【読書ガイド】<新装版>アンゾフ戦略経営論〔新訳〕− イゴール・アンゾフ 著

経営学者イゴール・アンゾフ教授の著書「<新装版>アンゾフ戦略経営論〔新訳〕」を解説します。

特に「戦略は組織に従う」と「組織は戦略に従う」の違いについて、詳しくお伝えします。

書籍の概要

<新装版>アンゾフ戦略経営論〔新訳〕 」は、経営学者のイゴール・アンゾフ教授が1971年に出版した「Strategic Management」を日本語に翻訳したものです。タイトルのとおり、アンゾフ教授が戦略経営についてまとめた本になります。
アンゾフって誰?成長マトリックスと「戦略は組織に従う」で有名な戦略経営の父とは戦略経営 – 英語版 Wikipedia 翻訳記事

「アンゾフ・マトリックス」で有名なアンゾフ教授ですが、この本ではアンゾフ・マトリックスについて説明されていないので注意してください。(アンゾフ・マトリックスについては「戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS) 」の論文で説明されています。)

アンゾフ・マトリックスとは?3つの多角化戦略と具体例

この「アンゾフ戦略経営論」では、

  • 乱気流の渦巻く環境における組織の行動パターンは何か。
  • 組織の行動の差異を決定するのは何か。
  • 成功および失敗に貢献する要因は何か。
  • 特定の行動様式を決定するのは何か。
  • 組織がある行動様式からほかの行動様式に移る移行プロセスは何か。

に答える形で理論が展開されます(上記一覧は第1章 序論 p3 より引用)。

そして「第6章 戦略的な能力」では、有名な「戦略は組織に従う(組織機構が先行し戦略がそれに追随する)」の一文が登場するのが特徴です。

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<新装版>アンゾフ戦略経営論〔新訳〕

H.イゴール・アンゾフ
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発売日: 2015/09/25
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本のタイトル

まず中身を読む前にツッコミたくなるのが本のタイトルです。「新装版」であり「新訳」というややこしいタイトルになっています。

これは2007年に発売された「アンゾフ 戦略経営論 新訳」という本があるためです。

アンゾフ 戦略経営論 新訳

アンゾフ 戦略経営論 新訳

H.イゴール アンゾフ
28,292円(05/22 09:33時点)
発売日: 2007/07/01
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じゃあ「新訳」ではないバージョンもあるのか、と思ってAmazonで検索してみたらありました。

戦略経営論

戦略経営論

H.イゴール・アンゾフ, 中村元一
発売日: 1980/01/01
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ということで、本書で3回目の発売となるため「新訳」であり「新装版」なのです。

2007年の「新訳」と2015年の「新装版」の違いは、

  • 訳者註
  • 定義集
  • 仮説集
  • 戦略経営に対するイゴール・アンゾフの永続的な貢献

など約50ページが最終章の後に追加されていることです。

「訳者註」は、原書「Strategic Management」を日本語に翻訳する際に、言葉をどのように訳し分けたかの説明になっています。

「定義集」や「仮説集」は、この本に登場する難解な言葉を補足する内容になっています。

「戦略経営に対するイゴール・アンゾフの永続的な貢献」については、Strategic Change誌の編集者であり、イゴール・アンゾフ氏の友人でもあるデビット・ハッセイ教授が、アンゾフ氏について様々な角度から説明する内容となっています。

この本の内容は全体的に難解なので、これらの追加ページを読むことで理解の手助けになると思います。

戦略は組織に従う と 組織は戦略に従う の違い

この本の中で一番有名な箇所が、この「戦略は組織に従う」という命題ではないでしょうか。チャンドラー教授の「組織は戦略に従う」という命題と一緒に使われることがほとんどです。

しかし、

  • 戦略は組織に従う = 組織形態が戦略の選択肢を狭める

のような間違ったニュアンスで理解されていることも多いようです。

では「戦略は組織に従う」と「組織は戦略に従う」の違いと本当の意味は何なんでしょうか?

チャンドラー教授の「組織は戦略に従う」

まずこの「組織は戦略に従う」というチャンドラー教授の命題は、チャンドラー教授の著書の邦題「組織は戦略に従う 」に由来しています。

1962年に出版された原書のタイトルは「Strategy and Structure(戦略と構造)」で、経営戦略の転換と組織構造の変化について言及しています。

アンゾフ教授のこの本でも、チャンドラー教授の書籍の内容が引用されています。

その内容をわかりやすい言葉で言い換えると、

  1. ビジネスを取り巻く環境の変化が起こる
  2. 変化に対応するために戦略を変更する
  3. 組織が戦略を実行するための能力を身につける

という出来事が時間差で起こっていると言います。

アンゾフ教授の「組織は戦略に従う」

一方でアンゾフ教授は、チャンドラー教授が研究した頃(〜1962年)と今(〜1971年)、一部で状況が変わってきていることを指摘しました。

経営の理論や技術革新が進んだため、戦略を適用させるよりも前に、新しい仕組みやシステムを導入して組織の能力を高めるようになったのです。

つまり、

  1. ビジネスを取り巻く環境の変化が起こる
  2. 新しい仕組みを導入して組織が新しい能力を手に入れる
  3. 新しい組織の能力で実行できる戦略が生まれる

という順番に変わってしまったといいます。

第6章から引用すると、

「組織機構が先行し戦略がそれに追随する」ようになったのである。

という書き方で表現されています。

その一方で、新しい戦略が生まれずに失敗するパターンも存在しています。

それは新しい組織能力を経営層が活用できずに、仕組みが形骸化したり意味のないものになったりするパターンです。

これは今でも新しい技術が登場した時によく見られる光景です。インターネットが登場した時もそうですし、スマートフォンが登場した時もそうでした。あるいは成果主義が流行った時とか、業務のIT化が叫ばれた時もそうです。

社員を勉強会に参加させたり、システムを導入して一時的な組織能力は高まります。しかし経営陣がその能力を戦略に活かせないために、

  • 最新技術を使って昔ながらの非効率な作業をやり続けている
  • 今までやっていた作業に加えて無駄な新しい作業が増える

などのことが起こります。

2つの命題は対立しない

イメージ的にこの2つの命題が対立しているように思えるかもしれませんが、実際の内容は全然そんなことありません。「なんか昔と状況が変わっちゃったよね〜」くらいのマイルドな感じです。

アンゾフ教授は、チャンドラー教授の命題に加えて、逆パターンの状況も現れてきているということを指摘しています。引き続き「組織は戦略に従う」業界や企業がある一方で、「戦略は組織に従う」業界や企業も出てきている、というニュアンスです。

なので「どっちが正しいか」ではなく、「どっちも正しい」という話なのです。

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<新装版>アンゾフ戦略経営論〔新訳〕

H.イゴール・アンゾフ
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発売日: 2015/09/25
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書籍の目次
  1. 序論
  2. 総合的な枠組み
  3. 環境の歴史的な展望
  4. 予算編成行動のモデル
  5. 環境の乱気流のモデル
  6. 戦略的な能力
  7. 権力
  8. 志望目標および組織文化
  9. 戦略的なリーダーシップ
  10. 環境的な選択のモデル
  11. 移行行動
  12. 移行行動のモデル
  13. 基本的な公理


タイトル<新装版>アンゾフ戦略経営論〔新訳〕
著者
出版社中央経済社
ISBN-13978-4502168413
発売日

(Amazon 登録情報より Reviewed by  4 out of 5