Excelを使ったプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)のやり方

Excelでプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントとは、バブルチャートを使って事業や製品を「花形」「金のなる木」「負け犬」「問題児」の4つのタイプに分類し、経営資源の配分を決めるための分析フレームワークです。「PPM(ピーピーエム)」や「BCG(ビーシージー)マトリックス」とも呼ばれます。

このプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントのバブルチャートは、エクセルなどの表計算ソフトで簡単に作ることができます。

Excelを使ったプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

エクセルでのプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)のやり方を説明すると、

  1. 市場規模のデータを集める
  2. 市場規模データを入力する
  3. 市場成長率を計算する
  4. 自社と他社トップの売上を入力する
  5. 市場シェアを計算する

です。

ここでは上記の手順をわかりやすく説明します。また説明で使用しているExcelファイルも、無料でダウンロードいただけます。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの概要

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(以下、PPM)とは、事業の状態を「花形」「金のなる木」「負け犬」「問題児」の4つのタイプに分類して、経営資源を再分配するための分析フレームワークです。

前提として「規模の経済」や「経験曲線効果」が働くことが想定されているため、製造業の分析に適している分析フレームワークといえます。

PPMには、BCGマトリックスと呼ばれるバブルチャートを使います。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

このBCGマトリックスのバブルチャートは、

  • 縦軸:市場成長率
  • 横軸:相対的市場シェア

を使います。

またこの表を4つに分割することで、

  • 花形
  • 金のなる木
  • 負け犬
  • 問題児

の4つに事業や製品を分類することができます。

それぞれについて、より詳しい情報はこちらの記事をご覧ください。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント花形・金のなる木・負け犬・問題児のプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とは?

このページでは、表計算ソフトでのBCGマトリックスの作成手順と、分析結果の考え方について解説します。

BCGマトリックスのExcel作成手順の説明

では早速、PPMのBCGマトリックスを作成していきましょう。

まずは無料のエクセルファイルをダウンロードしてください。登録不要でご利用いただけます(メールアドレスなど不要)。

PPM用テンプレート(無料:エクセル形式)

このテンプレートにある下記のような表を埋めれば、自動的にバブルチャートが完成します。

エクセルPPM

ステップ1
市場規模のデータを集める

まずは分析の対象となる、それぞれの事業の市場規模を探しましょう。

市場規模データの探し方ですが、

などがあります。

業界団体の調査データ」は、あなたの会社が所属している業界団体が公開している調査データです。業界団体に加盟していれば、会社に年に何回か業界機関紙が届いているかと思います。その紙面に、定期的に業界の市場規模の推移グラフが掲載されていることがあります。また業界団体に問い合わせることで、市場規模のデータを手に入れることができる可能性があります。

矢野経済研究所の無料公開データ」は、一番手っ取り早いものの、必ずしも全ての市場データが見つかるとは限りません。検索エンジンで「矢野経済研究所 〇〇市場」などで画像検索すれば、グラフが表示されることがあります。運良くデータが見つかれば、それを使うことができます。

経済産業省の統計データ」は、経産省が公開している統計データです。こちらも無料で利用することができますが、カテゴリが一般的なものになってしまうので、必ずしもあなたの会社の事業分類に当てはまるとは限りません。

日経BP記事検索サービス」は、有料の検索サービスです。経済学部や商学部の学生さんであれば、学校の図書館などで無料で使えるかもしれません。日経ビジネスなどに過去に掲載された記事を検索することができます。その中に、市場規模の推移グラフなどを見つけることができます。

SPEEDA」も、有料の調査データ検索サービスです。月に数十万円もするような料金ですが、大きな企業であれば契約しているかもしれません。一番使い勝手の良いデータが手に入る上、ライバル企業の売り上げなどのデータも見つかる可能性があります。しかし個人や中小企業だと、使えるチャンスがほとんどありません。

ステップ2
市場規模データを入力する

それぞれの事業の市場規模の推移データが見つかったら、今度はエクセルの表に入力していきましょう。

まずはデータ年数を入力します。

エクセルPPM:データ年数

3年分のデータから市場成長率を計算したい場合は「3」、5年分で計算したい場合は「5」などと入力してください。

そして各事業ごとの市場規模の数値を入力していきます。

エクセルPPM:市場規模の推移

この例では単位が「千円」となっています。つまり「¥11,200,000」というのは、千倍した「112億円」という意味になります。

ここで注意するのは、3年分でも5年分でも、最初と最後の年のデータがあれば市場成長率を計算できるということです。

もし3年分のデータで計算する場合は、直近の市場規模の数値(20×3年となっている方)と、3年前の市場規模の数値(20×1年となてっている方)を入力してください。(20×1年や20×3年という表記は、任意の西暦に変更してください。)

ステップ3
市場成長率を計算する

次は先ほど入力した市場規模の数値を使って、市場成長率を計算します。

エクセルの計算式は、このようになっています。

エクセルPPM:市場成長率の関数

3年間の初めと終わりの市場規模から、3年間の平均的な市場成長率を計算する式になっています。

この計算方法は「年平均成長率(CAGR)」と呼ばれるものですが、ここでは詳しい計算方法を割愛します。上記の画像の関数を参考に、CAGRを計算してみてください。

計算すると以下のように、それぞれの事業の市場全体の成長率が計算されます。

エクセルPPM:年平均成長率

ステップ4
自社と他社トップの売上を入力する

次に自社と、自社以外で市場シェアが一番大きい会社の売上を入力します。

エクセルPPM:自社と他社トップの売上

これらの情報が必要な理由は、最終的に「相対的市場シェア」を計算するためです。

まず自社の事業ごとの売上高はすぐにわかると思うので、とくに問題ないと思います。自社の売上高は、バブルチャートのバブルの円の大きさになります。

しかし難しいのは他社の売上の情報です。しかも自社を除くシェアがトップの会社の売上になります。

自社を除くシェアがトップの会社」というのは、

  1. 自社:20%
  2. 競合X社:18%
  3. 競合Y社:10%
  4. 競合Z社:7%

という状況であれば「競合X社」のことです。

もし、

  1. 競合Y社:20%
  2. 競合X社:18%
  3. 自社:10%
  4. 競合Z社:7%

であれば「競合Y社」のことです。

もちろん、上記のように各社の市場シェアが初めからわかっていれば、なにも苦労することはありません。以降のステップを飛ばして、いきなり「相対的市場シェア」を計算してしまえば終わりです。

しかし全ての事業で、競合のトップのシェアがわからないこともあります。

そういった時には、営業担当者の情報や販売個数、その他様々な情報を使って、売上高を推定してみてください。

また、競合企業が上場企業であれば「有価証券報告書(通称:有報)」という資料に、事業ごとの売り上げが掲載している可能性があります。上場企業であれば公式サイトの「IR情報」などのページから誰でもダウンロードできるはずなので、探してみてください。

ステップ5
市場シェアを計算する
今度は最初に調べた「市場規模」と、先ほど調べた「売上高」から「市場シェア」を計算します。

エクセルPPM:市場シェア

まずは自社の市場シェアから。

計算方法は、

エクセルPPM:自社の市場シェア

という風に、自社の売上高を市場規模で割ります。

他社トップの市場シェアも同様に、

エクセルPPM:他社トップの市場シェア

他社トップの売上高を市場規模で割ることで求めることができます。

ステップ6
相対的市場シェアを計算する

最後に「相対的市場シェア」を計算します。この相対的市場シェアという考え方は、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの中でも、特徴的な要素のひとつです。

エクセルPPM:相対的市場シェア

相対的市場シェアの計算方法は、

エクセルPPM:相対的市場シェアの計算方法

自社の市場シェアを、他社トップの市場シェアで割ることで計算できます。

ここまで入力できればBCGマトリックスのバブルチャートの完成です!

エクセルPPM:完成したバブルチャート

縦軸と横軸の考え方

ここまででExcelを使ったバブルチャートが完成したわけですが、「市場成長率」という縦軸と、「相対的市場シェア」という横軸について補足したいと思います。

市場成長率という縦軸

縦軸は市場成長率で、上に行くほど市場が急速に大きくなっています。

エクセルPPM:市場成長率の軸

今回のテンプレートでは、

  • 上限:30%
  • 下限:0%
  • 境界:15%

という設定にしています。

この「市場成長率」という軸は、

  • マトリクスの上半分:「花形」「問題児
  • マトリクスの下半分:「金のなる木」「負け犬

を分ける目安になります。

今回の例では、たまたま境界線を15%に設定していますが、これは業界によって大きく違います

誕生したばかりの成長著しい新しい業界で活躍する会社は、縦軸の上限や下限が高くなります。それに合わせて境界線の位置も高くなります。

例えば年々市場規模が倍になっているような業界でメインに戦っている企業は、縦軸の上限が100%とか150%になることもあります。逆に数パーセントのような低い成長率の事業は、存在していないかもしれません。

そういった場合には、縦軸の範囲が10〜150%で、境界が80%などに設定した方が収まりが良いと思います。

一方で、昔から存在している成熟した企業では、上限が最大でも10%程度になることもあります。

このように縦軸の上限と下限は、その企業が身を置いている主要な業界にも大きく左右されます。

ここで説明した縦軸の上限・下限・横軸との交点については、エクセルであれば「軸の書式設定」から変更できます。他の表計算ソフトでも、「軸のプロパティ」「軸の設定」「軸のオプション」などの項目から設定できるはずです。

相対的市場シェアという横軸

横軸は相対的市場シェアで、左に行くほど数値が高くなります。

エクセルPPM:相対的市場シェアの軸

相対的市場シェアは、先ほど説明したように「自社の市場シェア」を「自社を除く他社のトップの市場シェア」で割ることで計算することができます。

例えば市場シェアが、

  • 自社:他社トップ=50%:50%

であれば、相対的市場シェアは「1」ですし、

  • 自社:他社トップ=10%:40%

であれば、相対的市場シェアは「0.25」になります。

この「相対的市場シェア」という軸は、

  • マトリクスの左半分:「花形」「金のなる木
  • マトリクスの右半分:「問題児」「負け犬

を分ける目安になります。

今回の例では、

  • 上限:1.8
  • 下限:0.4
  • 境界:1.2

に設定していますが、こちらも業界や経営の考え方によって変わります。

相対的市場シェアが「1」というのは、自社と他社がほぼ同じシェアでトップ争いをしているという状況です。そしてよく見かける事例では、境界が「1」になっています。

ここで考えなければならないのは、

  • 他社より少しでも市場シェアで上回っていれば「花形」や「金のなる木」と認識する

ということが、妥当なのかということです。

この点については、筆者がビジネススクールに時代に、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)日本法人のシニア・パートナーの方に直接質問させていただく機会がありました。

その時には、

  • 「昔は『1』だったけど、最近はそれ以上の数値に設定することが多い。」

という回答をいただきました。

つまり境界の相対的市場シェアは「1」にする必要はなく、

  • どれくらい2位以下を突き放せば「花形」や「金のなる木」と考えるか

によって設定を変えても良いということです。

今回の設定では「1.2」としていますが、

  • 2位以下の競合他社のシェアを1.2倍以上突き放せば「花形」「金のなる木

という設定をしたことになります。

1位と2位の差がつきにくい業界であれば、相対的市場シェアの上限・下限・境界は小さくなると思います。逆に、1位が総取りしてしまうような業界であれば、それぞれを高く設定しても良いと思います。

ここで説明した横軸の上限・下限・横軸との交点についても、縦軸と同様にエクセルであれば「軸の書式設定」から変更できます。

補足

余談ですが、横軸は通常は右に行くほど数値が大きくなります。しかしPPMのBCGマトリックスでは、左に行くほど数値が大きくなります。

その点についても質問してみましたが「BCG創業者のヘンダーソン氏が、最初のメモ書きにそう描いたから」ということでした。

無料テンプレートのダウンロード

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントのテンプレートは、こちらからダウンロードできます。登録不要でご利用いただけます(メールアドレスなど不要)。

PPM用テンプレート(無料:エクセル形式)

  • プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント用テンプレート

が収録されています。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント関連記事

PPMについては、他の記事にもまとめているのでご覧ください。

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