密度の経済とは?ドミナント戦略との関係性をわかりやすく解説

密度の経済とは、

  • 人がたくさんいる場所で商売をすれば効率が良い

という考え方です。「密度の経済性」とも呼ばれ、人口密度に関連する経済効果のことです。

ここでは実際の統計データなどを交えて、わかりやすく説明します。

密度の経済とは人口密度による効率性

密度の経済(Economies of density)とは、人口密度の高い場所でビジネスを行うことで様々なコストを引き下げることができるという考え方です。

人口が多い場所でビジネスを行えば、より短時間にたくさんの人に商品やサービスを提供できます。

例えばピザなどのデリバリーサービスは、密度の経済が大きく影響する業態です。狭い地域にたくさんの人が住んでいた方が、配達のコストを下げることができます。

逆に田舎でのデリバリーサービスは、効率よく配達できないため採算が合いにくくなります。

もう一つの例としては、地域の生活インフラの効率性です。人が密集して住んでいれば、公共交通手段や水道光熱を効率的に提供でき、住民1人あたりの税負担は軽くなります。

一方で過疎化が進んで人口が減った地域では、数人のために水道光熱インフラや公共交通を維持しなければなくなり、住民1人あたりの税負担は大きくなります。「コンパクトシティ」の効率が良い理由の一つが、密度の経済性です。

その他にも、

  • 人の多い駅前でチラシを配った方が効率的
  • たくさん人が利用する路線の運賃は安くなる

など、人がたくさん集まることで様々な場面でコストが引き下げらます。

密度の経済が一番効く業種はサービス業

独立行政法人経済産業研究所の森川氏の論文「サービス業の生産性と密度の経済性 -事業所データによる対個人サービス業の分析- 」によると、サービス業では市区町村の人口密度が2倍になることで、生産性が10〜20%ほど向上すると言われています。これは非サービス業や製造業に比べても、高い値になっています。

下図は、ボウリング場の人口密度と生産性の関係を表したグラフです。

人口密度の高低と生産性の分布

サービス業の生産性と密度の経済性-事業所データによる対個人サービス業の分析- 森川正之(経済産業研究所/社会経済生産性本部)2008.4, p29 より引用

青い破線が都市部赤い実線が郊外の店舗の数値です。そして縦軸が人口密度で、横軸が生産性になります。

人口密度が高い=グラフの山が尖っている都市部のグラフは、生産性(TFP:Total Factor Productivity、全要素生産性)の中心が右にずれています。

つまり人口密度が高い方(都市部)が生産性が高くなるということです。

サービス業は人口密度の高い都市部に出店するだけで、郊外のライバルよりも効率的に稼ぐことができると言えます。

密度の経済とドミナント出店戦略

密度の経済の説明として、セブンイレブン等のドミナント戦略(特定エリアに集中して何店舗も出店する戦略、ドミナント方式、ドミナント出店)が挙げられることがあります。

しかし結論から言えば、ドミナント出店戦略は「密度の経済」ではありません

参考 出店の考え方 - ドミナント方式(高密度多店舗出店)株式会社セブンイレブン・ジャパン(インターネット・アーカイブ)

上記のセブンイレブン公式サイト(2019年1月執筆時点、リンク先はインターネット・アーカイブ)では「ドミナント方式(高密度多店舗出店)」の効果として、

  • チェーン認知度の向上
  • 来店頻度の増加
  • 物流効率の増加
  • 加盟店様への経営アドバイス時間の確保
  • 広告効率の向上

の5つの点を挙げています。

それぞれ、

という理論で説明することができます。

チェーン認知度の向上

「チェーン認知度の向上」は、「単純接触効果(別名、ザイアンス効果)」の影響になります。

参考 単純接触効果ウィキペディア

単純接触効果(ザイアンス効果)とは、

  • 繰り返し接することで好感度や印象が高まる効果

のことです。

ドミナント戦略を実施すると、地域住民は高い頻度でセブンイレブンの看板やロゴマークを目にすることになります。その結果、セブンイレブンの認知度が高まります。

しかしこれは密度の経済とは関係ありません。

例えば、電車の駅を降りるたびに「マクドナルド」や「吉野家」があれば、それらのチェーン店の認知が高まります。単純に接触回数の問題なので、店舗や人口が密集している必要はありません。

来店頻度の増加

「来店頻度の増加」は、「ハフモデル(Huff Model)」という理論で説明することができます。

参考 検索結果 - ハフモデルGoogle検索

ハフモデルとは、

  • 売場面積が広い店舗の方が集客力が高い
  • 顧客から近い店舗の方が集客力が高い

という集客力で商圏分析をするための理論です。

コンビニエンスストアの店舗面積は限られているため、ドミナント戦略では、

  • 顧客と店舗の近さ

を最大限に高めることで、来店頻度の向上に貢献することになります。

こちらも密度の経済とは関係ありません。

人口密度の低い過疎地に出店する場合も、「売場面積の広さ」や「顧客からの近さ」は大きな武器になります。

物流効率の増加

「物流効率の増加」は、「規模の経済」で説明することができます。

規模の経済とは?固定費が減る理由とメリット・デメリット・具体例

規模の経済とは、

  • 生産の規模が大きくなればなるほど製品1つあたりの平均コストが下がる

ことです。

同じ内容をドミナント戦略で言い換えれば、

  • 店舗数の規模が大きくなればなるほど1店舗あたりの平均物流コストが下がる

ことになります。

具体的には、特定地域で店舗数の規模を高めると、

  • 1つの物流センターがたくさんの店舗をカバーできる
  • 1台の配送トラックがたくさんの店舗を回れる

ことによって、1店舗あたりの平均物流コストを下げることができます。

例えば、

  • 1つの物流センターから5店舗に配送する場合
  • 1つの物流センターから10店舗に配送する場合

では、1店舗あたりの物流センターの費用負担が半分になります。

また、

  • 1台の配送トラックが5店舗に配送する場合
  • 1台の配送トラックが10店舗に配送する場合

でも、1店舗あたりの配送トラックの費用負担が半分になります。

このように、特定地域において店舗数で規模を拡大すれば、「規模の経済」によって物流効率が向上してコスト削減につながります。

管理コストの抑制

セブンイレブンのホームページでは「加盟店様への経営アドバイス時間の確保」と書かれていますが、

  • チェーン本部によるフランチャイズ店の管理コスト

のことを指しています。

これは先ほど説明した「規模の経済」による本部社員の移動コスト効率化に加えて、「経験曲線効果」の影響もあります。

経験曲線効果とは、

  • ノウハウが蓄積されることで平均コストが下がる

効果のことです。

経験曲線効果とは?具体例と習熟率の計算方法:平均生産コストが下がる理由

特定地域にフランチャイズ加盟店の店舗が集中すると、短時間に複数の店舗を回ることができるようになります(配送トラックと同じ規模の経済)。

本部の担当者は同じような店舗の情報を効率よく手にすることで、ノウハウの蓄積が早くなり、その地域の店舗の経営改善を効率的に行うことができます(経験曲線効果)。

広告効率の向上

「広告効率の向上」も、「物流効率の増加」と同様に「規模の経済」で説明することができます。

広告効率が向上するというのは、

  • 1つの広告で多くの宣伝効果が得られる

ということです。

例えば、

  • ある地域でテレビコマーシャルを流した

とします。

その地域にセブンイレブンが1店舗しかなければ、1店舗分の広告効果です。しかし同じ地域に10店舗のセブンイレブンがあれば、1つのコマーシャルで10店舗分の広告効果が得られます。

仮にテレビコマーシャルを流すのに1回 50万円かかるとすれば、

  • 地域に1店舗しかない:1店舗あたりの広告費 50万円
  • 地域に10店舗ある:1店舗あたり 5万円

のように、1店舗あたりの広告費が10分の1まで下がります。

このように、チェーン店の規模が大きくなることで、1店舗あたりの広告費などのコストが下がる効果も「規模の経済となります。

つまり、

  • ドミナント出店戦略 = 密度の経済

ではなく、

  • ドミナント出店戦略 = ザイアンス効果 + ハフモデル + 規模の経済 + 経験曲線効果

という、4つの理論モデルの組み合わせということになります。

 

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