ファイブフォース分析とは?やり方と分析例:無料テンプレートあり

ファイブフォース分析とは、

  • 新規参入業者
  • 代替品
  • 顧客(買い手)
  • 供給業者(売り手)
  • 既存企業

の、5つの競争要因から生まれる競争圧力を分析することで、その業界がどれくらい魅力的なのか(儲けやすいか)を知ることができます。

ファイブフォース分析5つの競争要因

上記のような図で表され、「ファイブフォースモデル」「5つの競争要因分析」「五力分析」「5フォース分析」「5つの力分析」などと呼び方は様々です。

ここではファイブフォースの「5つの競争要因」について、わかりやすく解説します。またファイブフォース分析用テンプレート(パワーポイント形式、登録不要)も無料でダウンロード可能です。

ファイブフォース分析と競争要因

1979年にマイケル・ポーター教授によって発表されたフレームワーク、ファイブフォース分析。

発案者のポーター教授は、2002年の学術誌でのインタビュー記事の中で「ハーバード・ビジネススクールでSWOT分析を教える時に苦労した」ことが、ファイブフォース分析を考え出した理由の一つだと語っています。


参考
An Interview with Michael PorterThe Academy of Management Executive Vol. 16, No. 2, Theme: Achieving Competitive Advantage (May, 2002), pp. 43-52

このファイブフォース分析ですが、産業や業界には様々な力が働いています。それは自分の会社が儲かりにくくなるような力です。

その圧力を「競争圧力」と呼びます。

下記の図の赤い矢印が、5つの競争要因とされる新規参入業者・代替品・顧客(買い手)・供給業者(売り手)・既存企業から生まれる競争圧力です。

ファイブフォース分析5つの競争要因

これらの競争圧力(赤い矢印)は、

  • 新規参入の脅威
  • 代替品の脅威
  • 顧客(買い手)の交渉力
  • 供給業者(売り手)の交渉力
  • 既存企業のポジション争い

です。それではひとつずつ詳しく見ていきましょう。

新規参入の脅威

新規参入の脅威は、海外から安い輸入製品の増加や、異業種からの参入など、自社や競合他社以外の新しい事業者が市場に参入してくることなどです。

新規参入業者に顧客を奪われてしまうと、その分儲けが減ってしまいます。また顧客を奪われなくても、市場での供給量が増えることで価格低下が起こります。

代替品の脅威

代替品の脅威は、似たような役割を果たす商品やサービスの価格が下がったり、消費者の手に入りやすくなったりすることなどです。

消費者が代わりのものを買うようになってしまえば、自分たちの商品やサービスの売り上げが減っていきます。

顧客(買い手)の交渉力

消費者の交渉力は、相手が限定されるほど強くなります。極端な話、自社の製品を仕入れてくれるお客さんが1社しかいない場合は、価格は相手の言いなりになるしかありません。

また競合他社の製品に乗り換え易い場合も、消費者の交渉力は高くなります。お客さんの立場が強ければ、自社の利益はどんどん削られて、利益が減ってしまいます。

供給業者(売り手)の交渉力

供給業社の交渉力も、相手が限定されるほど強くなります。特別な部品を作っている会社があって、自社はそこからしか仕入れができない場合は言い値で買うしかありません。

そうなるとコストに圧迫されて、利益が減ってしまいます。逆に様々な会社から仕入れができる場合は、自社の交渉力が高くなります。

既存企業のポジション争い

競合企業同士の敵対関係とも表現されます。既存企業のポジション争いは、同じ業界で商売をする業者が多ければ多いほど強くなります。

競合他社を出し抜くことは難しく、広告宣伝にもお金がかかり、値下げ競争に拍車がかかります。そのためお互いの競争のために、利益がどんどん削られてしまうのです。

ファイブフォース分析の「儲け」と「競争圧力」

ここでの「儲け」とは「利益」のことです。利益は価格(売値)とコスト(原価)で決まります。

  • 利益 = 価格 + コスト

利益が減ってしまう状況、つまり儲からない状況とは、

  • 価格が下がる
  • コストが上がる

ということが起きる場合になります。

言い換えると「競争圧力」とは、

  • 商品やサービスの価格が下がってしまう要因
  • 商品やサービスのコストが上がってしまう要因

となります。これらを分析するのがファイブフォース分析です。

それぞれの競争圧力の例は、下記のとおりです。

  • 新規参入の脅威
    • 供給量が需要を上回って価格が下がる
    • 参入させにくくするために投資を行ってコストが上がる
  • 代替品の脅威
    • 代替品と値下げ競争になって価格が下がる
    • 代替品への顧客流出を防ぐための販売促進でコストが上がる
  • 顧客(買い手)の交渉力
    • 値下げ要求に応じることになり価格が下がる
    • 顧客の品質要求が高くなりコストが上がる
  • 供給業者(売り手)の交渉力
    • 品質の低い原材料しか供給されず価格が下がる
    • 原材料の値上げに従うことになりコストが上がる
  • 既存企業のポジション争い
    • 値下げ競争で価格が下がる
    • 広告宣伝費が膨らんでコストが上がる

これらの競争圧力を分析することで、その産業や業界がどれくらい儲けやすいのか、または儲けにくいのかを知ることができます。

ちなみにSWOT分析では、競争圧力はどれも「脅威」に分類される内容ですね。逆にその競争圧力が存在しなければ「機会」と考えることもできます。

分析した結果から

  • 儲けやすい業界に参入する
  • 儲けにくい業界から撤退する
  • 競争圧力を弱める方法を考える

…など、様々な事業戦略を考えることができます。具体的な戦略については、「ポーターの3つの基本戦略」のいずれかを取ることを提案しています。3つの基本戦略は競争圧力を弱めることが目的です。

ファイブフォース分析の目的

ファイブフォース分析の目的は、分析対象となる業界が魅力的かどうか(儲かるかどうか)を判断することです。

以下がファイブフォース分析の特徴になります。

出来ること
  • 業界の特定の瞬間をとらえて分析する
  • 5者の競争圧力をバラバラに考える
  • 全ての企業が合理的に判断することを前提にする
出来ないこと
  • 時間による業界環境の変化をとらえて分析する
  • 5者の関係性を考慮して競争圧力を考える
  • 不合理な判断をする競合の存在を想定する

ファイブフォース分析は、その分析した時点の様子しかとらえることができません。分析をして戦略を考えて、さてこれから実行…という時には状況が変わっているかもしれません。

また5者による圧力はバラバラに表現されているので、基本的にそれぞれを個別に考えることになります。複数の圧力が組み合わさった場合の影響は、分析しにくいと言えます。

もうひとつ重要なのは、このフレームワークは経済学がベースにあるため「みんな合理的な判断をする」のが前提にあるということです。例えば「仕入れが難しいから儲かりにくい。だから新規参入は今後も少ないだろう。」という分析結果が出たとします。しかし実際には、それでも参入して業界にイノベーションを起こし、圧倒的シェアを奪う企業もいます。

ファイブフォース分析のやり方

ここで使うファイブフォース分析テンプレートは、こちらからダウンロードできます。登録不要でご利用いただけます(メールアドレスなど不要)。

ファイブフォース分析用テンプレート(無料:パワーポイント形式)

ステップ1
分析対象の産業や業界の範囲をハッキリさせる

まずは分析の対象になる産業や業界を明確にしましょう。ひとえに「〇〇業界」と言っても、分析をするメンバー全員の認識が同じとは限りません。また一人で分析を進める場合にも、いろいろと調べていくうちに分析対象がブレてしまうことがあります。そうならないように、最初に分析する対象をハッキリと文字にして書いておきましょう。

ファイブフォース分析の分析対象

ステップ2
競争圧力を洗い出す

ステップ1の対象範囲を意識しながら、5者それぞれが生み出す競争圧力を洗い出してみましょう。ここでは、

  • 価格を下げる競争圧力
  • コストを上げる競争圧力

のどちらであるのかを意識してください。

ホワイトボードや模造紙に付箋を貼る時には、「価格を下げる競争圧力」と「コストを上げる競争圧力」で色を変えておくと分析がしやすくなります。

ファイブフォース分析の競争圧力

ステップ3
影響力が大きい情報を整理する

5つの競争圧力の洗い出しができたら、自社にとって影響力が強いものを残して整理しましょう。アイデアをグループ化したり、不要な情報を取り除いたりしてください。

ファイブフォース分析の競争要因の整理

また、なぜそのようなことが起こっているのかを考えることも重要です。何かの大きな変化が原因で、競争圧力が生まれているのかもしれません。例えば、貿易摩擦が原因で原料の輸入が難しくなり、供給業者の交渉力が高まっている場合などです。そんな時には、PEST分析も活用してみましょう。

 

ステップ4
儲けやすいか儲けにくいか判断する

ファイブフォース分析を行う目的は、その産業や業界が儲かりやすいのか儲かりにくいのかを見極めるためのものです。そのため最終的には自社にとって、儲けやすいのか儲けにくいのか判断することが重要です。

  • 結論「〇〇業界は自社にとって儲けやすい!(or 儲けにくい)。理由は〜〜」

ファイブフォース分析の問題点とコツ

ファイブフォース分析にも、下記のような問題点が存在します。

  • 5つの競争要因の連携や関係性が見えにくい
  • 産業や業界の範囲設定で分析結果が大きく変わってしまう
  • 離れた別業界からのイノベーションの影響を把握しにくい
  • 時間の経過による変化を考慮しにくい

まずフレームワークで5つの競争要因に分解しているため、5者の競争圧力はバラバラに考えなければなりません。しかし現実は5者がお互いに影響しあって、生まれる競争圧力もあります。例えば原料の供給業者が、別業界からの新規参入を促すことも起きます。そういった動きには、ファイブフォース分析のフレームワークで対応しにくいので、分析結果で補足をしておきましょう。

分析対象をどこまでの範囲とするかは、非常に重要で分析結果を左右します。複数人で分析をする時は、特に気をつけましょう。まれに別業界の会社が突然参入してきて、自分たちの業界をひっくり返すようなイノベーションも起こりますが、この分析ではとらえきれません。

そのためPEST分析も併せて行い、より広い視野でも考えておきましょう。また特定の瞬間を切り取る分析方法なので、時間の経過の変化を分析するのには適していません。中長期的な分析に活かすなら、過去・現在・将来などの複数のファイブフォース分析を行う必要もあります。

ということで以上のコツをまとめると、

  • 5者の関係性が高い場合は分析結果に補足する
  • 分析対象の範囲を明確にして分析結果と併せて他人に伝える
  • PEST分析から業界の外の変化もつかむ
  • 過去、現在、将来予測の3つのファイブフォース分析をする

となります。

ファイブフォース分析の無料テンプレート

ファイブフォース分析テンプレートは、こちらからダウンロードください。登録不要でご利用いただけます(メールアドレスなど不要)。

ファイブフォース分析用テンプレート(無料:パワーポイント形式)

  • ファイブフォース:5つの競争要因図
  • ファイブフォース分析用テンプレート

が収録されています。

また以下のマイケル・ポーター教授の提唱する他の理論も併せてご覧ください。

おすすめの書籍

ポーター教授本人の言葉で簡潔に書かれている本はこちら。第2章の「競争の戦略 5つの要因が競争を支配する」という記事で、1979年のオリジナルのものがベースになっています。

戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS)

戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS)

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部
Amazonの情報を掲載しています

もっと詳しく!という方にはこちらの本。がっつり詳しく書かれています。表紙にファイブフォースの図が描かれている通り、ファイブフォース分析についてこの本に勝るものはありません。

[新版]競争戦略論I

[新版]競争戦略論I

マイケル E. ポーター
2,750円(06/06 12:02時点)
Amazonの情報を掲載しています
競争の戦略

競争の戦略

M.E. ポーター
6,194円(06/06 10:30時点)
Amazonの情報を掲載しています