だいぞう
代表的な「エーベルの三次元事業定義モデル」では、
- WHO:その事業の恩恵を受ける顧客は誰なのか?
- WHAT:その事業で満たすべき顧客ニーズは何なのか?
- HOW:その事業はどんな技術によって実現できるのか?
という3つの問いに答えることで事業領域を定義できます。この定義は「エーベルモデル(Abell’s Model)」や「エーベルの三次元枠組み」とも呼ばれます。
事業ドメインを定義する意味
事業ドメインは「物理的」「機能的」に定義する方法や、三次元事業定義モデルによる定義が一般的です。
事業ドメインを定義することによって、
- 「やるべきこと」「やらないこと」が明確になり経営資源の最適な分配ができる
- 「やるべきこと」に不足している経営資源や将来必要な経営資源が明確になる
- 「やらないこと」に投入している経営資源が明確になり再分配することができる
ことが期待できます。
物類的定義と機能的定義
「物理的定義」は、具体的な製品やサービスです。事業ドメインが非常に明確になる一方、存在していない製品やサービスを定義できません。そのため物理的に定義をすると、事業ドメインが狭くなる傾向にあります。
「機能的定義」は、解決すべき問題や満たすべき欲求を起点にします。機能的に定義すれば、事業ドメインの解釈の余地が広いため、事業ドメインが広がりすぎる危険性があります。一方で、既存の製品やサービスを超えた事業の拡張が可能です。
- 物理的定義:明確だけど固定的:具体的な製品やサービス
- 機能的定義:不明確だけど柔軟:解決すべき問題や満たすべき欲求
例として自動車メーカーを定義してみます。
- 物理的定義:自動車の製造販売
- 機能的定義:移動手段の提案する
今度はダイエットジムを定義してみます。
- 物理的定義:減量を支援するサービス
- 機能的定義:顧客に健康な体と自信を取り戻させる
このように「物理的定義」は誰にでもわかりやすいものの、新事業への広がりが制限されます。一方で「機能的定義」は定義がしにくいですが、時代の変化に合わせて新しい事業を考えやすいと言えます。
このような事業定義の考え方は、1960年にレビット教授が指摘した「近視眼的マーケティング(マーケティングマイオピア)」にも共通します。
近視眼的マーケティングとは、
- 既存製品を中心に考える「製品志向」に極端に傾倒してしまい、「顧客志向」的な視点がおろそかになってしまう状態
のことです。
具体例としては、
- アメリカ鉄道業界:事業を「輸送・移動」として考えることができず衰退した
などがありますが、これを「物理的定義」と「機能的定義」に置き換えると、
- 物理的定義:鉄道輸送や鉄道旅客事業を提供する
- 機能的定義:顧客のために輸送や移動の手段を提供する
ことと考えられます。
つまり過剰な「製品志向」によって事業を「物理的定義」してしまい、顧客が本来必要としている「機能的定義」に含まれるニーズやウォンツに対応しにくくなる危険性を指摘しています。