経験曲線効果の習熟率の計算方法
経験曲線効果は、習熟率の計算で求めることができます。
ここでは、
- 過去の結果から習熟率を計算する方法
- 習熟率を目安に平均生産コストを予測する方法
を、難しい数式を使わずに簡易的に説明します。
過去の結果から習熟率を計算する
まずは過去の結果を元に、習熟率を求める方法です。
必要な情報は、
- 個数
- 費用(コスト:原価、人件費、作業時間など)
です。
ここでの例では、
- 個数:1ロットあたり10個
- 費用:コスト
として計算してみます。
まず1ロット(10個)生産するごとに、コストを集計します。コストはそのロットの生産に必要だった、原材料や人件費などです。それを記録したものが下の表です。
ここから習熟率を計算してみます(上表では計算済み)。
習熟率は累計の個数が倍になるごとに計算します。計算方法は、
- その時のコスト ÷ 累計個数が半分の時のコスト × 100
になります。
例えば4ロット目を生産し終わった時の習熟率は、
- 16 ÷ 22 × 100 = 72.727272…%
となります。同様に累計個数が倍になるごとに計算します。
8ロット目までの習熟率を見ると、この作業は習熟率73〜75%であると考えられます。
これをグラフで表すと、下のようになります。
習熟率を目安に平均生産コストを予測する
今度は逆に、初回のコストと期待する習熟率から、コストがどれくらいまで下がるか予測してみます。
ここでの計算は簡単な式と、早見表を使います。
計算式は、
- 初回のコスト × ロット数^ー早見表の数値p(n) = コストの予測値
となります。
ちなみに「^」は「二乗」「三乗」などの「乗」のことです。早見表の数値の前に「マイナス」があることも注意してください。
早見表は以下のものです。
参考
原価見積における習熟曲線理論の活用 – 片岡眞吾 著豊橋短期大学研究紀要 第12号
今回は習熟率75%で予測してみようと思うので、早見表の数値は「0.4150」になります。
例えば4ロット目を生産した時のコストを計算すると、
- 初回のコスト × ロット数^ー早見表の数値p(n) = コストの予測値
- 30 × 4^-0.4150 = 16.8758…
となります。
残りの数値も計算すると、下表のようになります。
先ほどの過去の結果から計算した場合の数値に、とても近い数字が出てきました。累計の個数が倍になるごとに、ちゃんと習熟率が75%になっています。
下のグラフでは、±5%で習熟率が変化した場合も計算してみました。
このグラフをみてみると、習熟率80%で累計80個のコストと、習熟率70%で累計40個のコストがほぼ同じですね。この例では習熟率が10%下がることで、累計生産数が半分でも同じコストが実現できることになります。習熟率の改善は、生産コストに大きく影響することがわかります。
経験曲線効果と規模の経済の違い
似ている経済用語に「規模の経済」というものがあります。規模の経済は製品を作れば作るほど製品1つあたりの固定費が分割されて、平均費用が下がっていく状況を表しています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
規模の経済・範囲の経済・経験曲線効果の違いとは?図解すると一目瞭然