粗利率(売上高総利益率)の相互比較:2つの会社
相互比較による粗利率(売上高総利益率)の分析は、
- 競合他社との比較:同じ業界・規模・業態の競合他社との比較
- ベンチマーキング:同じ業界の優良企業やトップ企業との比較
- ビジネスモデル比較:同じ業界でビジネスモデルの異なる他社との比較
というように比較対象を変えて数値を比較します。
ここでは例として、
- 同業界で同業態の競合他社との比較
で説明します。
競合他社の財務データの入手方法については、こちらの記事をご覧ください。
競合と売上規模が同じなのに粗利率が良い(or 悪い)場合
売上規模は競合他社と変わらないのに、競合他社よりも売上高総利益率(粗利率)が高い場合は、
- 競合他社よりも原材料の調達能力が高い
- 競合他社よりも生産効率が高い
- 競合他社よりも粗利率の高い製品を取り扱っている
などの原因が考えられます。
逆に、競合他社よりも売上高総利益率(粗利率)が低い場合は、
- 競合他社よりも原材料の調達能力が低い
- 競合他社よりも生産効率が低い
- 競合他社よりも粗利率の低い製品を取り扱っている
ことなどが考えられます。
このように競合他社と売上高が同じ規模でも、粗利率(売上高総利益率)が違うのは、ほとんどが内部的な要因が理由になります。
特に、
- 安くて品質の良い原材料を手に入れる
- 原材料を効率的に利用して製品を生産する
- 粗利率の高い製品やサービスを取り扱う
といった内部的な経営努力で、競合他社に差をつけることができます。
競合と売上原価は同じなのに粗利率が良い(or 悪い)場合
売上原価のボリュームは競合他社とほとんど変わらないのに、競合他社よりも売上高総利益率(粗利率)が高い場合は、
- 競合他社よりも値引やリベートに頼っていない
- ブランド力や機能の違いによって高い価格を維持できている
などの原因が考えられます。
逆に、競合他社よりも売上高総利益率(粗利率)が低い場合は、
- 競合他社よりも値引やリベートに頼っている
- 価格以外の競争力が無く価格勝負になっている
ことなどが考えられます。
値引やリベートをすると会計上は売上から差し引かれてしまうので、同じ量(同じ売上原価)を売ったとしても売り上げに差が出てしまいます。
ブランド力や機能面での差別化ができていなければ、価格で差別化することしかできず、結果的に値引やリベートに依存する経営体質になってしまうかもしれません。
このような状況が顕著に現れる例としては、「ブランド品メーカー」と「下請けメーカー」です。
これらの会社が同じ品質の革のバッグを作って売ったとしたら、ブランド力を持っているブランド品メーカーの方が製品を高く売ることができます。
もちろんブランド品メーカーは、そのブランド力を維持するための販売促進活動に大きな投資を行っています。しかし、販促活動のコストは売上原価ではないため、粗利率(売上高総利益率)に大きな差として現れます。
競合と売上総利益が同じなのに粗利率が良い(or 悪い)場合
売上総利益(粗利)のボリュームは競合他社とほとんど変わらないのに、競合他社よりも売上高総利益率(粗利率)が高い場合は、
- 競合他社よりも粗利率の高い製品やサービスの販売に絞っている
- 競合他社よりも値引やリベートの必要のない製品やサービスの販売に絞っている
などの原因が考えられます。
逆に、競合他社よりも売上高総利益率(粗利率)が低い場合は、
- 競合他社のラインナップに加えて粗利率の低い製品やサービスを販売している
- 競合他社のラインナップに加えて値引やリベートが必要な製品やサービスを取り扱っている
ことなどが考えられます。
競合他社と同じ粗利のボリュームでも売上高に差が出るのは、
- 粗利率の低い製品やサービス
- 値引やリベートの取り扱い
が異なる可能性があるので、競合他社の調査を行うことが重要になります。
粗利率の低い製品やサービスがあるということは、単に非効率な販売を行っていることもあります。しかし、売上原価の低減を後回しにしながら、新たな市場を開拓している可能性もあります。
また値引やリベートも、品質が十分に向上するまでの間や、製品やサービスの認知度が高まるまでの間、効果的に利用しながら市場シェアを伸ばしている可能性もあります。
そのため、粗利(売上高総利益率)に差がないのに、売上高の差が開いてきていれば、競合他社の動きに注意する必要があります。