PEST分析とは、1980年代に発展した定番の外部環境分析フレームワークです。
- 政治的要因(Political factors)
- 経済的要因(Economic factors)
- 社会的要因(Social factors)
- 技術的要因(Technological factors)
の4つの要因から、ビジネス環境への影響を考えます。「PEST」の読み方は「ペスト」です。
ここではPEST分析について、詳しくご紹介したいと思います。またPEST分析用テンプレート(パワーポイント形式、登録不要)も無料でダウンロード可能です。
PEST分析とは?
PEST分析は、
- Political factors(ポリティカル・ファクター)= 政治的要因
- Economic factors(エコノミック・ファクター)= 経済的要因
- Social factors(ソーシャル・ファクター)= 社会的要因
- Technological factors(テクノロジカル・ファクター)= 技術的要因
の4つの英語の頭文字を並べたもの(頭字語)で、読み方は「ペスト」です。
「PEST」という言葉自体は頭字語なので、単語としての意味はありません。「政治・経済・社会・技術」を略して「PEST(ペスト)」と呼んでいます。
ちなみに、
- Legal factors(リーガル・ファクター)= 法的要因
- Environmental factors(エンバイロメント・ファクター)= 環境的要因
の2つを加えた「PESTLE分析」というものもあります。こちらの読み方は「ペッソル」「ペスル」などになります。こちらも後ほど説明します。
政治的要因
政治的要因(Political factors、ポリティカル・ファクター)とは、政治情勢、法律、政策などによる影響です。
具体例としては、国の財政政策、新たな政策、条例の制定、政治家の交代などが挙げられます。
経済的要因
経済的要因(Economic factors、エコノミック・ファクター)とは、景気の良し悪し、金融政策などによる経済への影響です。
具体例としては、日銀の金融政策、バブル(とその崩壊)、特需、経済成長率の変化などが挙げられます。
社会的要因
社会的要因(Social factors、ソーシャル・ファクター)とは、人口動態、文化、国民のライフスタイルの変化による影響です。
具体例としては、人口の変化、出生率、価値観の変化、流行などが挙げられます。
テクノロジー(技術的要因)
技術的要因(Technological factors、テクノロジカル・ファクター)とは、技術や産業の発展による影響です。
具体例としては、新技術の普及、新しい手法の確立などが挙げられます。
その他の要因
これらの他にもイギリスでメジャーな「PESTLE分析」や、アメリカで2000年代半ばから使われるようになった「SPELIT分析」なども存在しています。
イギリスでメジャーな「PESTLE分析」は、PEST分析に下記の二つの要因を加えたものです。
- 法的要因(Legal factors):制度や法律などによる影響
- 環境的要因(Environmental factors):天候や気候の変化による影響
制度や法律の変更の多い業界では、法的要因を政治的要因に含めずに独立させて考えると分析しやすくなります。また天候や気候の変動が、ビジネスに強く影響する業界(例えば農林水産関係)などは、環境的要因も合わせて考える必要があります。
アメリカで使われている「SPELIT分析」は、PEST分析に法的要因と、異文化間要因(Inter-cultural factors)を加えたものです。様々な人種と文化が入り混じる、アメリカならではのフレームワークです。
- 最近大きな自然災害が起きた → 環境的要因を追加
- 新技術が普及しそうだけど法整備がまだ → 法的要因を追加
PEST分析のやり方
PEST分析では、ビジネスの外で起きている出来事をまとめる分析方法です。
自分たちだけではどうにも出来ないような変化や、ビジネスそのものを形作っている要因を洗い出します。
- マクロ環境を分析する
- 将来の大まかな方向性を想像する
- ミクロ環境を分析する
- 精度の高い将来の予測をする
世の中で起きている大きな流れに、自分たちのビジネスが流されないように対策を練ることが分析の目的です。
世の中には、「法律が壁なら、自分たちが変えてやろう!」というベンチャー企業やビジネスも存在します。そして実際に、法律が新たに作られるようなイノベーションも時々起こります。必ずしも全てがどうにも出来ない、というわけではありません。
PEST分析は一人で行うことも、複数人で行うことも可能です。
より深く分析を行う場合は、複数人で2度に分けることをおすすめします。ここでは複数人で2度に分けて、分析を行う手順をご紹介いたします。
使用するPEST分析テンプレートは、こちらからダウンロードできます。登録不要でご利用いただけます(メールアドレスなど不要)。
まずは分析するメンバー同士で、何に対するPEST分析なのかを確認します。
分析は「〇〇業界」などの一般的な業界を対象としたり、「〇〇事業」など自社の事業の範囲を対象とすることが多いかと思います。
他にも取引先や顧客を、分析対象とすることもあります。 ホワイトボードや模造紙にPESTの4つの枠を作って、思いつくままに付箋を貼ってみましょう。
付箋は「事実(裏付けあり)」と「意見や発想(裏付けなし)」で色を変えておくと、分析がしやすくなります。
上がってきた要因は、メンバーで手分けして調査をします。
- どのような経緯があったのか
- その出来事はどれくらいの確実なのか
- 情報源は確かなものなのか
- 統計データは存在していないか
- アンケート結果などは存在していないか
これらのことを行って、情報をより詳細なものにしていきます。
調査の結果を持ち寄って、前回の分析結果をより深いものにしましょう。
はじめに思っていたより影響が大きかったり、逆に影響が小さく予想されるかもしれません。
別のホワイトボードか模造紙を用意して、影響の大きさに応じて付箋を張り替えてみましょう。
影響の大きい要因を中心に、議論を進めてみましょう。
最後に議論の要点を、分析結果としてまとめましょう。
PEST分析の短所とその対応策
このフレームワークの短所は、
- 全ての要因を埋めたくなってしまい無駄に時間を消費する
- 情報が集まれば集まるほど「確実に起きる」と錯覚してしまう
などです。
他のフレームワークでも言えることですが、枠があるからといって無理に埋める必要はありません。逆に枠がないからといって、書いてはダメということでもありません。フレームワークの枠にとらわれすぎないように気をつけましょう。
また1回目のPEST分析で挙がった項目を調査する際に、調べれば調べるほど「確かな情報だ」「そうに違いない」と思い込んでしまうことがあります。
すでに起こっていることでも「事実」が異なる可能性はゼロではありません。ましてや将来に起こることは、確定ではないことを意識しておきましょう。
PEST分析の無料テンプレート
PEST分析テンプレートは、こちらからダウンロードできます。登録不要でご利用いただけます(メールアドレスなど不要)。
- PEST分析用テンプレート
- 影響の大きさマップ
が収録されています。