SWOT分析とは、戦略の目標に対する状況を強み・弱み・機会・脅威の4つで整理するための状況分析フレームワークです。「SWOT」の読み方は「スウォット」「スオット」などです。
SWOT分析には、上記の「SWOTマトリクス」が使われます。分析の対象は個人・組織を問わず、幅広く使われています。適用範囲もマーケティングだけでなく、自己・自社分析や目標の評価などにも使うことができます。
またSWOT分析を発展させた、戦略を考えるための「クロスSWOT分析」というものもあります。
ここではSWOT分析について、詳しくご紹介したいと思います。
SWOT分析とは
SWOT分析は、
- Strengths(ストレングス)= 強み
- Weaknesses(ウィークネシーズ)= 弱み
- Opportunities(オポチュニティーズ)= 機会
- Threats(スレッツ)= 脅威
の4つの英語の頭文字を並べたもの(頭字語)で、読み方は「スウォット」「スオット」です。でもどちらかと言うと「スウォット」の方がよく耳にする気がします。
「SWOT」という言葉自体は頭字語なので、単語としての意味はありません。「強み・弱み・機会・脅威」を略して「SWOT(スウォット)」と呼んでいます。
SWOT分析のマトリクス
SWOT分析の4つの要素は2つの軸で分類されます。
- 「目標達成の助けになる」または「目標達成のさまたげになる」という軸
- 「内部の要因」または「外部の要因」という軸
これらを組み合わせて、4つの要素を生み出します。
- 目標達成の助けになる × 内部の要因 = 強み(Strengths)
- 目標達成のさまたげになる × 内部の要因 = 弱み(Weaknesses)
- 目標達成の助けになる × 外部の要因 = 機会(Opportunities)
- 目標達成のさまたげになる × 外部の要因 = 脅威(Threats)
図で表すと、以下のようになります。
競合より優れている=強み、ではありません。強みも弱みも、目標に対する影響を表しています。ビジネス書や解説サイトによっては、単純に「プラス/マイナスの要因」や「ポジティブ/ネガティブな要因」などとしか書かれていないので注意してください。
もし競合他社より内部要因が優れているかどうかを判断したい場合は、VRIO分析を使います。
目標設定の重要性
全ての項目が「目標達成の〜」という基準で判断するので、「目標」がわかっていないと分析ができません。そのためには、事前に目標がなんなのかを確認する必要があります。
例えば、
- 就職活動の目標:〇〇業界の企業に入社すること
- マーケティング活動の目標:〇〇の製品カテゴリで〇〇社から市場シェアを奪う
- 事業戦略の目標:製品〇〇の生産コストを10%引き下げる
などです。
このような目標に対して、SWOT分析で評価を行なっていきます。
SWOT分析の欠点
目標設定が重要な一方で、これがSWOT分析の欠点にもなります。
SWOT分析の欠点とは、
- 目標が正しいかどうかSWOT分析では評価できない
ということです。
そもそもの目標が間違っていたら、SWOT分析をやる意味がなくなってしまいます。
間違った目標を設定して、間違った方向に向かってしまえば、いくらSWOT分析自体を上手くやっても良い結果に繋がりません。
間違った目標を設定していても、目標に近づいていれば順調だと錯覚してしまいます。目標が正しくない=達成できない、とは限りません。
そうならないためにも、折に触れて戦略の目標が正しいのか確認することが必要です。
SWOT分析の要素とその例
ここではSWOTのそれぞれの項目で、企業と個人の場合の簡単な説明と例を挙げます。
前述したように例に挙げるそれぞれの項目は「目標」によって内容が大きく違ってきます。あくまで一例として読んでください。
強み
強み(Strengths)は、
- 企業が持つ資源で事業やマーケティングの目標を達成する助けになるもの
- 自分自身の長所や特性で、目標達成に役立つもの
です。
例えば企業であれば、
- 強力な営業部隊
- ブランドの知名度
などです。個人であれば、
- 誰とでもすぐ打ち解けられる社交的な性格
- 失敗しても諦めずに工夫しようとする姿勢
などです。
弱み
弱み(Weaknesses)は、
- 企業が持つ資源で事業やマーケティングの目標を達成する妨げになるもの
- 自分自身の短所や特性で、目標達成の妨げになるもの
です。
例えば企業であれば、
- 設備の老朽化
- 職人の高齢化
などです。個人であれば、
- 夢中になると周りが見えなくなる性格
- 頑固でこだわりが強い性格
などです。
機会
機会(Opportunities)は、
- ビジネスを取り巻く環境で事業やマーケティングの目標を達成する助けになるもの
- 世の中の変化や動きで、目標達成に役立つもの
です。
例えば企業であれば、
- ターゲット層の増加
- 規制緩和
などです。個人であれば、
- 目指している分野の市場が拡大している
- 取得した資格の社会的地位が高まってきている
などです。
脅威
脅威(Threats)は、
- ビジネスを取り巻く環境で事業やマーケティングの目標を達成する妨げになるもの
- 世の中の変化や動きで、目標達成の妨げになるもの
です。
例えば企業であれば、
- 安価な輸入品の増加
- 大手企業の市場参入
などです。個人であれば、
- 目指している職種の求人倍率が低い
- 技術革新で作業が機械に代替され始めている
などです。
4つの項目についてより詳しい内容は、こちらの記事もご覧ください。
「強み」と「弱み」はSWOT分析での意味の他に、VRIO分析での意味のものも存在しています。ざっくり比較してみると、
- SWOT分析の強み弱み = 経営資源が目標達成の助けになるかどうか
- VRIO分析の強み弱み = 経営資源が機会や脅威に適応できるかどうか
となります。詳しくはこちらの記事もご覧ください。
SWOT分析の歴史
SWOT分析のベースとなった分析フレームワークは、1960〜70年代に生まれたと言われています。そのフレームワークとはSWOT分析の生みの親と呼ばれているアルバート・ハンフリー氏のSOFT(ソフト)分析です。
ちなみにハンフリー氏は自らをSWOT分析の生みの親とは認めていないようですが、SWOT分析という手法の開発に関わりがあったことは間違いなさそうです。(SOFT分析については、この後詳しく説明します。)
その後もSWOT分析は、フレームワークのわかりやすさと使いやすさで広く普及しました。戦略を検討するための「クロスSWOT分析(TOWSマトリックス、ハインツ・ワイリック教授、1982年)」なども生まれ、今でも様々な場面で使われいます。
余談ですが、バリューチェーン(価値連鎖)でおなじみのマイケル・ポーター教授は、大学の授業でSWOT分析が使いにくいため「ファイブフォース分析」を考案したとインタビューで語っています。
SWOT分析の原点:SOFT(ソフト)分析の誕生
先ほどご紹介したSWOT分析の原点「SOFT(ソフト)分析」について、もう少し詳しく解説します。
このSOFT分析についての詳細は、ハンフリー氏が所属していたスタンフォード研究所 (スタンフォード大学が1920年代に設立した研究機関)のOBOG向け会報(2005年12月号)に掲載されました。この会報については下記リンクからPDFファイルで読むことができます。
参考
SRI Alumni Newsletter, December 2005(PDF)SRI International
よく知られているSWOT分析は、1960〜70年代にかけてアメリカのフォーチュン500 (全米上位500社ランキング)の企業を研究するために生まれた分析手法です。
その前身となったのが、このSOFT分析と呼ばれる分析フレームワークです。SOFT分析は後に「SWOT分析」と名前を変えて親しまれるようになりました。
SOFTマトリックス:SWOTマトリクスのベース
SOFT分析は「良いこと・悪いこと」という軸と、「現在・将来」という軸の2つの軸で4つの事象に物事を分類します。
その4つの軸を表にしたものが「SOFTマトリクス」です。
SOFTマトリクスを使うことで、
- 現在起こっている × 良いこと = 良好(Satisfactory)
- 将来起こる × 良いこと = 機会(Opportunity)
- 現在起こっている × 悪いこと = 欠点(Fault)
- 将来起こる × 悪いこと = 脅威(Threat)
という4つの要素に分けることができます。
SOFT分析のやり方
SOFT分析の進め方については、先ほどご紹介したスタンフォード研究所の会報で説明されています。
大まかな流れとしては、
- SOFTマトリクスと6つの課題カテゴリで課題を洗い出す
- 目標を元に短期・中長期で課題解決の優先度を決める
- 課題解決のアクションプランを作って実行する
になります。
具体的には、
- 4つの問いに答えて企業経営の課題を洗い出す
- 現在起こっている良いことは何か?(良好なこと)
- 将来起こりうる良いことは何か?(これから得られる機会)
- 現在起こっている悪いことは何か?(欠点であること)
- 将来起こりうる悪いことは何か?(これから直面する脅威)
- 洗い出した課題を6つのカテゴリに分ける
- 製品(Product)
- プロセス(Process)
- 顧客(Customer)
- 流通(Distribution)
- 財務(Finance)
- 経営管理(Administration)
- 目標と照らし合わせて短期・中長期の課題を優先度が高い順に並べ替える
- 短期的に解決の優先度が高い課題の一覧
- 中長期的に解決の優先度が高い課題の一覧
- アクションプランを作る
- 「各カテゴリの課題に対してチームは何をするべきか?(What shall the team do about the issues in each of these categories?)」を考える
- SWOT(SOFT)から始まる17ステップの計画プロセスを実行する
と分けられます。
ちなみに最後のアクションプランを作るための17ステップについて、詳細は明かされていません。
SOFT分析の目的とメリット
SOFT分析を行う目的としては、経営課題を解決するためのアクションプランを作って実行することです。
フレームワークは「現在」と「将来」の「良いこと」と「悪いこと」ということで、非常にシンプルに作られています。そのため社内で聞き取り調査などを行う際には、どんな立場にあっても答えやすそうです。
ポイントとしては、4つの事象に分類することより、課題を6つのカテゴリに分けることにあるのかもしれません。6つのカテゴリのうち、課題が多くあるカテゴリについては経営的に弱い部分だと判断できます。
そしてアクションプランに落とし込むために、課題に短期・中長期で優先順位をつけることも重要です。多くの課題があるときには、どれから手をつけて良いのか迷うものです。しかしカテゴリごとに取り掛かるべき課題の優先順位があれば、経営判断もしやすくなります。
SWOT分析に対する批判
ファンも多いSWOT分析ですが、一方で「SWOT分析は使い物にならない」という批判もあります。
過去にSWOT分析を使った企業を研究して、
- SWOT分析は企業に悪い影響を与える
- SWOT分析の結果が最終的な戦略の策定に使用されない
などの結論に至った研究者もいるほどです(Hill and Westbrook, 1997)。
SWOT分析が上手く使えない理由としては、
- 目標が明確でないまま分析をした
- 分析のタイミングが適していなかった
などが挙げられます。
SWOT分析のやり方とテンプレート
SWOT分析を意味のあるものにするためには、ちょっとしたコツがあります。
SWOT分析のやり方は、
- 分析メンバーを集める
- 目標を確認する
- 4つの要素を洗い出す
- 発想から行動を決める
- 行動の担当者と期限を決める
です。
下記の記事では、こちらの手順をわかりやすく説明します。またSWOT分析用の無料のテンプレート(パワーポイント形式、登録不要)もダウンロードできます。