくありません。
この問題をタイミーがどう解決したかというと、相互評価データの利用でした。
仕組みとしては、ネットオークションやフリマアプリのユーザーの相互評価と同じです。
互いの評価が分かれば、怪しい相手と契約を結ぶことを避けられます。また、評価されることがわかっていれば、互いに非常識な行動は取りにくくなります。
上の図では、マッチングの件数が増えれば増えるほど、相互評価データが蓄積され、ハズレ店舗率/労働者率は低下します。その結果、雇用主や求職者の利用体験の向上つながります。
逆選択(アドバース・セレクション)は、情報の非対称性(一方が得られる情報が限られている状態)が原因です。そのため、情報の非対称性を解消できる仕組みを取り入れれば解決可能です。
では、なぜ旧来の求人情報媒体が評価システムを取り入れることができないかというと、
- 利用者を評価することに媒体側のメリットが無かった
からです。
求人広告は、元々は営業担当がお店の店長に頭を下げて、広告掲載料をもらっていたわけですから、お店を悪く書くわけにはいきません。またマッチングの手数料を受け取る場合でも、手数料さえ受け取ってしまえば、マッチング後の出来事は当事者同士の問題なので我関せずです。
つまり、旧来のビジネスモデル上では、悪質な店舗の情報を求職者に提供したり、問題行動をとる求職者を拒否するメリットがないということ。
一方、タイミーが狙うスキマバイト市場では、
- 短期での繰り返し利用
が事業の拡大に欠かせないため、悪質な店舗や問題のある求職者が淘汰される仕組みの方が、安定的な利益につながるのです。
バイト面接を無くす雇用支援システム
スキマバイトでは、面接無しで適切にマッチングし、雇用契約の書面を交わすことなくすぐに働けるのが理想です。
そこでタイミーは、
- 相互評価データによる面接の代替
- QRコードによる雇用契約締結・出退勤管理
を取り入れました。
面接の代替については、前述の通り。ハズレ店舗/労働者に当たる可能性が低く、個別の評価が確認できれば面接をしなくても雇用契約のリスクは下げられます。
また、タイミーは出勤時のQRコードの読み込みで雇用契約の締結が可能なシステムを有しています。
このQRコードによる雇用契約の仕組みは、タイミーが特許を取得 しており、模倣困難な競争優位性 の1つとなっています。
上のループ図では、利益・資金を使って雇用契約締結システムや出退勤管理システムに投資を行うことと同時に、相互評価データを活用することで、雇用支援の質を高めることにつながっています。
雇用支援としては、
- 面接無し
- 雇用契約締結の電子化
- 出退勤管理
を実現し、これらが雇用主の利用体験を大きく引き上げることに貢献しています。
給与の振り込みを非同期化する即日入金
スキマバイトの労働者側には、バイトが終わったらできるだけ早くお金が欲しい、というニーズがあります。
このニーズについては、創業者である小川氏がBRIDGEのインタビュー記事 で以下のように答えています。
小川:働きましたよ(笑。ただ自分のニーズとしては、すぐに働きたくてすぐ着金して欲しいのに、マッチするのに比較的時間がかかる印象がありました。給与の振込自体も比較的時間が必要でした。ここを自分たちならもっとクールにできるんじゃないかと。
ということで、競合サービスを実際に利用して得た実体験がベースとなっています。
一方で、雇用する店舗側は可能な限り、例えば月に1回など、まとめて作業を行うことが効率的です。結果、お金を払うのは店舗側なので、労働者は雇用主の意向に沿うしかありません。
このような給与のタイムラグを解消するのが、タイミーの即日入金システムです。
タイミーは、雇用主と労働者を仲介して給与の支払いタイミングをコントロールすることで、入金のタイムラグを解消しています。
つまり、まず最初に手元の利益・資金から即日で労働者に支払い、その1〜2ヶ月後に雇用主から給与とシステム手数料を受け取って回収するという仕組みです。
実際の利用体験については、タイミー公式の以下のページでも説明されているのでご覧ください。
労働者は即日入金されますが、雇用主である店舗側は、タイミーから届く月に1度の請求額を支払うだけ。店舗側には手間がかからないどころか、前述の出退勤管理システムによる給与計算など、利便性は向上しています。
しかしタイミーの強みはこれだけにとどまりません。
次のページからは、蓄積された相互評価データを利用した競争優位性について解説します。