MECEを使ったフレームワークまとめ

MECEフレームワーク

MECEとは、「モレなくダブりなく」整理された情報のことで、物事をわかりやすく伝えるために必要なテクニックの一つです。

そして経営に使われるフレームワークは、MECEで情報が整理されていることがとても多いようです。

ちなみにここでは「MECEを使ったフレームワーク」を、

  • 因果関係:同じ結果をもたらす複数の原因を探す
  • 類似性:共通の特徴を見つけてグループ化する
  • 二項対立:互いに反する概念で2つに分ける
  • 分割:全体を境界線で3つ以上に分割する
  • 尺度:直線上に並んでいるものを任意の点で区切る
  • プロセス:物事が起きる一連の流れを見つける
  • 因数分解:出来事を掛け算の数式に変換する

のいずれかのパターンで説明できるものと定義したいと思います。

ということで今回は、経営戦略や経営分析に使われるフレームワークに、どのようなMECEが使われているのかをわかりやすく解説します。

はじめに

ここではMECE(モレなくダブりなく)という、情報を整理するためのテクニックを使っているフレームワークについて説明しています。

その前にMECEの基本を知りたい方は、こちらの記事からご覧ください。

MECEMECEとは?ロジカルシンキングの基本テクニック

また、MECEを実現するための7つの切り口(パターン)についての具体例は、こちらの記事にまとめています。

MECEの切り口MECEの7つの切り口:コンビニを例題にして考える

これらの記事を先に読んでおけば、ここから先の説明を理解するのに役立つはずです。

因果関係のフレームワーク

MECEの因果関係

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析は、「新規参入業者」「代替品」「顧客(買い手)」「供給業者(売り手)」「既存企業」という5つの競争要因から、その業界の儲かりやすさを判断するためのフレームワークです。

このフレームワークは「新規参入業社が増えると競争圧力が高まる」というような、競争圧力が発生する因果関係を表現しているため、MECEだと考えられます。

ファイブフォース分析:5つの競争要因

ただし、

  • 特定の業界か製品に絞った場合にのみMECEが成立する

という点に気をつける必要があります。

例えば製品が違えば「供給業者」と「顧客」が同じ会社になってしまう(ダブる)ケースがあるからです。部品XをA社から仕入れてるが、部品Yは自社がA社に対して販売しているような場合を考えると、想像しやすいかもしれません。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

ファイブフォース分析とは?ポーターの5つの競争要因の例

二項対立のフレームワーク

MECEの二項対立

SWOT分析&クロスSWOT分析

長年多くの人に愛されてきた分析フレームワーク「SWOT分析」と「クロスSWOT分析」は、どちらも「二項対立 × 二項対立」という美しい構造を持ったマトリックスです。

SWOT分析は、

  • 目標達成の助けになる vs 目標達成の妨げになる
  • 内部要因 vs 外部要因

という2種類の二項対立で構成されています。

SWOT分析:SWOTマトリックス

さらにすごいのが、SWOT分析から発展したクロスSWOT分析も「二項対立 × 二項対立」のフレームワークだということです。

クロスSWOT分析は、

  • 強み vs 弱み
  • 機会 vs 脅威

という2種類の二項対立で構成されています。

クロスSWOT分析表

このTWOSマトリックスからは、「SO戦略」「ST戦略」「WO戦略」「WT戦略」という4つの戦略が生み出されます。

ということで、「SWOT分析」と「クロスSWOT分析」はとっても美しい、MECEを使ったお手本のようなフレームワークです。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

SWOT分析&クロスSWOT分析関連記事まとめ

アンゾフ・マトリックス

アンゾフ・マトリックス(成長マトリックス)は、「製品ライン」と「市場(製品使命)」の2つの軸で3つの事業戦略と3つの多角化戦略を考えるためのフレームワークです。

このフレームワークの「製品市場戦略マトリックス」は、

  • 既存製品 vs 既存ではない製品(新製品)
  • 既存市場 vs 既存ではない市場(新市場)

という2種類の二項対立で構成されています。

アンゾフ・マトリックス

先ほどご紹介したSWOT分析と違うのは、

  • 「新製品」と「新市場」は無限に存在している

ということです。

上記の図では2つずつしか書いていませんが、本来は無限に追加することができます。そのため「製品開発戦略」「市場開拓戦略」「多角化戦略」も無限に存在することになります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

アンゾフ・マトリックスとは?3つの多角化戦略と具体例

大前の4つの基本戦略

大前の4つの基本戦略の企業戦略は、「問題の事業・製品」と「たたかい方」の2つの軸で表されます。

ちょっとマイナーなフレームワークですが、

  • 旧型 vs 新奇
  • 正面攻撃 vs 正面攻撃以外

という二項対立の構図になっています。

大前の4つの基本戦略:大前研一氏の企業戦略フレームワーク

尺度のフレームワーク

MECEの尺度

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)は、その会社が保有する事業や製品を俯瞰することで、資金などの経営資源を分配するためのフレームワークです。

このPPMのバブルチャートは、

  • 市場成長率
  • 相対的市場シェア

という2つの尺度から構成されています。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

さらにその尺度の任意の点でバブルチャートを4つのエリアに「分割」して、「花形」「金のなる木」「負け犬」「問題児」の4つに分けています。

このように、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントのバブルチャートは、「尺度 × 尺度」と「分割」のMECEの複合技を使ったフレームワークと言えます。

さらに詳しい情報はこちらの記事をご覧ください。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とは?花形・金のなる木・負け犬・問題児

プロセスのフレームワーク

MECEのプロセス

VRIO分析

VRIO分析とは、「経済価値」「希少性」「模倣困難性」「組織」に関する4つの問いに順番に答えることで、その経営資源が強みなのか弱みなのか判別するフレームワークです。

このフレームワークでは、4つの質問というプロセスを順番に答えていく形式になっています。

VRIO分析フローチャート

VRIO分析とは?経済価値・希少性・模倣困難性・組織の質問と事例

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析は、価値がどのように提供されるのか、自社と競合他社を比較するためのフレームワークです。

後述する「バリューチェーン」というフレームワークの「主活動」を抜き出したもので、一連の活動がプロセスとしてグループ化されています。

バリューチェーン分析とは?やり方と具体的事例:無料テンプレートあり

コアコンピタンス分析

コアコンピタンス分析は、自社の事業や製品の元となっている技術力である「コア・コンピタンス」を特定するための分析フレームワークです。

コアコンピタンス分析:技術のグループ化

コアコンピタンス分析では、コアコンピタンスを発見するために、

  1. 最終製品
  2. コア製品
  3. コンピタンス

という順番で分析を行います。

コアコンピタンス分析コアコンピタンス分析のやり方:事業を生み出す技術力を見つける方法

複数タイプのMECEを持つフレームワーク

フレームワークの中には、複数のタイプのMECEを組み合わせて作られているものもあります。

コトラーの競争戦略4類型

コトラーの競争地位4類型は、業界内のそれぞれの企業のポジションを「リーダー」「チャレンジャー」「フォロワー」「ニッチャー」の4つに分類するフレームワークです。

コトラーの競争地位4類型

このフレームワークは一見すると、

  • 高い vs 低い
  • 多い vs 少ない

の二項対立だけのように見えますが、実は市場シェアという尺度を目安にして分類されています。

例えば「マーケット・リーダー」は、経営資源の質が高く量も多い企業が全て含まれるわけではなく、市場シェアがトップである1社のみを指します。他のプレイヤーも、基本的には市場シェアで分類を行います。

そのため「尺度」がメインで、補助的に「二項対立」を使ったMECEのフレームワークということになります。

コトラーの競争地位4類型:リーダー・チャレンジャー・フォロワー・ニッチャーの戦略

バリューチェーン(価値連鎖)

バリューチェーンとは、顧客に価値を提供するための一連の「活動」を表したフレームワークです。

先ほどご紹介した「バリューチェーン分析」はプロセスのMECEでしたが、そのベースになったフレームワーク自体は3つのタイプのMECEで構成されています。

バリューチェーン

使われているMECEのタイプは、

  • 主活動:プロセス
  • 支援活動:類似性
  • マージン = 総価値 ー 総コスト:分割

になります。

バリューチェーンとは?マイケル・ポーターの価値分析フレームワーク

MECEになっていないフレームワーク

実はすべてのフレームワークがMECEを満たしているわけではありません。

もちろんMECEじゃないからといって、ダメなわけでもありません。しかし、モレやダブりが存在しているというフレームワークの「限界」を知っていれば、より上手く使いこなすことができます。

ここでは先ほどの、

  • 因果関係:同じ結果をもたらす複数の原因を探す
  • 類似性:共通の特徴を見つけてグループ化する
  • 二項対立:互いに反する概念で2つに分ける
  • 分割:全体を境界線で3つ以上に分割する
  • 尺度:直線上に並んでいるものを任意の点で区切る
  • プロセス:物事が起きる一連の流れを見つける
  • 因数分解:出来事を掛け算の数式に変換する

の、いずれにも当てはまらないようなフレームワークを挙げていきます。

3C分析

3C分析とは、「顧客(Customer)」「自社(Corporation)」「競合(Competitor)」の3つの視点でマーケティング環境を分析したり、KSF(重要成功要因)から戦略を策定したりするためのフレームワークです。

3C分析

 

「顧客」「自社」「競合」は共通の因果関係はないですし、それぞれの類似性も低く、この3つで市場の全体を表しているわけではないのでモレがあり、顧客と競合は場合によってダブる可能性もあります。

そのため3C分析のフレームワークは、7つのMECEパターンのどれにも当てはまらないと言えます。

逆に言えば、枠にはまらない柔軟に解釈できるフレームワークなので、多くのコンサルタントが自分流にアレンジをして使っています。

3C分析とKSFに基づく企業戦略:大前研一の戦略的三角関係

PEST分析

PEST分析は、外部環境を「政治的要因」「経済的要因」「社会的要因」「技術的要因」の4つから、自分たちのビジネスに影響がありそうな出来事を分析するためのフレームワークです。

PEST分析

一見、「外部環境」という類似性で綺麗にまとまっているようにも見えますが、モレが存在しているため「法的要因」「環境的要因」を加えた「PESTLE分析」なども普及しました。

また政治と経済は区別するのが難しい内容もあり、ダブりが避けにくいフレームワークです。

PEST分析とは?読み方とその目的:政治・経済・社会・技術で外部環境を分析

ポーターの3つの基本戦略

ポーターの3つの基本戦略は、「戦略的ターゲット」と「戦略的優位性」の2つの軸から、「コスト・リーダーシップ戦略」「差別化戦略」「コスト集中戦略」「差別化集中戦略」の4つの戦略が導き出すフレームワークです。

ポーターの3つの基本戦略

フレームワークを見てみると、

  • 全体 vs 特定

は二項対立のようですが、

  • 顧客が認める特異性
  • 低コスト地位

についてはMECEになっていません。

実際に、考案したポーター氏も「顧客が認める特異性」と「低コスト地位」を同時に満たす戦略が存在していることを後に認め、ダブりがあることがわかりました。

ポーターの3つの基本戦略とは?コスト・差別化・集中の意味と事例を解説

おすすめの書籍

MECEの考え方は、1973年に発売されたバーバラ・ミント氏の著書から広まりました。その本は「新版 考える技術・書く技術(原題:The Minto Pyramid Principle、ミントのピラミッド原則)」として、今でも定番のビジネス書として読まれています。

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

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また、この「新版 考える技術・書く技術」と併せて、入門書や練習問題をまとめた書籍も販売されています。

社会人として「情報を整理して伝える」という基本的な技術を身につけるために最適な本なので、ぜひ書店で見つけたら手にとってみてください。

入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法

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