Amazonのマーケットプレイス解放による品揃えの強化
Amazonマーケットプレイスは、
- 誰でもAmazonに出品・販売できるECプラットフォーム
のことで、
- 手数料を支払うことで、販売だけでなく在庫の保管や商品の発送までAmazonがすべて行ってくれる
という便利なサービスです。
出品者にとっては、Amazonが長い時間と莫大な投資によって構築した仕組みを、安価に利用させてもらえるので非常に助かります。
しかし、なぜAmazonは自社の仕組みを他者に解放してしまったんでしょうか?
それは、品揃えを充実させて顧客体験を改善するためです。
記事の冒頭でも紹介した2001年のベゾス氏のメモにおいても、「SELLERS(セラー、出品者)」がビジネスモデルに組み込まれており、創業間もない当時から重要視されていたことがわかります。
この「SELLERS(セラー、出品者)」という要素を、これまでのビジネスモデル図解に追加すると以下のとおり。
上図のとおり、
- サイト訪問者数が増えるほど、出品者数は増える
- 出品者数が増えれば品揃えが充実する
- 出品者数が増えれば出品者同士の競争によって商品価格が下がる
- 品揃えが増え、商品価格が下がれば顧客体験が良くなる
という流れが生まれます。
Amazonのプラットフォーム型ビジネスであるマケプレ
この流れは、Amazonがパイプライン型ビジネスである小売業に、プラットフォーム型ビジネスの機能を加えたということ。
それぞれ、
- パイプライン型:資源を調達し付加価値を加えて消費者に販売するビジネス
- プラットフォーム型:生産者と消費者が出会う場の価値を高めるビジネス
という違いがあります。
プラットフォーム型ビジネスは、
- 生産者(Producers):価値を提供する売り手
- 消費者(Consumers):価値を消費する買い手
- 提供者(Providers):生産者と消費者の接点
- 所有者(Owner):プラットフォームの運営元
の4つの役割によって成立します。
Amazonマーケットプレイスに当てはめると、
- 生産者:出品者
- 消費者:Amazonの訪問者
- 提供者:Amazonのサイト(ネットショップ)
- 所有者:Amazon
ということになります。
このプラットフォーム型ビジネスでは急速な事業成長に「ネットワーク効果(外部性)」欠かせません。
ネットワーク効果とは、
- 商品やサービスの価値や効用が、その利用者の数に依存する現象
のことで、
- 利用者が多いほど、利用する価値が上がる
- 利用者が少ないほど、利用する価値が下がる
という現象のこと。
さらにプラットフォーム型ビジネスは「間接的」なネットワーク効果に分類され、以下のような図で表されます。
Amazonマーケットプレイスでは、
- Amazonのサイト訪問者数が増えるほど、出品者が売り上げを見込みやすくなる
- 出品者が売り上げを見込みやすくなるほど、多くの出品者が集まる
- 多くの出品者が集まるほど、品揃えが充実する
- 品揃えが充実するほどAmazonのサイト訪問者数が増える
という「間接的ネットワーク効果」が働きます。
すでにAmazon自体の魅力でサイト訪問者数が増えているので、出品者数も加速度的に増加することになります。
出品者の価格競争に耐える低コスト構造のAmazon
しかしここで問題も起こります。出品者が増えるほど、互いに同じ商品を出品する出品者も増えます。その結果、価格競争が生まれるのです。
ここで「出品者同士の価格競争に巻き込まれると、Amazonの儲けが減るのでは?」という疑問が浮かびます。
そこで活きるのが前述した「低コスト構造」。Amazonは規模の経済(スケールメリット)によって、商品1つあたりの仕入れ値や配送費用を低く抑えています。
そのため、仕入れた商品が出品者の価格競争に巻き込まれても、ちゃんと利益が残る場合が多いのです。他方、出品者は自らの儲けを削りながら、販売することになります。
出品者からの手数料で低コスト構造を強化するAmazon
さらに、出品者はマーケットプレイスを利用するために手数料を支払います。
実はこのことが前半で説明した「低コスト構造」をさらに強化することにつながるのです。
上記のように、
- 出品者数が増えるほど、マケプレ手数料が増える
- マケプレ手数料が増えれば、利益・資金が増加する
というサイクルが生まれるのですが、
- 利益・資金は設備投資や物流効率改善活動の原資になる
ということを忘れてはいけません。
つまりAmazonマーケットプレイスでは、品揃えを充実させるだけでなく、
- 出品者に物流コストを肩代わりさせている
ということにもなります。
そのためAmazonの「低コスト構造」がより一層強化されるのです。
このような、
- 規模の経済性がネットワーク効果を促進させる
- ネットワーク効果が生んだ利益で規模の経済性が強化される
という関係性は、ビジネスモデルとしての1つの完成系とも言えるでしょう。