棚卸資産回転率の分析パターン
棚卸資産回転率を分析した結果は、
- 売上高と棚卸資産の大きさが違うだけで棚卸資産回転率が同じパターン
- 売上高の差で棚卸資産回転率に差が出るパターン
- 棚卸資産の差で棚卸資産回転率に差が出るパターン
という3つのパターンに分けることができます。
ここでは、
- 期間比較分析:今年度と前年度のように同じ長さの期間で比較する
- 相互比較分析:自社と競合他社のように複数社間で比較する
の両方の視点で考えてみたいと思います。
売上高と棚卸資産の大きさが違うだけで棚卸資産回転率が同じ場合
まずは下図のように、売上や資産などのボリューム感は変化したものの、棚卸資産回転率や回転期間が同じ場合で考えてみましょう。
もしこのような違いが期間比較(同じ会社の前年度と今年度など)分析で現れた場合は、
- 在庫管理の状況に変化がないまま会社の規模が拡大(または縮小)した
ということになります。
これで少なくとも状況は変わっていないということは想像できますが、棚卸資産回転率が良いのか悪いのかはわかりません。
ここから分析をさらに進めるなら、比較対象を外部に広げる必要があります。
もし産業小分類の平均値や同業他社と比較しても、棚卸資産回転率が近ければ「業界の中では標準的」という可能性が高いでしょう。
そういった場合には焦る必要はありませんが、
- 業界や同業他社の棚卸資産回転率が全体的に低い
ということもあるので、在庫管理や生産管理に改善の余地がないか疑う必要はあります。
売上高の差で棚卸資産回転率に差が出る場合
在庫量が同じだったとしても、売上高に差が出れば、棚卸資産回転率に差が出ます。
もし棚卸資産のボリュームが同じであれば、
- 売上高が大きいほど棚卸資産回転率が高くなる
といえます。
もしこのような売上高による棚卸資産回転率の差が出た場合には、
- 値引やリベートなどの販促施策の変化
- 取り扱う在庫の構成内容の変化
- 取り扱う在庫の売れ行きの変化
などを考えてみると良いかもしれません。
例えば、同じ在庫量を捌いたとしても、値引やリベートなどを行えば売上高の金額は低くなります。そのため、値引やリベートが売上高の増加につながっていなければ、棚卸資産回転率は下がります。
また在庫量に変化がなくても、全体的な売れ行きが鈍化すれば売上高が低下して棚卸資産回転率は下がります。もし全体的な問題がなかったとしても、在庫の構成内容が変化すれば、在庫の金額として変化が現れなくても棚卸資産回転率は変化します。
自社内でこのような変化が起きた場合は、在庫そのものとその売り方について調査が必要です。一方で、競合他社との間に上記のような差があれば、競合他社の売り方や在庫の内訳を比較してみると違いがわかります。
棚卸資産の差で棚卸資産回転率に差が出る場合
売上高が同じだったとしても、棚卸資産に差があれば、棚卸資産回転率にも差が出ます。
もし売上高のボリュームが同じであれば、
- 棚卸資産が小さいほど棚卸資産回転率は高くなる
といえます。
もしこのような棚卸資産による棚卸資産回転率の差が出た場合には、
- 在庫の管理体制そのものの変化
を考えてみると良いかもしれません。
例えば、1年間に売れる金額が変化しなかったとしても、いわゆるトヨタの「カンバン方式」のように必要な時に必要なだけ生産し、必要最低限の在庫量だけ管理するようになれば棚卸資産回転率は大きく改善します。
逆に売れる量が変わらないのに生産しすぎたり仕入れ量が多すぎたりすれば、棚卸資産だけが増えて棚卸資産回転率が悪化します。
もしこのような違いが競合他社との間に現れた場合は、
- 生産管理
- 在庫管理
- 物流管理
などに違いが見られるかもしれません。