パイプライン型ビジネスモデル
パイプライン型ビジネスモデルは、経営資源を上手くコントロールして付加価値をつけ、顧客への提供価値を高めることを追求します。
このような、
- 「自社」が「顧客」に高い価値を提供することで「他社」を出し抜く
という関係性を重視するスタイルは、マーケティングの3C分析などとも相性が良いでしょう。
パイプライン型ビジネスの流れ
パイプライン型ビジネスの流れをイメージする上で、最もわかりやすいのが製造業です。
モノを仕入れ、加工して、売る、という流れはサプライチェーンそのもの。
サプライチェーンを構成する企業の一つ一つがパイプラインであり、バリューチェーンによって付加価値を可視化することができます。
これらを組み合わせると、全体像は以下のようになります。
このように、個々のパイプラインが大きなパイプラインを形成していることがわかります。
パイプライン型ビジネスの特徴
パイプライン型ビジネスは、業界構造の影響を強く受けるため、
- 業界構造が企業業績に影響を与える
というSCP理論の概念も見過ごすことはできません。
なぜなら、業界構造が顧客に提供する価値や自社が得られる利益をある程度決定づけるからです。
さらに、ここから発展したファイブフォース分析においても、業界内の競争圧力(利益を押し下げる圧力)が自社にどのように影響を与えるのか考えることができます。
また、規模の経済性という考えも事業拡大には不可欠です。
規模の経済とは、
- 生産の規模が大きくなればなるほど製品1つあたりの平均コストが下がる状況
のこと。
規模の経済性が働くことでコスト優位になり、
- 同じ価格で売っても利益が多くなる
- 原材料が高騰しても利益が残りやすい
といった効果によって、さらなる事業投資への原資を獲得することができます。
規模の経済性といえば、製造業のイメージが強いですよね。ヒト・モノ・カネ・情報という経営資源の内、「ヒト・モノ」を効果的に使って量産するのが規模の経済です。
しかし「情報」の規模の経済も存在するのでは?と筆者は考えています。それは「フランチャイズ(FC)」です。
フランチャイズでは、特定のノウハウ一式で「加盟店」という商品を量産します。加盟店が増えれば増えるほど、1店舗あたりのノウハウ開発やブランド構築にかかるコストは低下します。製造業で例えると、FC本部(フランチャイザー)が工場で、FCのノウハウが製品で、お客さん(加盟店、フランチャイジー)は加盟料とロイヤリティとして対価を支払うビジネスモデルです。
パイプライン型ビジネスの具体例
ここではパイプライン型のビジネスモデルの具体例として、
- DELL
- SmartHR
をご紹介します。
DELLは、1990年代に世界のPC市場を制したパソコンの製造小売り事業者です。
様々な活動は、
- パソコンの性能
- パソコンの価格
- パソコンの納期
を改善するために行われ、最終的に顧客体験を向上させていることがわかります。
製造業なので、部品調達や生産改善活動によって規模の経済を効果的に生み出そうとしていることも想像できます。
続いて、SmartHRは、クラウド人事労務ソフトを提供するIT企業。
上記は同社の2015年当時のビジネスモデルですが、顧客の人事労務関連作業の効率を高めることによって、価値を提供していることがわかります。
このビジネスモデルでも、1つのソフトウェアをたくさんの企業が使うほど規模の経済が働きます。