経営者の視点で考える減価償却のメリット・デメリット
冒頭でもお伝えした通り会計上では、
- 減価償却はしてもしなくても問題ない
ということになっています。
しかし、実際はほとんどの会社が減価償却費を計上しています。
ではなぜ、わざわざこんな面倒な処理をしているのでしょうか?
減価償却をしない場合
減価償却をしない場合のメリットは、
などがあります。
しかしデメリットとしては、
- 利益が増えた分だけ支払う税金が増える
ことになります。
つまり、減価償却をしない場合は「見かけの利益が増えて、税金をたくさん取られる」ということ。メリットも大してメリットになっていませんね。
償却せずに帳簿の見栄えを良くしたところで、銀行員さんたちは見抜きますし、融資などでも有利になるわけではありません。
減価償却をする場合
一方で、減価償却をする場合のメリットは、
- 経費計上することで利益が減って支払う税金が減る
- 設備の買い替え資金を確保しやすくなる
などで、デメリットについては、
- 会計処理が面倒になる
- 償却しない場合より見かけの利益が減る
などになります。
経営の視点で考える減価償却費
経営の視点として重要なのは、減価償却をする場合のメリットとして挙げた「設備の買い替え資金を確保しやすくなる」という部分です。
減価償却費を計上しても、実際に現金が出ていったわけではありません。
つまり、もし減価償却費を計上した状態で赤字になっていなければ、固定資産から目減りした金額と同じ金額が、現金として手元に残っているということ。
先ほどの3年で自動車を償却する例で考えれば、3年間毎年ちゃんと利益が残っていれば、3年後に300万円の現金が手元にあるはずです。
そうすれば、また新たな自動車を300万円で買い換えることが可能になります。
これは工場の設備なども同様です。
もし、減価償却費を計上せずに製造業をやっていると、設備が古くなっても買い換えるお金が手元に無い、という状況になってしまうのです。
減価償却費を計上する意味
ということで、減価償却の処理を行う意味は、
- 支払う税金が少なくて済む
- 将来、固定資産を買い換えるための資金を貯めやすい
といったところが大きいと思います。
もし自分の会社で減価償却費が通常通り計上されていない場合は、その理由を考えてみるのも良いかもしれません。
減価償却費まとめ
以下は、ここまで説明した内容を簡単にまとめたものです。
減った現金の額と費用が一致しないのはなぜ?
会計ルールとして固定資産には「耐用年数」が設定されていて、その年数に従って少しずつ費用に計上しなければならないからです。そのため現金一括で支払ったとしても、その年度には金額の一部しか費用として計算されません。
その結果、支払った現金とその年度の費用として認められる金額に差が生まれます。
まだ使えるのに資産価値がなくなるのはなぜ?
会計ルールとして「耐用年数」が過ぎれば帳簿上の価値が1円になる、と決められているためです。しかし実際は、帳簿上の価値がなくなっても普通に固定資産を活用することができますし、その固定資産を帳簿の価額よりも高く売却できることは多くあります。
これはあくまで帳簿の価額は会計ルールに従った数字というだけであって、実際の固定資産そのものが持っている価値とは違うのです。
たった1円で記録されてる固定資産にはどんな意味があるの?
減価償却で帳簿上の資産の価値がなくなると、その資産を手放すまで「1円」のまま残ります。
これは「備忘価額(びぼうかがく)」と呼ばれ、存在を忘れないようにするための処理になります。
もし価値を「0円」にしてしまうと、帳簿上から消えてしまい管理ができなくなってしまいます。そういったことを避けるために、償却が終わっても使い続けている資産は「1円」で記録しておきます。
売上原価に含まれる減価償却費と、販管費の減価償却費は何が違うの?
違いは、その資産が売上に「直接」関わるのか「間接」的に関わるのかによります。
例えば製品の生産に直接的に使用される機械や装置、工場などの「減価償却費」は原価計算を経て「売上原価」として処理されます。
しかし生産に間接的に関わる事務所の建物や営業用の車両などは、「販売費及び一般管理費(販管費)」の中にある「減価償却費」として処理されます。
関連書籍
オールカラー “ギモン”から逆引き! 決算書の読み方 オールカラーでわかりやすい!