Amazonによる低コスト構造のための惜しみない投資
Amazonは創業後の早い段階から、サプライチェーンを含めた物流網の構築に惜しみない投資を続けてきました。
それは「低コスト構造」を実現するため。そして、キーワードとなるのが「規模の経済性」です。
規模の経済とは、
- 生産の規模が大きくなればなるほど製品1つあたりの平均コストが下がる状況
のこと。「スケールメリット」とも呼ばれます。
この定義をAmazonの物流部門で言い換えれば、
- 物流拠点の取り扱い量が大きくなればなるほど商品1つあたりの販売コストが下がる状況
ということになります。
もっとわかりやすく言えば、デカい物流センターで山ほどの商品を扱えば、商品1個あたりのコストが下げられるということ。そうすれば、ベゾス氏が重視している「商品価格」を低く抑えれることができます。
そのため、Amazonは世界各地に巨大な物流センター(フルフィルメントセンター)を持っています。
Amazonの創業後数年はドットコムバブルの真っ最中でした。その頃は「ネットショップは倉庫を持たずに物流はメーカーに任せて効率化!」というような考えももてはやされていた時代。
そのような中で、逆行するように投資をし続けたAmazonは株主から批判されることもありました。しかしベゾス氏の目論見は当たり、Amazonの物流ネットワークは競争優位の源泉となっています。
現在では、Amazon Air(アマゾン・エア)と呼ばれる貨物航空会社を所有し、物流のハブ空港を起点として数十機の専用輸送機を運用するほどです。
さらに、新しい技術への投資も余念がなく、Amazon Robotics(アマゾン・ロボティクス)呼ばれるロボットによる在庫管理システムも運用してます。
以下の動画を見ていただけるとわかりますが、超巨大な倉庫内で働いているのはほぼロボットのみ。倉庫内に人がほとんどいません。
創業当社は人力でやっていた、倉庫での商品のピッキング作業ですが、今ではほぼ全ての工程をロボットが自動的に行います。
このことからも、Amazonが長年の莫大な投資によって人件費などの固定費を削減し、商品1個あたりの物流コストを引き下げていることがわかりますね。
物流効率が上がれば商品価格を引き下げられる
ここまでの内容をビジネスモデルに図解したのがこちら。
上の図では、
- 利益・資金を、設備投資や人材採用育成活動に充てることで物流効率改善活動が推進する
- 物流効率改善活動が進めば、商品価格の押し下げ効果や配送時間の短縮が見込める
- 商品価格が下がり、配送時間が短くなれば顧客体験が改善する
ということを表しています。
ちなみに、配送時間の短縮においても、配送費の削減や在庫回転率の向上といった形でコスト削減につながっています。
商品を売れば売るほど安く仕入れることができる
サプライチェーンの強化は、もう一つのコスト抑制効果も生み出します。
それは、
- 販売量の増加に伴う、仕入れの交渉力の向上
です。
大きな倉庫を所有し、次から次へと配送できるのであれば、一度に大量の仕入れも行えるということです。
一度に大量に買ってもらえるということは、メーカーにとっても嬉しいこと。そのため、仕入れ量を増やす代わりに、仕入れ値を下げてもらうことが可能になります。
これが仕入れの交渉力です。
仕入れの交渉力が高まれば、その分だけ商品価格を引き下げることができます。結果、顧客体験が改善します。
もちろん大量に売り捌く能力があってのことですが、仕入れにおいても規模の経済が働くので、低コスト構造がより一層強化されることになります。