RFM分析とは、
- Recency(リーセンシー):新近性
- Frequency(フリークエンシー):頻度
- Monetary amount(マネタリー・アマウント):金額
の3つの要素で顧客の分析を行い、顧客のLTV(ライフタイムバリュー)を向上させるためのマーケティング手法です。
RFM分析ではR・F・Mの3つの要素をバブルチャートの軸に取ることで、
- 新規客:最近利用しているが利用頻度が低い顧客
- 常連客:最近も利用しているし利用頻度が高い顧客
- 離反客:昔はよく利用していたが最近は見かけない顧客
- 一時客:利用頻度が低く最近は見かけない顧客
という4つのタイプに顧客を分類することができます。
実際のRFM分析は、蓄積された顧客データをエクセルなどの表計算ソフトなどで処理することで行います。
ここではRFM分析と、エクセルでRFM分析を行う方法をわかりやすく解説します。また説明で使用しているExcelファイルも、無料でダウンロードいただけます。
RFM分析とは?
RFM分析とは「R」「F」「M」の頭文字の由来でもある、
- Recency(リーセンシー、新近性)
- Frequency(フリークエンシー、頻度)
- Monetary amount(マネタリー・アマウント、金額)
について顧客ごとのデータを集計して、バブルチャートなどで分析する手法です。
RFM分析の目的は、
- 顧客のLTV(ライフタイムバリュー)を最大化させること
です。
この顧客のLTV(ライフタイムバリュー)とは、
- 特定の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の合計金額の現在価値
のことで、製品やサービスを、
- より長い期間
- より多い頻度
- より高い金額
で利用してもらうことでLTV(ライフタイムバリュー)を向上させることができます。
そのためには、「RFM分析」を行って、個々の顧客の購買行動を把握する必要があります。
一般的にRFM分析のバブルチャートでは、
- 縦軸:Frequency(頻度)
- 横軸:Recency(親近性)
- バブルの大きさ:Monetary amount(金額)
に設定されることが多いようです。
Recency:新近性
バブルチャートの横軸は、
- Recency(リーセンシー、新近性)
になります。
この新近性(しんきんせい)は、
- その顧客の最新の利用日がいかに最近かを表す指標
です。
新近性の指す内容は業態によって異なりますが、
- 小売店:最新の購買日時
- サービス業:最新のサービス利用日時
- アプリ:最新のアプリ使用日時
などが該当します。
新近性は、現時点から最新の利用日時が近ければ近いほどスコアが高くなり、逆に遠ければスコアが低くなります。
Frequency:頻度
バブルチャートの縦軸は、
- Frequency(フリークエンシー、頻度)
になります。
この頻度は、
- その顧客がいかに頻繁に製品やサービスを利用しているかを示す指標
です。
具体的には、
- 小売店:購買頻度
- サービス業:サービス利用頻度
- アプリ:アプリ使用頻度
などが該当します。
頻度を測るためには、過去の利用日時を一定の期間で区切って「週に1度」「月に1度」「3ヶ月に1度」「半年に1度」「1年に1度」などのように記録する必要があります。
顧客の利用頻度が高ければ高いほど頻度のスコアは高くなり、頻度が低ければスコアも低くなります。
この頻度を算出するときに注意しなければならないのは、
- 直近の利用日以前の利用記録で平均的な来店頻度を計算する
ということです。
例えばある顧客が、
- 来店日:1月1日(初来店)、1月8日、1月15日(直近の来店日)
- RFM分析の実行日時 3月31日
だったとします。
もし直近の来店日である1月15日を基準として、来店頻度を計算すれば「週に1度(1月1日〜1月15日の間に3回来店)」になります。しかし3月31日を基準に計算をしてしまうと、「月に1度(1月1日〜3月31日の間に3回来店)」に分類されてしまいます。
このように、頻度の計算は直近の利用日を基準に計算する必要があります。
Monetary amount:金額
バブルチャートの円の大きさは、
- Monetary amount(マネタリー・アマウント、金額)
です。
文字通り「Monetary(金銭的な)」「Amount(量)」ということで、金額の大きさを表しています。ちなみに「Monetary(金銭的な)」だけだと何のことだかわからなくなってしまうので、「Amount(量)」まで含めるのが正しい書き方です。
この金額は、
- その顧客がこれまでに支払った累計金額
のことで、金額が大きいほどバブルチャートの円のサイズも大きくなります。
エクセルでのRFM分析のやり方
バブルチャートの要素を理解したので、ここからは実際に表計算ソフトのエクセルを使ってRFM分析のバブルチャートを作る手順をご紹介いたします。
今回使用するRFM分析のエクセルテンプレートは、こちらからダウンロードしてください。
まずは顧客データの収集を行いましょう。
少なくとも顧客ごとに、
- 利用履歴(日時)
- 利用金額
を記録しておく必要があります。
記録をするためには、POSレジの導入やフリークエンシープログラムへの実施を行います。
参考 販売時点情報管理(POS)ウィキペディア
集めた情報は、エクセルやデータベースソフトなどで管理を行います。
集めた顧客データは、「R」「F」「M」のそれぞれのスコアに変換すると扱いやすくなります。
例えば、
R:新近性 | F:頻度 | M:累計額 | スコア |
3日以内 | 週に数回 | 30万円以上 | 6 |
1週間以内 | 週に1度 | 10万円以上 | 5 |
1ヶ月以内 | 月に1度 | 5万円以上 | 4 |
3ヶ月以内 | 3ヶ月に1度 | 1万円以上 | 3 |
半年以内 | 半年に1度 | 5000円以上 | 2 |
1年以内 | 1年に1度 | 5000円未満 | 1 |
などのように、スコアリングを行います。
なお上記のスコア表はあくまでサンプルです。それぞれの業種や業態に合わせて、オリジナルのスコア表を作ってみてください。
集めた顧客データを「R」「F」「M」のに変換できたら、今度はそれをエクセルなどの表計算ソフトに取り込んでみましょう。
先ほどダウンロードしていただいたRFM分析用テンプレートに顧客のデータを貼り付けると、自動的にバブルチャートが生成されます。
また、このエクセルテンプレートでは、4タイプの顧客分類も自動的に表示されるようになっています。
サンプルでは30名の顧客でバブルチャートを作っていますが、それ以上の人数でもバブルチャートを作ることができます。全ての顧客を分析しなくても、数十人〜数百人のデータを分析すれば、マーケティングの施策を考えるには十分です。
もし数千人単位の顧客を分析するのであれば、専用のソフトウェアを使う必要があります。
ここまでくれば、どのタイプの顧客がどれくらい存在しているのか把握することができます。
詳しい分析のやり方については、この後説明します。
RFM分析の顧客4タイプ
RFM分析のバブルチャートを作ると、顧客を4つのタイプに分類することができます。
それぞれ、
- 新規客:最近利用しているが利用頻度が低い顧客
- 常連客:最近も利用しているし利用頻度が高い顧客
- 離反客:昔はよく利用していたが最近は見かけない顧客
- 一時客:利用頻度が低く最近は見かけない顧客
という状態の顧客です。
ちなみに常連客のことを「優良顧客」、一時客のことを「非優良顧客」などと表現する場合もあるようですが、その顧客が優良であるかどうかとは直接関係しないため、ここではそのような表現を使いません。(そもそも顧客を優良・非優良などと区別するのも、売り手の傲慢さが滲み出ている感じがするので、筆者はあまり好きではありません。)
新規客
RFM分析バブルチャートの右下に位置するのが、
- 新規客:最近利用しているが利用頻度が低い顧客
です。
もっとも最近に製品やサービスを利用した顧客が、新規客の象限に分類されます。どんな顧客もこの場所からスタートするため、この時点での親近性や頻度に敏感になる必要はありません。
逆にここで気にしなければならないのが、
- 金額
- 顧客の数
です。
「金額」はバブルの円の大きさですが、適切な金額であるかどうかを確認します。どのような製品やサービスでも、初回に顧客が支払う平均的な客単価があるはずです。その値を基準として、新規客の使った金額が多いのか少ないかを判断します。
例えば、セールの直後などにRFM分析を行えば、客単価がいつもより高く、一定期間を過ぎた後には「一時客」がたくさん発生するかもしれません。これはセール品目的で一度にたくさん購入し、セールが終わった後には顧客が戻ってこなくなっているような状態です。
しかしセールなど何もしていないのに、急に客単価が高くなっていたり、逆に客単価が著しく低くなっている場合には、その理由を探らなければなりません。
また新規客に分類される「顧客の数」についても、推移を確認する必要があります。先ほどの例のようにセールなどを行えば、一時的に急増するでしょうし、何もしてなければ横ばいかもしれません。また季節性のある製品やサービスであれば、該当する時期に正常に増えているのか減っているのかを確認する必要があります。
常連客
RFM分析バブルチャートの右上に位置するのが、
- 常連客:最近も利用しているし利用頻度が高い顧客
です。
新規客がしっかりと製品やサービスに定着した場合や、一時客だった顧客の利用頻度が向上した場合に「常連客」が増えるようになります。
常連客が全体に占める割合は少ないものの、長期的な売り上げに対する貢献が高いことがほとんどです。これは他の顧客と比べて、常連客のLTV(ライフタイムバリュー)が長いためです。
ここで注目すべきは、
- 金額
- 定着率(= 常連客数 ÷ 新規客数)
の2点です。
金額については、新規客と同様に適切な金額であるかどうかを確認します。常連客として来店頻度が高まれば、それなりに累計金額も積み重なるはずです。そのため一般的にはバブルのサイズ(金額)が、新規客よりも常連客の方が大きくなるはずです。
そしてもう一つは常連客としての定着率です。どの顧客も最初は新規客の状態ですが、常連客の数と比較することで、どれくらいの顧客が常連客として定着しているかを計算することができます。定着率の計算は常連客の数を新規客の数で割ることで計算できます。
もし定期的に行うRFM分析で定着率が低下してれば、新規顧客の減少だけでは説明できない、何か別の理由が見つかるはずです。
離反客
RFM分析バブルチャートの左上に位置するのが、
- 離反客:昔はよく利用していたが最近は見かけない顧客
です。
離反客は、過去に常連客だったものの、別の製品やサービスに切り替えたために利用しなくなった顧客などが分類されます。
ここで注意する必要があるのは、
- 来店頻度が低いほど離反するタイミングの時差が大きい
- 以前のRFM分析の結果と比較しなければ判断が難しい
ということです。
簡単に言えば、来店頻度が月に1度の顧客は、直近の利用から1ヶ月以上経たないと離反客になったかどうかを判断することができません。
逆に言えば、離反客に分類されたからといっても、たまたま利用の間隔が空いているだけの可能性もあるということです。
その辺りを判断するためには、以前のRFM分析の結果と一緒に状況を分析する必要があります。
一時客
RFM分析バブルチャートの左下に位置するのが、
- 一時客:利用頻度が低く最近は見かけない顧客
です。
一時客は、何かのきっかけで製品やサービスを一度は利用したものの、その後の繰り返しの購買には至っていないような顧客です。
この一時客は先ほどの離反客と同様に、たまたまその顧客の利用頻度の間隔が長いだけなのか、完全に顧客が離れてしまっているのかを判断するのが難しいのが特徴です。
RFM分析のマーケティング施策への活用
RFMのバブルチャートによって、顧客を4つのタイプに分類できたら、今度はそれぞれのタイプにおいてどのようにLTV(ライフタイムバリュー)を向上させるかを考えます。
一般的には、
- 新規客を常連客に育てる
- 離反客を常連客に戻す
- 一時客に再来店を促す
- アップセルやクロスセルを実施する
の4つの基本的なマーケティング施策を考えることができます。
新規客を常連客に育てる
製品やサービスを利用してくれた新規客を常連客に引き上げるには、
- 再び同じ製品やサービスを利用する理由を作る
が必要になります。
具体的な施策としては、
- 繰り返し利用が前提の製品やサービスとして設計する
- フリークエンシープログラムを採用する
などが考えられます。
例えば、本体価格が安く消耗品の価格が高い髭剃りやプリンターなどは、繰り返し購入を前提とした設計の製品です。また一定の期間や回数を超えなければ効果が得られにくい、ダイエットプログラム、エステ、サプリメント、英会話、スポーツジム、なども同様に繰り返しが前提になっています。他にも洗剤やシャンプーの詰め替え用商品も、繰り返し購入を促す製品設計になっています。
また製品やサービス単位ではなく、店舗やブランド単位での利用頻度の向上を目指す場合は、フリークエンシープログラムが有効です。
フリークエンシープログラムとは、
- 商品やサービスの利用頻度に応じて顧客に特典を与える仕組み
であり、
- 航空会社のマイレージプログラム
- ポイントカードによるキャッシュバック
- スタンプカードによる特典提供
などが該当します。このような施策を行うことで、顧客の利用頻度を高めることができます。
離反客を常連客に戻す
一度離れてしまった顧客を元に戻すのは難しいですが、そのまま放っておくこともできません。
離反客を常連客に戻すためには、
- 離反した理由を突き止める
ことが重要です。
離反してしまう一般的な理由としては、
- 製品やサービスに不満がある
- 競合他社の製品やサービスの方が優れている
- 顧客のライフスタイル変化で不要になった
などが考えられます。
特に上の2つについては事業を進めるにあたって致命的なので、早急に調査(マーケティングリサーチ)を実施する必要があります。
マーケティングリサーチには、
- 質問法:調査対象に質問することで情報を集める
- 観察法:調査対象の行動や反応を観察することで情報を集める
- 実験法:実験によって特定の因果関係を調べる
- フォーカスグループ:調査対象を数人集めて討論させて情報を引き出す
- 行動データ:調査対象の購買記録や行動に関する情報を集める
などの方法があるので、製品やサービスの性質に合わせて適切な方法を選ぶ必要があります。
一時客に再来店を促す
一度は新規客として製品やサービスを利用してもらったものの、そのあとが続いていない一時客には、
- 再び製品やサービスを利用するためのキッカケを作る
ことが必要になります。
この「キッカケ作り」には、
- イベントへの招待
- ダイレクトメール
- 電話での営業
などなど様々な手法がありますが、そもそも、
- 顧客への連絡手段
を確保していなければ実現が難しくなります。
そのため、いかに最初の段階で顧客への連絡手段を確保するか考えなければなりません。
例えば、先ほど紹介したフリークエンシープログラムへの登録などは、顧客にとっても心理的ハードルが比較的低い手法です。他にも、スマートフォンのアプリの登録なども、顧客との連絡手段を確保するために有効です。
アップセルやクロスセルを実施する
ここまで4つの顧客タイプの状態を変化させる施策を紹介しましたが、全ての顧客タイプに適用できるのが「金額」を高めるためのマーケティング施策です。
具体的な手法としては、
- アップセル:顧客に上位の商品をすすめること
- クロスセル:顧客に関連する商品をすすめること
などがあります。
これをうまく実現するには、
- 累計金額の大きい顧客の購買履歴を分析する
ことが必要です。
累計金額が大きい顧客の購買履歴を確認すれば、
- どんな製品やサービスを合わせ買いしているのか
- どんな製品やサービスの利用が上位商品の利用につながるのか
などが見えてきます。
それらの情報を参考に、購買金額の低い顧客に対してアプローチをすれば、アップセルやクロスセルが成功する可能性が高くなります。
RFM分析のExcel用無料テンプレート
今回の例で使用したRFM分析のエクセルテンプレートは、こちらからダウンロードできます。もちろん登録不要でご利用いただけます(メールアドレスなど不要)。
- RFM分析用テンプレート
が収録されています。