売上債権回転率と回転期間:計算式と目安となる業種別平均値【2023年発表値】

売上債権回転率

売上債権回転率が低い場合の対応策

売上債権回転率は、自社の過去の業績と比較(期間比較)しても、産業平均や競合他社と比較(相互比較)したとしても、数値が高いに越したことはありません。

売上債権回転率が高ければ、効率的に売上金を回収して、そのお金をさらなる売上の拡大や事業の投資に使うことができます。

また売上債権は貸し倒れる(回収できない)リスクもあるので、売上債権を小さくできればリスクも小さくすることができます。

このように売上債権回転率が高まれば、現金の増加によって事業機会が増加し、売上金の回収リスクも下がるというメリットがあります。

もし売上債権回転率が低い場合は、

  • 入金サイクルの短い決済手段の比率を高める
  • 請求書の支払い期日を短くする
  • 請求そのものを分割する

などといった施策が考えられます。

入金サイクルの短い決済手段の比率を高める

顧客が支払いに利用する決済手段は、

  • 現金の手渡し
  • 口座への入金
  • クレジットカード
  • 電子マネー

など様々なものがあります。

その中でも買い手と売り手のの間に誰かが仲介するタイプの決済手段は、入金までのサイクルが長くなりがちです。

そして入金までのサイクルが長ければ、売上は長い間「売掛金」として保留されることになり、売上債権の金額が増加します。そして売上債権が増えれば、売上債権回転率が低下します。

例えばクレジットカードや電子マネーは、顧客の利便性が向上する一方で、売り手側は決済手数料を徴収されることに加えて、現金が振り込まれるまでに一定期間待たなければなりません。

そのため規模の小さい小売業や飲食業は、クレジットカードや電子マネーでの支払いの比率が増えると資金繰りが悪くなってしまいます。このような理由から「現金のみ」といった店舗も少なくありません。

しかし近年ではクレジットカードや電子マネーでも「翌日入金」や「翌々日入金」といった入金サイクルの短い事業者も増えてきています。そのような決済手段を利用すれば、売上債権回転率を抑えながら売り手と買い手の双方の利便性を高めることができる可能性があります。

請求書の支払い期日を短くする

請求書での支払いは法人向けの製品やサービスに多くみられます。

売り手側の目線で考えれば、製品やサービスの代金を早く支払ってもらうことができれば、手元の現金が増えるので資金繰りが助かります。

しかしこれは買い手である顧客企業も同じです。

買い手側の目線では、支払いまでの期間が長ければ長いほど、手元に現金を置いておけるので資金繰りが楽になります。そのため、請求書の支払い期日が短くなることは嬉しくありません。

このような理由から、請求書の支払い期日を短くすることはなかなか難しく、業界の慣例やこれまでの慣習に従わなければならないことがほとんどです。

それでも請求書の支払い期日を短くするのであれば、

  • 支払い期日が短くなるデメリット以上の価値を顧客に提供する

ということが必要になります

具体的には、

  • 他社から同じ品質の製品やサービスを買うことができない
  • 他社の製品やサービスと明確な違いがある

といった状況を作り上げた上で高い価値を提供すれば、支払い期日が短くなったという理由だけで他社に乗り換えられてしまうことを避けることができます。

請求そのものを分割する

もし支払い期日を短くするのが難しければ、

  • 請求そのものを小さく分割する

といった方法も考えることができます。

こちらの方法は、先ほどの請求書の支払い期日を短くする方法よりも、より簡単に実現できるかもしれません。

例えば、大きなプロジェクトの請求をする場合に、1つのプロジェクトを複数の小さなフェーズに分けて、1つのフェーズが完了するごとに請求を行うといった方法があります。

また製品などを納入する場合も、請求そのものを細かく区切れば区切るほど、一時的な売掛金のボリュームは小さくなります。

もちろん製品やサービスの特性上、細切れに分割できるものとそうでないものがありますが、請求方法を少し工夫するだけでも、売上債権回転率を改善できる可能性はあります。

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