ケイパビリティとは?コアコンピタンスとの違いと意味:図解で比較して理解しよう

ケイパビリティとコア・コンピタンスの違いをそれぞれ一言で表現すると、

  • ケイパビリティは連携による「実行力
  • コア・コンピタンスは中核になる「技術

という意味です。

ケイパビリティもコア・コンピタンスも企業にとっては、競争に優位に働く経営資源です。いずれもバーニー教授のRBV(Resource-Based View:リソース・ベースド・ビュー)という、企業の経営資源を中心にした戦略策定に関係しています。

ここからは、それぞれを図解で確認していきましょう。

ケイパビリティ

「Capability(ケイパビリティ)」という英単語を辞書で引いてみると、「能力」という意味の他に「性能」「才能」「可能出力」などが挙げられています。

単語を分解してみると、「Capable(可能である)」と「Ability(〜できること)」が合わさった言葉とも言えます。つまり、何かを「実現したり処理したりできること」やその力を指しています。

ケイパビリティは「ビジネスプロセス」であり、社内外の様々な役割が組みわさった「ケイパビリティ・チェーン」というものを構成することがあります。

ケイパビリティ・チェーン

例えば、顧客に「安くて新鮮な食品」を提供できる企業があったとします。その企業のケイパビリティは、信頼できる提携農家の協力で安定的に野菜を仕入れ、物流システムで加工工場に素早く届け、効率的に小売店まで運ぶ、という一連の「ビジネスプロセス」と言えます。

このようにケイパビリティは1社だけでなく、供給元の農家や納品先の小売店の協力がなければ成り立たないこともあります。

そしてこのような複雑で優れたケイパビリティは、簡単に真似をすることができません。真似をすることが難しいということは、競争で優位に立てることをになります。

こういったケイパビリティを中心に置いた戦略を、「ケイパビリティ・ベース競争戦略」と呼びます。

ケイパビリティ・ベース競争戦略

ケイパビリティ・ベース競争戦略には4つの基本原則があります。以下は「戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS) 」の第9章より引用します。

  1. 企業戦略を構成する要素は、製品や市場ではなく、ビジネスプロセスである。
  2. 主要なビジネスプロセスを、他者に勝る価値を継続的に顧客に提供できるような戦略的ケイパビリティへと変換することが、競争の勝敗を左右する。
  3. SBU(戦略的事業単位)と職能部門を結びつける一方、双方の力をこれまでの限界を超えて引き出すためにインフラに戦略的に投資し、戦略的ケイパビリティを構築する。
  4. ケイパビリティは必然的に複数の職能部門にまたがるため、ケイパビリティ戦略を推進するのはCEOの仕事である。

このように、競争に打ち勝つためのケイパビリティを維持し続けるためには、企業全体で取り組みながら、しっかりと投資を続けることが重要です。

ケイパビリティとバリューシステム

ケイパビリティに通じる考え方として「バリューシステム」というものがあります。

バリューシステムとは、個々の企業の中のビジネスプロセスである「バリューチェーン(価値連鎖)」の集合体です。ケイパビリティの理解が深まると思うので、バリューチェーンの記事もお勧めします。

バリューチェーンの意味と分析のやり方:ポーターの価値分析フレームワーク

ダイナミック・ケイパビリティ

ダイナミック・ケイパビリティとは、1997年にデイビッド・ティース教授らの論文「Dynamic Capabilities and Strategic Management(ダイナミック・ケイパビリティと戦略経営)」で提唱された考え方です。

ケイパビリティは、

  • ゼロ次一般ケイパビリティ(Zero-order Ordinary Capability)
  • 高次動的ケイパビリティ(High-order Dynamic Capability)

の2つに分類できます。

通常のケイパビリティである「0次一般ケイパビリティ」は、現在の経営戦略を担っている日々のオペレーションのための「実行力」です。

ダイナミック・ケイパビリティと呼ばれる「高次動的ケイパビリティ」は、

  • 経営資源の統合
  • 経営資源の再構築
  • 経営資源の再構成

を伴う、急速な環境変化に対応するための「適応力」です。

一般のケイパビリティもダイナミック・ケイパビリティも、どちらが優れているというわけではなく、必要とされる状況が違うだけです。

ティース教授は急激な環境変化に対して「企業の敏捷性」を高めるためには、

  1. 従業員が素早く学ぶことで戦略的資産を構築する
  2. 「一般的なケイパビリティ」「技術」「顧客からのフィードバック」などの戦略的資産の統合する
  3. 価値が低くなった現在の経営資源の変換や再利用をする

の3段階のステージを経ることが企業に必要だと説いています。

もっと詳しい内容については、こちらの書籍が参考になるかもしれません。

コア・コンピタンス

コンピタンスとは、様々な製品やサービスを生み出すための「技術」を指しています。そして事業に重要な役割を果たす「コア製品」は、複数のコンピタンスから生み出されています。それらのコンピタンスの中でも中核的な存在にあるのが、コア・コンピタンスです。

競争優位のルーツ(根)

コンピタンスと事業や製品の関係性は、樹木のようなものとして例えられます。その中でもコンピタンスは「根(ルーツ)」として表現されます。

例えば「超高性能小型モーター」という「コア製品」は、

  • 高性能なモーターの設計技術
  • 部品を微細化する加工技術

というコンピタンスから生み出されていると言えます。

その中でも特に重要なコンピタンスを「中核になるコンピタンス」すなわち「コア・コンピタンス」と呼びます。

先ほどの例で、設計技術が様々なサイズのモーターに適用できるのであれば「高性能なモーターの設計技術」が中核となるコンピタンス、すなわち「コア・コンピタンス」となります。

コア・コンピタンスの三条件

コア・コンピタンスと呼ばれるためには3つの条件があります。以下は「戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS) 」の第8章より引用します。

  1. 広範かつ多様な市場に参入する可能性をもたらすものでなければならない
  2. 最終商品が顧客にもたらす価値に貢献するものでなければならない
  3. ライバルには模倣するのが難しいものでなければならない

例えば「超高性能小型モーター」という「コア製品」を生産できる電気メーカーは、

  • そのモーターを使って家電市場や工業用ロボット市場に参入できる可能性がある
  • そのモーターを使うと製品は小型で高性能なものになり顧客は喜ぶ
  • 独自開発したモーターなので競合他社がすぐに同じものを作ることはできない

という競争の優位性を得ることができます。

コア・コンピタンスの特徴

コア・コンピタンスには下記のような特徴も見られます。

  • いくら使っても消えない
  • 利用され共有されるたびに強化されていく
  • 既存企業同士を結合させる接着剤になる
  • 新規事業を創造する原動力になる

コア・コンピタンスやコンピタンスは、使うことによって磨かれ強化されます。また高度化したコア・コンピタンスは様々な製品に応用できるので、新しい事業を次々と生み出せます。

 

コンピタンスとケイパビリティの違い

ここまで詳しく見てきた「コンピタンス」と「ケイパビリティ」ですが、今度は言葉で対比してみましょう。

  • コンピタンスは社内にある技術そのもの
  • ケイパビリティは社外も含めた実行するプロセス

コンピタンスは「設計する技術」や「加工する技術」など、技術そのものを指しています。一方でケイパビリティは、様々な役割を持つ人が連携して一連のプロセスを実行します。例えば「品質の高い全国どこでも受けられるアフターメンテナンス」というケイパビリティは、社内では製造部と営業部、そして社外では取扱代理店が全て連携しなければ実現できません。

  • コンピタンスは流動性がある
  • ケイパビリティは固定的

コンピタンスは「技術」を指しているので、そのもの自体はいたってシンプルに表現されます。技術そのものなので、ケイパビリティよりも簡単に「外から買ってくる」ことができるかもしれません。実際にテクノロジー企業は技術を持ったベンチャー企業をM&Aすることで、様々なコンピタンスを手に入れます。そしてその技術を様々な商品やサービスに活用します。

一方でケイパビリティはプロセスであり、機能がお互いにかみ合っている状態なので、外から取ってきてすぐに組み入れることは難しくなります。技術や機能を導入できたとしても、それがプロセスとして定着するまでには時間が必要です。

  • コンピタンスは目に見えない
  • ケイパビリティは目に見えやすい

コンピタンスは技術なので、顧客が手にする頃には商品やサービスに形を変えてしまっています。一方でケイパビリティは、顧客との接点まで届くことがあるので目に見えやすいと言えます。

このように比較してみると、色々と違う点がありますね。日常では違いを意識することはないかもしれませんが、ビジネス書を読むときなどには役にたつかもしれません。

おすすめの書籍

さらに詳しく勉強したくなった方には、こちらの書籍をオススメします。

こちらの第8章には、1990年に発表されたプラハラード教授とゲイリー・ハメル教授による記事「The Core Competence of the Corporation 」の日本語訳が掲載されています。ソニーや本田技研の例を交えて「コアコンピタンス」について詳しく書かれています。

また第9章には、1992年にBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)のストーク氏による記事「Competing on Capabilities: The New Rules of Corporate Strategy 」の日本語訳が掲載されています。アメリカ小売大手のウォルマートを例に、「ケイパビリティ」について詳しく書かれています。