有形固定資産回転率とは?計算式と目安となる業種別平均値【2024年発表値】

有形固定資産回転率

有形固定資産回転率の考え方

業種ごとに回転率の差が現れる理由は、

  • 有形固定資産を顧客に使ってもらう「稼働率ビジネス」
  • 有形固定資産で商品を生み出す「生産性ビジネス」
  • 有形固定資産の上で商品が動く「回転率ビジネス」

のいずれかの視点で考えることができます。

有形固定資産回転率が低い「稼働率ビジネス」

ここでの「稼働率ビジネス」とは、

  • 所有する有形固定資産を顧客に効率的に使ってもらうビジネス

と定義します。

具体的には、

  • 不動産賃貸業・管理業
  • 宿泊業

が該当します。

他にも「運輸業・郵便業」に分類される「倉庫業」も有形固定回転率が比較的低い数値を示しています。

これらの事業は、建物や土地といった高額な有形固定資産を顧客に貸し出して、その利用料として売り上げを生み出すビジネスモデルです。

そのため、

  • 顧客が誰も利用しない(稼働していない)期間

には全く売り上げを生み出せません。

そういったことを避けるためにも、顧客に貸し出す有形固定資産は、

  • 常に誰かが使って利用料が発生している状態

を維持すること、つまり、

  • 有形固定資産の稼働率が常に高い状態

を維持することができれば、売上が高まり、有形固定回転率も改善します。

しかしながら、そもそもの有形固定資産の金額が大きく、20年や30年といった長期にわたって利用するため、1年の売上(利用料)が有形固定資産の金額を超えることは滅多にありません。

その結果、年間の有形固定回転率の数値が低くなる傾向にあります。(ただし、減価償却がほとんど終わって、資産価値が無くなっている資産については回転率が高くなります。)

有形固定資産回転率が中程度の「生産性ビジネス」

稼働率ビジネスの有形固定回転率が低くなる一方で、

  • 所有する有形固定資産を利用して商品を生み出すビジネス

である「生産性ビジネス」は、生産効率を高めることで回転率が高くなる傾向にあります。

その中でも代表的な業種は、

  • 製造業

です。

製造業の平均的な有形固定回転率は3回転程度ですが、小分類を見ても回転率が「2〜5回転」と産業内でのバラツキも小さくなっています。

このような生産性ビジネスは、土地や工場といった有形固定資産を有効に使って、より多くの製品を生み出し、たくさん売ることで有形固定回転率を改善することができます。

先ほどの稼働率ビジネスでは、稼働率が100%になってしまえば、それ以上に稼働率を上げることができません。

しかし生産性ビジネスでは設備の稼働率が100%になっても、生産プロセスの見直しや設計の変更、設備の改良といった工夫によって、生産量を高めることが可能です。

他にも先ほどご紹介した「持ち帰り・宅配飲食サービス業」も生産性ビジネスに該当するかと思います。また「飲食業」については稼働率ビジネス(座席の稼働率)と生産性ビジネス(厨房の生産性)の両方の特徴を持ったビジネスと言えます。

有形固定回転率が高い「回転率ビジネス」

有形固定回転率が高くなりやすいのは、

  • 所有する有形固定資産の上で商品やサービスを取り扱うビジネス

である「回転率ビジネス」です。

業種で言えば、

  • 情報通信業:通信設備の上でデジタルデータの商品やサービスを取り扱う
  • 卸売業:所有する倉庫や車両を使って大量の商品の移動を仲介する
  • 小売業:所有する店舗で日々消化される大量の商品を取り扱う

などが該当します。

これらの事業は、有形固定資産の上を商品やサービスが効率よく通過すればするほど売上が高まります。

特に「情報通信業」が扱うのはデジタルデータであるため、物理的な制限が少なく、有形固定回転率が青天井に伸びることもあります。

このように業種や業態によっては、有形固定回転率は業種別平均値を大きく越えた値になることもあります。

ただし、有形固定回転率は単純に「高ければ良い」「低ければ悪い」というわけではありません。業種や業態が持つ特性を踏まえた上で、いかに有形固定資産を効率よく使っているかを考える必要があります。

結局は、どんなビジネスでも、

  • 有形固定資産は最大限活用する
  • 活用できない有形固定資産は処分や売却を検討する

ことを意識することが重要になります。

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