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総資本回転率とは?計算での求め方と目安となる産業別平均値

総資本回転率

総資本回転率は、

  • 売上高 ÷ (負債 + 純資産)

で計算することができ、

  • 数値が高いほど集めたお金を効率的に活用できている

と言えます。数値の単位は「」です。

売上高は「損益計算書(P/L)」から、負債と純資産は「貸借対照表(B/S)」の数値を使って計算します。

総資本回転率

総資本(そうしほん)」とは「他人資本(= 負債の部)」と「自己資本(≒ 純資産の部)」を足したものを指します。

つまりビジネスの元手となる資金の、

  • 他人資本(= 負債の部):他人から借りているお金
  • 自己資本(≒ 純資産の部):自分たちのお金

をいかに効率よく使って「売上高」を生み出しているのかをみるのが総資本回転率です。

代表的な産業の平均的な総資本回転率は以下になります。(2018年中小企業実態基本調査の数値より筆者が計算。全11産業の完全版は後述。)

産業中分類総資本回転率
建設業1.32 回
製造業1.03 回
卸売業1.70 回
小売業1.71 回
宿泊業・飲食サービス業1.03 回

総資本回転率の財務分析結果としては、

  • 売上高と総資本の大きさが違うだけで総資本回転率が同じパターン
  • 売上高の差で総資本回転率に差が出るパターン
  • 総資本の差で総資本回転率に差が出るパターン

という3つのパターンが考えられます。

そして総資本回転率が低い場合の対応策としては、

  • 在庫(棚卸資産)を圧縮する
  • 活用できていない設備や店舗を手放す

などの方法が考えられます。

ここでは「総資本回転率」とその財務分析の判断について、わかりやすく解説します。

総資本回転率の計算での求め方

冒頭でもご紹介したように総資本回転率(そうしほんかいてんりつ)は、

  • 売上高 ÷ (負債 + 純資産)

という計算で求めることができます。

下図では、青色の部分が「売上高」で緑色の部分が「総資本」になります。

総資本回転率の計算での求め方

ちなみに「総資本」というのは、

  • 他人資本 + 自己資本

と説明されますが、

  • 他人資本 = 負債の部
  • 自己資本 = 純資産の部

として計算されることがほとんどです。

ただし「自己資本」については、厳密には「純資産の部」とイコールにはなりません。

純資産の部には、上の図では省略していますが、「株主資本」の他にも「評価・換算差額等」「新株予約権」「少数株主持分」などの科目があります。

その中でも、

  • 株主資本:資本金などの株主が提供した資金と累積した過去の儲け
  • 評価・換算差額等:資産や負債などの評価損益を調整するための項目

の2つの合計が「自己資本」とされています。

しかし「純資産の部」の細かい項目が得られない場合は計算を簡略化して、

  • 自己資本 = 純資産の部

として考えます。

もし試験問題などで出題された場合には、自己資本の定義が書かれていないか確認してみてください。何も定義されていなければ、純資産の部の合計を自己資本として使いましょう。

また、総資本を負債の部と純資産の部の合計と考えれば、

  • 総資本 = 資産の部

ということにもなります。そして資産の部のことを「総資産(そうしさん)」と呼んだりします。

じゃあ、売上高を資産の部で割れば総資本回転率が計算できるの?

と思うかもしれません。

確かに総資本と総資産が同じ数値なら、計算される総資本回転率の数値も同じになります。しかしニュアンスの微妙な違いがあります。(と、筆者は個人的にそう思ってます。)

どうゆうことかと言うと、まずは下図の貸借対照表と損益計算書の関係をご覧ください。

貸借対照表と損益計算書

総資本(そうしほん)、つまり負債の部と純資産の部は、ビジネスの流れでは「資金調達」の結果として、

  • 他人からどれくらいのお金を集めたか? → 負債の部
  • 自分達のお金はどれくらいあるのか? → 純資産の部

を表します。

つまり「総資本(しほん)回転率」であれば、

  • 集めたお金をいかに効率よく使っているか?

ということを知るための財務分析指標という意味合いがあります。

一方で、総資産(そうしさん)は、ビジネスの流れでは「事業投資」の結果として、

  • 集めたお金がどんな状態にあるのか? → 資産の部

ということの表現になります。

つまり「総資産(しさん)回転率」であれば、

  • 会社の資産(設備や在庫など)をいかに効率よく使っているか?

ということを知るために計算することになります。

…とは言え、ここまで区別して言葉を使い分けている人に会ったことはありません。なので気にするようなことではありませんが、頭の隅にでも留めておいてください。

貸借対照表についてのより詳しい情報については、下記の記事もご覧ください。

期中平均での計算

期中平均(きちゅうへいきん)とは、

  • 期首の数値と期末の数値を足して2で割ること

です。

総資本回転率などの効率性を計算する場合に、貸借対照表の期中平均の数値を使うことが一般的です。

その理由は、

  • 貸借対照表と損益計算書の時間軸が違うため

です。

貸借対照表は特定の「時点」の数字であり、損益計算書は特定の「期間」の数字を表します。

言い換えると、貸借対照表は「一瞬を切り取った数値」であり、損益計算書は「期間中に起こった全ての出来事の合計値」なので計算上同じように取り扱うことができません。

それを解決するのが、年度の「一番初めの瞬間」である「期首」と年度の「一番最後の瞬間」である「期末」の平均をとった「期中平均値」です。

期中平均値を計算すれば、疑似的に貸借対照表の「期間中の数値」を表現できます。そうすることで損益計算書の売上高などの期間中の合計値と一緒に計算しても、実態に近い数字を分析することができます。

ちなみに、

  • 期首または期末のどちらか片方の数値しか手に入らない
  • 期首と期末の数値がほとんど変化していない

といった場合には、期中平均を行わずに期末または翌年度の期首の数字をそのまま使います。同様に、試験問題などでも期中平均を計算するための材料がない場合には、期末の数値などで代用できます。

総資本回転率の目安となる産業別平均

中小企業庁「中小企業実態基本調査」の数値で計算した、産業別の総資本回転率の平均値は以下の通りです。(期中平均を取らず「総資本 = 負債の部 + 純資産の部」で計算。)

産業中分類総資本回転率
建設業1.32 回
製造業1.03 回
情報通信業1.00 回
運輸業・郵便業1.18 回
卸売業1.70 回
小売業1.71 回
不動産業・物品賃貸業0.31 回
学術研究・専門技術サービス業0.58 回
宿泊業・飲食サービス業1.03 回
生活関連サービス・娯楽業1.18 回
サービス業(上記以外)1.23 回
参考 中小企業実態基本調査 平成30年確報e-Stat 政府統計の総合窓口

総資本回転率が低くなってしまう原因としては、

  • 製品が売れずに在庫(棚卸資産)が増えている
  • 設備や店舗が活用されていない

などが考えられます。

上記のどちらに原因があるか(あるいは両方とも原因なのか)については、

  • 棚卸資産回転率:売上高が何回分の在庫(棚卸資産)に相当しているのか?
  • 有形固定資産回転率:有形固定資産の何倍の売上高を生み出したか?

という2つの財務分析指標で確認することができます。

総資本回転率の分析パターン

総資本回転率を分析した結果は、

  • 売上高と総資本の大きさが違うだけで総資本回転率が同じパターン
  • 売上高の差で総資本回転率に差が出るパターン
  • 総資本の差で総資本回転率に差が出るパターン

という3つのパターンに分けることができます。

またそれぞれのパターンは、

  • 期間比較分析:今年度と前年度のように同じ長さの期間で比較する
  • 相互比較分析:自社と競合他社のように複数社間で比較する
  • 標準比較分析:自社と業界平均のように標準となる数値と比較する

などの分析方法から導かれます。

なお、ここでは「期間比較」と「相互比較」を中心に解説を行います。「標準比較」については、先ほどご紹介した産業別平均値と比較してみてください。

総資本回転率の期間比較

期間比較による総資本回転率の分析は、

  • 1年で比較:前年度 対 今年度 など

で比較するのが基本です。

なお、総資本の数値は期首と期末から「期中平均」を計算するものとします。

ここでは例として、

  • 自社の財務諸表を前年度と今年度で比較した場合

で説明します。

売上高と総資本の両方が増えて(or 減って)総資本回転率が変わらない場合

売上高と総資本が同じように増えて、総資本回転率がほぼ同じだった場合は、

  • 既存事業を効率化しつつ新規事業に挑戦し総資本回転率を維持できている
  • 事業が効率化しているが売上拡大で増えた現金を持て余している

などの可能性があります。

総資本回転率は同じ

事業が順調に拡大し、設備などがそのままでどんどん売上が増えれば、売上だけが増えて総資本回転率は高まります。しかしそこで得られた利益は総資本に組み込まれるため、総資産も増えてしまいます。

その増えた総資産を、前者のように新しい事業に投入できれば、新規事業の総資本回転率の低さを補いながら総資本回転率を維持することができます。しかし、後者のように増えた総資本を現金のまま持て余していても、売り上げは増えないので、改善した総資本回転率は相殺されてしまいます。

このように同じように総資本回転率を維持しながら規模が拡大した場合では、資産の部の科目の変化を見てみなければ良い状況なのか悪い状況なのか判断できません

ただし、いずれにしても生産規模の拡大によってより多くの原材料を調達すれば、スケールメリットが働いて原材料のコストを下げることができる可能性もあります。そうなれば「売上高総利益率(粗利率)」も改善するはずです。

一方で、売上高と総資本が同じように減って、総資本回転率が変わらない場合は、

  • 市場の縮小に対して設備を売却したがお金にならなかった

ことなどが考えられます。

市場が急速に縮小すると活用できない設備や店舗が増え、総資本が変わらないまま売上高だけが下がってしまうと、総資本回転率は低くなります。

そういった場合には、活用できない設備や店舗を売却して現金に変えるという方法があります。しかし売却する固定資産の価値が帳簿の価額ほどなければ、「売却損」が発生して総資本(=資産)も小さくなります。

その結果、売上高も下がりながら総資本も下がり総資本回転率が維持されることになります。

売上高が変化したことで総資本回転率が高くなる(or 低くなる)場合

総資本がほとんど変化しないのに、売上高が変化することで総資本回転率が変わった場合は、

  • 企業が資本や資産を有効活用できるようになった(または、できなくなった)

ことが考えられます。

売上高の差で総資本回転率の差が出る場合

例えば、投資を行って新たな事業をスタートさせたばかりの状態であれば、設備や店舗が十分に活用されておらず、総資本回転率が低い状態かもしれません。

これは事業への経験曲線効果が生まれていない状態とも言えます。

しかし新しい事業が軌道に乗ってくると、設備が変わらなくても売上高が徐々に伸びます。その結果、総資本回転率の数値が改善します。

逆に設備や店舗の稼働率が下がってきたり、持て余していたりすれば、それらの資産が売上に繋がりません。その結果、資産のボリュームがほとんど変わらないまま売上が低下して、総資本回転率が悪化していくことがあります。

総資本が変化したことで総資本回転率が高くなる(or 低くなる)場合

売上高がほとんど変わっていないのに総資本回転率が変化した場合は、

  • 在庫(棚卸資産)の量が減った(または、増えた)
  • 固定資産や有価証券の売却で利益が出た(または、損失が出た)

などのことが考えられます。

総資本の差で総資本回転率の差が生まれる場合

毎年同じ量を生産し同じ金額を売ったとしても、眠っている在庫(棚卸資産)の量が多ければ総資本(=資産)は大きくなります。逆に在庫が必要なときに必要な量だけ作って売れば、在庫の量が少なくなって総資本(=資産)は小さくなります。

その結果、売上高が変化しなくても総資本が変わることで総資本回転率が変化します。

また金融資産や固定資産を処分した際に利益や損失が出れば、売上に関係なく総資本(=資産)は増減します。

例えば、減価償却している途中の不要な設備を廃棄した場合には、その固定資産がなくなった分だけ総資本(=資産)は小さくなります。その結果、総資本回転率は改善します。

総資本回転率の相互比較

相互比較による総資本回転率の分析は、

  • 競合他社との比較:同じ業界・規模・業態の競合他社との比較
  • ベンチマーキング:同じ業界の優良企業やトップ企業との比較
  • ビジネスモデル比較:同じ業界でビジネスモデルの異なる他社との比較

というように比較対象を変えて数値を比較します。

ここでは例として、

  • 同業界で同業態の競合他社との比較

で説明します。

競合他社の財務データの入手方法については、こちらの記事をご覧ください。

売上規模が違うのに総資本回転率が同じになる場合

売上の規模が違っても総資本回転率が同じ場合は、

  • 資産の構成が似ている
  • ビジネスモデルが似ている

ことが考えられます。

総資本回転率は同じ

資産の中に占める在庫(棚卸資産)の割合や、固定資産の割合が同じであれば、総資本回転率も同じになる可能性が高くなります。

特に同じ業界であれば、ビジネスモデルなども似通っていることがほとんどなので、保有する資産の構成も似ることが多くあります。

しかし詳細を見ていけば、

  • 他人資本と自己資本の比率が違う

ということもあります。

そういった場合には、

  • 自己資本比率:総資本のうち自己資本がどれくらいの割合を占めているか?
  • 負債比率:自己資本に対して負債がどれくらいの割合を占めているのか?

などの安全性の財務分析で確認する必要があります。

総資本は変わらないのに総資本回転率が高い(or 低い)場合

総資本がほとんど同じなのに、売上高の違いで総資本回転率に差がある場合は、

  • 競合他社よりも資本や資産を有効活用できている(または、できていない)
  • 資産の構成が違う
  • ビジネスモデルが違う

ことが考えられます。

売上高の差で総資本回転率の差が出る場合

もし競合とビジネスモデルが同じで、在庫量(棚卸資産)や保有する固定資産に大きな違いがないのであれば、

  • より大きな価値を効率的に生み出せているか

によって総資本回転率に差が現れます。

例えば一方の企業の方が高いブランド価値などを持ってれば、設備や製造原価が同じだったとしても、より大きな売上に変換することができます。逆に顧客にとって価値が低く買い叩かれてしまうようであれば、売り上げは大きくなりません。

また総資本のサイズが同じでも、資産の構成やビジネスモデルが違えば売上高に差が現れます。

例えば同じ業界でチェーン展開している企業でも、直営店が多い企業は土地や店舗の固定資産が多く、総資本が大きくなります。逆にフランチャイズ展開している企業は、所有する土地や店舗が少ないため、総資本が小さくなります。

このようにビジネスモデルが同じでも資産の構成内容が違えば、総資本の規模が同じでも売り上げは大きく違います。

また同じ業界で同じような資産構成の会社でも、物販が中心の会社とサービス提供が中心の会社では、売上を生み出す効率が違います。その結果、総資本の規模が同じでも売上高に差が生まれて、総資本回転率にも差が出ます。

売上高は変わらないのに総資本回転率が高い(or 低い)場合

売上高がほとんど同じなのに総資本回転率に差がある場合は、

  • 在庫の回転効率に差がある
  • 固定資産の運用効率に差がある
  • ブランド価値などの付加価値に差がある

などのことが考えられます。

総資本の差で総資本回転率の差が生まれる場合

もし自社よりも規模の小さい同業他社が、自社と同じくらいの売上高を生み出しているのであれば、その競合は在庫管理や資産の活用、ブランド力などにおいて一枚も二枚も上手なのかもしれません。

例えばより少ない量の在庫(棚卸資産)で同じ売上を上げているのなら、在庫をどんどん効率よくさばいているということになります。また店舗や設備が少ないのに売上が多ければ、店舗や設備をより効率的に使っていることになります。

また販売数が同じなのにより多くの売上を生み出せるのであれば、競合の方が販売あたりの単価が高いのかもしれません。

このように同じ売上高の同業他社で総資本の規模に差があれば、その原因が何なのかより詳細に分析する必要があります。

総資本回転率まとめ

以下は、ここまで説明した内容を簡単にまとめたものです。

総資本回転率の計算での求め方は?

総資本回転率を求める計算式は、

  • 売上高 ÷ (負債 + 純資産)

で、単位は「回」です。

  • 数値が高いほど集めたお金を効率的に活用できている

と言えます。

総資本回転率の目安になる平均値はどれくらい?

代表的な産業の総資本回転率は以下のとおりです。

  • 建設業:1.32 回
  • 製造業:1.03 回
  • 卸売業:1.70 回
  • 小売業:1.71 回
  • 宿泊業・飲食サービス業:1.03 回

売上高の変化によって総資本回転率が変化した場合の原因は?

総資本がそのままの状態で総資本回転率が変化した原因としては、

  • 企業が資本や資産を有効活用できるようになった(または、できなくなった)

ことが考えられます。

例えば店舗や設備の稼働率が改善すれば、総資本がほとんど変わらずに売上高だけが伸びて総資本回転率が改善します。逆に店舗や設備の稼働率が落ち込めば、総資本回転率は悪化します。

総資本の変化によって売上高平均率が変化した場合の原因は?

売上高が変わらないのに総資本回転率が変化した場合の原因としては、

  • 在庫(棚卸資産)の量が減った(または、増えた)
  • 固定資産や有価証券の売却で利益が出た(または、損失が出た)

などのことが考えられます。

例えば、過剰に抱えていた在庫を処分したり、設備や建物を売却した場合には総資産に変化が起きます。その結果、売上高が変わらなかったとしても総資本回転率が変化します。

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