だいぞう
ケイパビリティとコア・コンピタンスをそれぞれ一言で表現すると、
- ケイパビリティは連携による「実行力」
- コア・コンピタンスは中核になる「技術」
という意味で、実行する力なのか技術なのかが違いになります。
「ケイパビリティ」も「コア・コンピタンス」も、企業にとっては競争に優位に働く経営資源です。
いずれもバーニー教授のRBV(Resource-Based View:リソース・ベースド・ビュー)という、企業の経営資源を中心にした戦略策定に関係しています。
ここからは、それぞれを図解で確認していきましょう。
ケイパビリティとコアコンピタンスの違いを図解
まずはケイパビリティとコアコンピタンス(コンピタンス)を図で説明してみます。
ケイパビリティは一連の流れ
ケイパビリティを図で表すと、下記のようになります。
ここでは「安くて新鮮な食品」を提供できる企業のケイパビリティを例に挙げています。
この図では、
- 信頼できる提携農家の協力で安定的に野菜を仕入れて
- 物流システムで加工工場に素早く届けて
- 効率的に小売店まで運ぶ
という一連の「ビジネスプロセス」を表しています。これがケイパビリティです。
コアコンピタンスは樹の根っこ
一方で、コアコンピタンスを図で表すと、下記のようになります。
コアコンピタンスとは、事業で重要な役割を果たすコア製品を生み出すために必要な技術の中でも、最も重要な技術を指します。
コアコンピタンスの影響は、
- 最終製品 = 花・果実・葉
- 事業 = 枝
- コア製品 = 幹
- コンピタンス = 根
のように樹木に例えられます。
ケイパビリティとコアコンピタンスの違いを言葉で対比
今度は言葉で対比してみましょう。
技術と実行のプロセス
- ケイパビリティは社外も含めた実行するプロセス
- コンピタンスは社内にある技術そのもの
ケイパビリティは、様々な役割を持つ人が連携して一連のプロセスを実行します。
例えば「品質の高い全国どこでも受けられるアフターメンテナンス」というケイパビリティは、社内では製造部と営業部、そして社外では取扱代理店が全て連携しなければ実現できません。
一方でコンピタンスは「設計する技術」や「加工する技術」など、技術そのものを指しています。
流動性の有無
- ケイパビリティは固定的
- コンピタンスは流動性がある
ケイパビリティはプロセスであり、機能がお互いにかみ合っている状態なので、外から取ってきてすぐに組み入れることは難しくなります。技術や機能を導入できたとしても、それがプロセスとして定着するまでには時間が必要です。
一方でコンピタンスは「技術」を指しているので、そのもの自体はいたってシンプルに表現されます。技術そのものなので、ケイパビリティよりも簡単に「外から買ってくる」ことができるかもしれません。
実際にテクノロジー企業は技術を持ったベンチャー企業をM&Aすることで、様々なコンピタンスを手に入れます。そしてその技術を様々な商品やサービスに活用します。
結果の可視性
- ケイパビリティは目に見えやすい
- コンピタンスは目に見えない
ケイパビリティは、顧客との接点まで届くことがあるので目に見えやすいと言えます。
このように比較してみると、色々と違う点がありますね。日常では違いを意識することはないかもしれませんが、ビジネス書を読むときなどには役にたつかもしれません。
一方でコンピタンスは技術なので、顧客が手にする頃には商品やサービスに形を変えてしまっています。そのため顧客の目に直接触れることは少ないかもしれません。
ケイパビリティとコアコンピタンスの相性の良い業界
ここまで紹介した違いを考えると、
- ケイパビリティ:サービス業や小売業の競争力を説明しやすい
- コアコンピタンス:製造業や建設業の競争力を説明しやすい
と言えます。
どちらの考え方が優れているかではなく、業界によってどちらの方が競争力を説明しやすいかを考えると、用語の使い分けができそうです。
経営コンサルタントのジョージ・ストーク氏は、「ケイパビリティ」を大手小売業「ウォルマート」などの小売業やサービス業を使って説明をしました。
一方で、プラハラッド教授とハメル教授は、「コアコンピタンス」を「NEC」「シャープ」「本田技研工業」「ソニー」などのメーカーを使って説明しました。
おすすめ書籍
下記の書籍で、コアコンピタンスとケイパビリティの論文が読めます。