因果関係とは、
- ある出来事が別の出来事を直接的に引き起こす関係
のことです。読み方は「いんがかんけい」で、「因果性(いんがせい)」とも呼ばれます。
また相関関係とは、
- ある出来事と別の出来事が同じタイミングで起こる
ことで、読み方は「そうかんかんけい」です。
これらの違いとしては、
因果関係 | 相関関係 |
先に原因が起こる | 起こる順番は問わない |
原因が結果に直接影響する | 互いに影響が無い可能性あり |
出来事は必ず相関関係がある | 因果関係があるとは限らない |
などが挙げられます。
因果関係と相関関係は似ているので混同されやすいですが、相関関係があっても因果関係があるとは限りません。
ここでは因果関係を中心に、相関関係についてわかりやすく解説します。
因果関係と相関関係の違い
まず「因果関係」と「相関関係」を簡単に説明すると、
- 因果関係:ある出来事が直接的に別の出来事を引き起こす関係
- 相関関係:別々の出来事が同じようなタイミングで起こる関係
のことです。
因果関係は、その名の通り複数の出来事が「原因」と「結果」の関係にあります。一方で相関関係のある出来事は、因果関係であることもありますが、そうで無い場合もあります。
ということで「因果関係」と「相関関係」の違いをまとめてみると、
因果関係 | 相関関係 |
先に原因が起こる | 起こる順番は問わない |
原因が結果に直接影響する | 互いに影響が無い可能性あり |
出来事は必ず相関関係がある | 因果関係があるとは限らない |
ということが特徴になります。
ここからはそれぞれをもう少し詳しく説明します。
因果関係
因果関係とは、「ある出来事が直接的に別の出来事を引き起こす関係」のことです。
英語では、因果関係のことを「Causation(コーゼーション)」や「Causal Relationship(コーザル・リレーションシップ)」と呼び、因果性のことを「Causality(コーザリティ)」と呼びます。
図で表してみると、下図のようになります。
特徴としては、
- 時間順序:出来事の起こる順番があること
- 直接性:お互いに直接関係していること
です。
ビジネスでよくある因果関係の例として、
- 雨が降ったらお店の来客数が減る
というものがあります。
これは、
- 原因:雨が降る
- 結果:来店客が減る
という2つの出来事が、
- 時間順序:来店客が減る前に雨が降る
- 直接性:客は雨で外出が面倒になって店に来ない
という特徴を満たしているため「因果関係」と呼べます。
このように因果関係のある出来事は、互いに相関関係も持っています。
経営戦略の分野では、VRIO(ブリオ)分析という「強み」や「弱み」を判別するための分析フレームワークで、競合他社が真似しにく経営資源の性質を「模倣困難性」と呼びます。
その「模倣困難性」の5つの要因の1つに、
- 因果関係不明性
というものがあります。
この「因果関係不明性」とは、企業の持つ競争優位性(結果)と経営資源(原因)の関係がはっきりと見えないような状態のことです。
相関関係
相関関係とは、「別々の出来事が同じようなタイミングで起こる関係」のことです。
英語では、相関関係のことを「Correlation(コーリレーション)」と呼びます。
先ほどご紹介した、
- 雨が降ったらお店の来客数が減る
という因果関係も、「雨が降る」と「来客数が減る」という2つの出来事が同じようなタイミングで起こるので「相関関係」であるとも言えます。
相関関係は、下図のように表すことができます。
この図を上から順番に説明すると、
- ある出来事が増えているときに、別の出来事も増えている
- ある出来事が増えているときに、別の出来事は減っている
- ある出来事が減っているときに、別の出来事も減っている
という状態です。
先ほどの、
- 雨が降ったらお店の来客数が減る
という因果関係は、
- ある出来事が増えているときに、別の出来事は減っている
というタイプの相関関係になります。
しかしこれらの出来事は、必ずしも「因果関係」があるとは限りません。
相関関係の5つのパターン
相関関係には、因果関係のないものも含めて、
- 直接原因:一方がもう一方の出来事の直接的な原因になる(=因果関係)
- 間接原因:複数の出来事に間接的に因果関係がある
- 相互作用:お互いに原因にも結果にもなる(=因果関係)
- 疑似相関:別の出来事が複数の出来事に影響を与える
- 偶然の相関:まったく関係ない出来事に相関関係が見つかる
の、5つのパターンが存在しています。
直接原因
直接原因とは、
- 一方がもう一方の出来事の直接的な原因になる
ような相関関係です。
このパターンの相関関係は「因果関係」です。
先ほどから例に挙げている、
- 雨が降ったらお店の来客数が減る
という因果関係は「時間の順序」がわかりやすく、どちらが原因なのか誰でも判断できます。
しかしデータを見ただけでは原因と結果がわかりくいものも存在しています。
例えば「スポーツジム」で、
- ダイエットに対する専門性の高さ
- 利用者の肥満率
の2つの要素に「相関関係」が見つかったとします。
簡単に表現すれば「ダイエット専門のスポーツジムほど利用者の肥満率が高い」ということです。
この相関関係の因果性の理解を間違ってしまうと、
- ダイエット専門のスポーツジムを利用すると逆に肥満になる
と結論づけてしまうかもしれません。
もしかしたらライバルのスポーツジムがデータを悪用して、
- あのダイエット専門のスポーツジムは、うちよりも肥満率が高い
- だからあそこに通ってもダイエット効果がない
なんてウワサを流すかもしれません。
しかしこれは明らかに間違いですよね。
実際は、
- 肥満で悩んでいる人がダイエット専門のスポーツジムに通う
のであって、ダイエット成功の実績があるほど、肥満の利用者が殺到します。
その結果、そのスポーツジムの利用者の肥満率は高くなってしまいます。
ではもう一つ別の例を挙げてみましょう。
ある飲食店が来店客に対して、顧客満足度のアンケートを採ったとします。
その結果、
- 来店頻度の高さ
- 顧客満足度の高さ
の2つの要素に「相関関係」が見つかったとします。
この結果を見て、あなたはどう解釈するでしょうか?
もし、
- 何度も来店してもらうことができれば顧客満足度が上がる
と考えて、
- 再来店させるためにクーポン券を配布する
- 10回来店すると割引されるポイントカードを作る
ことで顧客満足度を上げようとすると、施策が間違っているかもしれません。
もしかしたら実際は、
- 最初の来店で顧客満足度が高かった人だけが何度も来店している
だけという可能性だってあります。
もし正しい因果関係がそうであれば、
- 初めて来店した顧客の満足度を高める施策
が重要になるはずです。
そうなれば、
- 店内やトイレの清潔感
- 店員の細かな気遣い
などの方が、クーポン券などよりも重要になるかもしれません。
このように相関関係に因果関係があることが確実でも、因果の向きをどう考えるかによって経営に大きな影響を与える可能性があります。
間接原因
間接原因とは、
- 複数の出来事に間接的に因果関係がある
という相関関係です。
図で表すと、下記のような関係になります。
上の図では、
- 出来事Aと出来事Bには相関関係がある
- 出来事A(原因)と出来事X(結果)は因果関係がある(相関関係もある)
- 出来事X(原因)と出来事B(結果)は因果関係がある(相関関係もある)
ということを表しています。
つまり、
- 出来事Aと出来事Bに「因果関係」は無い
ということになります。
これはいわゆる、
- 風が吹けば桶屋が儲かる
と同じパターンです。
参考 風が吹けば桶屋が儲かるウィキペディアこの場合は、
- 風が吹く
- 桶屋が儲かる
という2つの出来事に「相関関係」があるものの、「因果関係」はありません。
しかし、
- 大風で土ぼこりが立つ
- 土ぼこりが目に入って、盲人(めくら)が増える
- 盲人は三味線を買う(当時の盲人が就ける職に由来)
- 三味線に使う猫皮が必要になり、ネコが殺される
- ネコが減ればネズミが増える
- ネズミは桶をかじる
- 桶の需要が増え桶屋が儲かる
ウィキペディア「風が吹けば桶屋が儲かる」より引用
というように、複数の因果関係が繋がって相関関係を生み出しています。
これをもう少し現実的なビジネスの状況を例に、考えてみましょう。
もしコンビニに製品を卸しているお菓子メーカーが、
- 月間の競合他社の新製品の発売数
- 月間の自社の売上高
に「逆の相関関係(一方が増えると他方が減る)」があることがわかったとします。
言い換えると「競合他社が新製品を多く出した月の売上は下がる」ような相関関係です。
これは一見すると「因果関係」があるように思えます。しかし、もしかしたら「間接的」に因果関係が成立しているだけかもしれません。
もし、
- 競合他社が新製品を発売すると、コンビニの自社製品の陳列棚の面積が減る
という事実があったらどうでしょうか?
この事実を含めて考えた場合、
- 月間の競合他社の新製品の発売数
- 自社製品の陳列棚の面積
- 月間の自社の売上高
という3つの出来事で考えることになります。
そうすれば、
- 競合他社が新製品を出すと、自社製品の陳列棚の面積が減る
- 自社製品の陳列棚の面積が減ると、自社製品の売上が減る
という2つの「因果関係」で構成されていることがわかります。
もし単純に当初のように、
- 競合他社が新製品を多く出した月の売上は下がる
と考えていたら、売上を下げないために、
- 競合他社に新製品を出させない
という現実的ではない対応策しか思いつかないかもしれません。
しかし2つの相関関係の間に、別の要素を挟むことで因果関係が成立することがわかれば、
- 自社も新製品を発売して陳列棚の面積を維持する
- お店に販売奨励金を支払って自社の陳列棚の面積を維持する
という、より現実的な対応策を考えることができます。
このように、
- 因果関係があると思っている出来事
も、視点を変えてみることで
- 複数の因果関係で間接的に繋がっている相関関係
になることもあります。
あなたのビジネスも誰もが当たり前と思っていることを疑うことで、新たな戦略が生まれるかもしれません。
相互作用
相互作用とは、
- お互いに原因にも結果にもなる
という相関関係です。
これは起こるタイミング次第で、立場の変わる「因果関係」です。
図で表すと、下記のような関係になります。
上の図で言えば、
- 出来事Aが先に起こると、結果として出来事Bが起こる
- 出来事Bが先に起こると、結果として出来事Aが起こる
ことの両方が考えられる状態です。
これは、
- 好循環
- 悪循環
な出来事を想像すると、イメージしやすいかもしれません。
例えばある職場で、
- 労働環境の良さ
- スタッフの定着率
に「相関関係」があるとします。
好循環では、
- 労働環境が良ければスタッフの定着率が高まる
- スタッフが定着率が高ければ労働環境も悪化しにくい
などの因果関係が考えられます。
逆に悪循環では、
- 労働環境が悪くなればスタッフの定着率が下がる
- スタッフの定着率が低ければ人手不足で労働環境が悪くなる
などの因果関係が考えられます。
疑似相関
疑似相関(ぎじそうかん)とは、
- 別の出来事が複数の出来事に影響を与える
という相関関係です。
図で表すと、下記のような関係になります。
この「疑似相関」のパターンは、2番目に紹介した「間接原因」の相関関係に似ていますが、違いは別の出来事が相関している出来事の「原因」になっていることです。
つまり、
- 出来事X(原因)と出来事A(結果)に因果関係がある
- 出来事X(原因)と出来事B(結果)に因果関係がある
- 出来事Aと出来事Bには相関関係がある
ような状態です。
例えばあるお店で、
- アイスクリームの販売量
- ビールの販売量
の2つの要素に「相関関係」が見つかったとします。
しかし「アイスクリームを食べたらビールを飲みたくなる人」や「ビールを飲んだらアイスクリームを食べたくなる人」がたくさんいる、と考えるのは少し難しいかもしれません。
これは2つの要素に「因果関係」があるわけではなく、
- 気温
という別の要素が存在しているからです。
この「気温」を直接的な「原因」として考えると、
- 気温が上がるとアイスクリームが売れる(気温が下がると売れない)
- 気温が上がるとビールが売れる(気温が下がると売れない)
という2つの「因果関係」が成立します。この状態を「疑似相関」と呼びます。
上記の例では「アイスクリームが売れる」ことと「ビールが売れる」ことには、何か別の要因があることが想像しやすいかもしれません。
しかしビジネスをやっていると、意外なことが「共通の原因」として浮上することがあります。
例えば、
- 製品の不良率
- 工場スタッフの離職率
の2つに相関関係があった場合でも、
- 生産プロセスのトラブル(原因) → 製品の不良率(結果)
- 福利厚生の充実度(原因) → 工場スタッフの離職率(結果)
という、別々の因果関係を考えてしまいがちです。
しかし視点を変えることで、
- 工場スタッフの研修頻度(原因) → 製品の不良率(結果)
- 工場スタッフの研修頻度(原因) → 工場スタッフの離職率(結果)
という、共通の原因を見つけることができるかもしれません。
このように一見別々の出来事に相関が見られた場合には、単純にそれぞれの原因を見つけるのではなく、共通の原因を持つ「疑似相関」の可能性も疑ってみることは大切です。
偶然の相関
偶然の相関とは、
- まったく関係ない出来事に相関関係が見つかる
ような現象のことです。
図で表すと、下記のような関係になります。
この「偶然の相関」では、誰が見ても別の出来事にも関わらず、なぜか相関関係が現れてしまった状態です。
その代表例としてよく語られるのが、
- 俳優ニコラス・ケイジの年間映画出演回数
- プールでの年間溺死者数
の相関関係です。
上のグラフを見ると、
- 黒い折れ線グラフ:俳優ニコラス・ケイジの年間映画出演回数
- 赤い折れ線グラフ:プールでの年間溺死者数
の2つの出来事に相関関係が見られます。
しかし当然ながらこの2つの出来事に関係はありません。
ニコラス・ケイジ氏を映画にキャスティングしなければ、プールでの溺死者数が減る、というわけでなければ、その逆もありません。
このような偶然の相関関係をまとめた「Spurious Correlations(見せかけの相関関係)」というサイトがあります。
参考 Spurious Correlationstylervigen.com英語のサイトですが、面白い相関関係がたくさん見られるので、ぜひご覧ください。
錯誤相関
錯誤相関(さくごそうかん)とは、
- 相関関係が無いのに相関しているように感じる
現象のことです。
図で表すと、下記のような関係になります。
この「錯誤相関」は、ここまでご紹介した相関関係とは違い、直接的な関係性が無いにも関わらず、あたかも相関関係があるように感じてしまう現象です。
つまり上の図のように、
- 複数の出来事に相関関係がある(ように感じる)
だけであって、実際は相関関係が無い状態のことです。
これは験担ぎ(げんかつぎ)などでよく見られる現象です。
例えば、上司があなたに、
- 「重要な社内プレゼンがある朝に、シャワーを浴びるとプレゼンが成功する。」
- 「俺は今朝シャワーを浴びてきたから、今日の社内プレゼンは成功間違いない!」
と言ったとします。
もちろん、
- 朝にシャワーを浴びること
- 社内プレゼンが成功すること
には相関関係もなければ因果関係もありません。
しかしあなたの上司は、
- 社内プレゼンが成功した日の朝に、シャワーを浴びていた記憶
が何度かあれば、
- 朝にシャワーを浴びること
- 社内プレゼンが成功すること
ことに相関関係があるように感じ始めます。
これは「帰納的推論」を使った考え方で、出来事にパターンを見つけるような思考です。
そして実際に、また別の日に上司がシャワーを浴びてプレゼンが成功してしまったら、
- 朝のシャワー(原因) → 社内プレゼンの成功(結果)
という因果関係を信じてしまうことになります。これが「錯誤相関」の状態です。
もちろん根拠がないことも信じることで、現実に影響を与えることもあります。
先ほどの上司も、大事な社内プレゼンの朝にシャワーを浴びることで、自信を持って社内プレゼンテーションに望むことができるかもしれません。そして「験を担いだ」という事実自体が、「社内プレゼンの成功」という結果をもたらすこともあります。
このように「錯誤相関」だったとしても、別の因果関係が生まれることもあります。
- そんなのただの思い込みだ
- 験担ぎなんてバカらしい
と思っている出来事も、注意深く観察してみると別の相関関係や因果関係が見えてくるかもしれません。
因果関係と相関関係のまとめ
ここまで、
- 因果関係と相関関係の違い
- 相関関係の5つのパターン
を紹介しました。
因果関係と相関関係の違いを一言で表すと、
- 因果関係:ある出来事が直接的に別の出来事を引き起こす関係
- 相関関係:別々の出来事が同じようなタイミングで起こる関係
であり、因果関係がある出来事は相関関係であると言えます。
また因果関係を含む相関関係の5つのパターンとしては、
- 直接原因:一方がもう一方の出来事の直接的な原因になる(=因果関係)
- 間接原因:複数の出来事に間接的に因果関係がある
- 相互作用:お互いに原因にも結果にもなる(=因果関係)
- 疑似相関:別の出来事が複数の出来事に影響を与える
- 偶然の相関:まったく関係ない出来事に相関関係が見つかる
をご紹介しました。
いずれの相関関係でも、目の前で起こっていることにそのまま飛びついてしまうと、本当の原因や関係性が見えなくなることがあります。
ビジネスで論理的に分析を行う場合には、今回ご紹介した「因果関係」と「相関関係」の違いとパターンを理解しておくことで、より深い洞察につながるかもしれません。
おすすめの書籍
因果関係と相関関係を区別して、出来事を論理的に物事を解釈するには、谷岡一郎著「社会調査のウソ」という本がおすすめです。
こちらの本を読むことで、テレビや新聞で公表されている調査結果などの嘘を見抜く力が身につきます。今回ご紹介した因果関係と相関関係についても、第4章で説明されています。
特に、調査結果や統計データから資料を作るような仕事をしている方には、手元に置いておくことをおすすめします。