ダイナミック・ケイパビリティとは?経営資源を統合・構築・再構成する適応力

だいぞう

ダイナミック・ケイパビリティとは、急速なビジネス環境の変化に対して、経営資源を素早く「統合」「構築」「再構成」する「適応力」のことです。

企業は、

  1. 従業員が素早く学び、新しい資産を構築する能力
  2. 「ケイパビリティ」「技術」「顧客からのフィードバック」などの戦略的資産を統合する能力
  3. 価値が低くなった現在の経営資源の変換や再利用をする能力

の3段階のステージを経ることで、急速な環境変化に対応する「敏捷性」を手に入れることができます。

ここではダイナミック・ケイパビリティについて、わかりやすく解説します。

ダイナミック・ケイパビリティとは?

「ダイナミック・ケイパビリティ」という考え方は、1997年に論文誌「Strategic Management Journal(戦略経営ジャーナル)Vol. 18:7」に掲載されたティース教授らによる論文「Dynamic Capabilities and Strategic Management(ダイナミック・ケイパビリティと戦略経営)」によって広まりました。

その論文での定義は、

We define dynamic capabilities as the firm’s ability to integrate, build, and reconfigure internal and external competences to address rapidly changing environments.

私たちはダイナミック・ケイパビリティを「急速に変化する環境に対応するため、社内外の技能を統合・構築・再構成する企業の能力」と定義する。

論文 Dynamic Capabilities and Strategic Management より引用・和訳

となっています。

わかりやすく言えば、

  • 世の中の変化に合わせて社内・社外にある能力をうまく組み合わせることができる会社

は、ダイナミック・ケイパビリティを持つ会社、と言えます。

補足

論文「Dynamic Capabilities and Strategic Management(ダイナミック・ケイパビリティと戦略経営)」は、デビッド・ティース教授、ゲイリー・ピサノ教授、エイミー・シュエン教授によって書かれました。

論文「Dynamic Capabilities and Strategic Management(ダイナミック・ケイパビリティと戦略経営)」

この論文は、下記リンクから購入することができます。


参考
Dynamic Capabilities and Strategic ManagementJSTOR

動的な(ダイナミックな)ケイパビリティ

ケイパビリティは、

  • ゼロ次一般ケイパビリティ(Zero-order Ordinary Capability)
  • 高次動的ケイパビリティ(High-order Dynamic Capability)

の2つに分類できます。

ゼロ次一般ケイパビリティ」は、現在の経営戦略を担っている日々のオペレーションのための「実行力」です

この通常のケイパビリティについては、こちらの記事をご覧ください。

ケイパビリティとは?意味を具体例と図解でわかりやすく解説

一方、「高次動的ケイパビリティ」はダイナミック・ケイパビリティを指します。

前述したように、高次動的ケイパビリティ(=ダイナミック・ケイパビリティ)は、

  1. 従業員が素早く学び、新しい資産を構築する能力
  2. 「ケイパビリティ」「技術」「顧客からのフィードバック」などの戦略的資産を統合する能力
  3. 価値が低くなった現在の経営資源の変換や再利用をする能力

を伴った「適応力」になります。

従業員は、ビジネス環境の変化をいち早く感じ取れる立場にあります。会社が持つ経営資源はもちろんのこと、取引先などのパートナーが持つ資源について学ぶことで、新しい資産を構築することができるようになります。

また新しい資産を構築しても、それぞれがバラバラに存在していては意味がありません。既存の資産も新しく構築した資産も、組み合わせて統合することでさらなる価値を持ちます。外部環境の変化に合った形で、様々な資産を統合することで、企業の競争力が高まります。

もう一つ忘れてならないのが、価値を失ってきた経営資源の扱いについてです。会社の資産が昔のような価値がなくなったとしても、変換や再利用を検討することができます。競争力がなくなった人員やノウハウも、別の事業で使えば価値を取り戻すかもしれません。価値が落ちた経営資源も、変化に応じて有効に活用する必要があります。

ダイナミック・ケイパビリティの3つの活動

2007年にティース教授は、ダイナミック・ケイパビリティは3つの活動から構成されることを説明しました。

その活動は、

  1. 感知:センシング
  2. 捕捉:シージング
  3. 変革:トランスフォーミング

の3つです。

感知(センシング)」の活動では、環境変化による新しい事業機会を探し、フィルタリングして分析を行います。具体的には社内で研究開発を行ったり、マーケティング調査を行ったりします。この活動は、経営者層によるビジネス環境に対する洞察力が強く影響する活動です。

捕捉(シージング)」の活動では、先ほどのセンシングで見つけた事業機会に対して、それに適した組織の最適化を行います。ビジネスモデルや人事評価の基準を変更するなど、変えるべきことと変えないことを経営者層が決めます。

変革(トランスフォーミング)」の活動では、社内にある様々な資産を再構築・再構成します。組織構造を組み替えたり、有形・無形の資産が有効に使えるように社内ルールを変えたりなど、企業を変化に対応できる状態へと最適化します。

おすすめの書籍

ダイナミック・ケイパビリティについて、詳しく学びたい方はこちらの書籍が参考になるかもしれません。

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