コアコンピタンス分析の具体例:ある老舗のラーメン店
まずは具体例で、コアコンピタンス分析の全体の流れを確認しましょう。
架空の老舗ラーメン店のコアコンピタンス
ここではわかりやすく説明するために、架空の老舗ラーメン店を使って分析します。
架空の老舗ラーメン店は、
- 地元民に愛される創業30年の老舗ラーメン店
- 近所にラーメンチェーン店が進出しても客が減らない
- 「黒ラーメン」「赤ラーメン」「チャーシュー丼」「チャーシュー入り炒飯」が人気メニュー
- 店主が調理を担当していてバイトを雇っている
- 店主は30年前に独立して店を開いた
- 店主は独立前にイタリア料理店で働いていた
という設定にします。
まずはこのラーメン店の最終製品と事業を書き出してみましょう。いずれも他店と比べて競争力がある料理です。
分析の流れは、最初に説明した「コアコンピタンスの樹」を上からたどる感じになります。
次に人気メニューを生み出す「コア製品」が何であるか考えます。
コア製品を書き出したら、最終製品と線でつないでみてください。この例では「秘伝スープ」と「特製チャーシュー」が、特に重要なコア製品であることがわかります。
次に「コア製品」が生まれるために、どんな技術力が必要なのか考えます。
ここでのコンピタンスは例として、
- 食材の目利き力
- 調理技術
- イタリア料理の知識
を挙げました。
どれも価値のある「コア製品」を作るために欠かせない技術力(コンピタンス)です。
そして最後に「コアコンピタンスの3つの条件」である、
- 広範かつ多様な市場に参入する可能性をもたらすものでなければならない
- 最終商品が顧客にもたらす価値に貢献するものでなければならない
- ライバルには模倣するのが難しいものでなければならない
に当てはまるものがあるか考えます。
その結果、店主の「調理技術」が、
- 店主の料理の腕前ならラーメン以外の飲食店も始めることができる
- 店主の料理の腕前によって食材の味を限界まで引き出している
- 店主の料理の腕前は長年の修行によるので簡単には真似できない
であるとすれば、それが「コア・コンピタンス」と特定できます。
この架空の老舗ラーメン店の店主が持つ「調理技術」は、複数の「コア製品」を生み出しています。そして特に全ての人気メニューに入っている「特製チャーシュー」の影響は大きいようです。
このように「コアコンピタンス」が特定できれば、今後の戦略に活かすことができます。
例えば、
- 多店舗展開する場合は調理技術の高い人材を雇う
- 3つのコア製品の味が変わらないように徹底する
- 特製チャーシューを活かした持ち帰りメニューや新商品を開発する
などです。
単なる「強み」ではなく、価値を生み出す「コアコンピタンス」や「コア製品」が何であるかを特定することで、大きく外さない戦略を考えることができます。