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ネットワーク効果(外部性)とは?具体例で直接的・間接的をわかりやすく図解

クリティカルマス:ネットワーク効果の臨界質量

クリティカルマス(critical mass、臨界量、臨界質量)とは、元々は原子物理学の用語で、原子核分裂が持続するために必要な最少の質量のことです。

ネットワーク効果の文脈では、

  • ネットワーク効果が持続するために必要な最少の利用者の数

という意味になります。

  • 利用者数がクリティカルマスに到達することができない
  • 利用者数がクリティカルマスを下回る

といった場合には、ネットワーク効果が持続しにくいため、市場シェアの拡大に非常に苦戦します。

ネットワーク効果を利用するビジネスでは、このクリティカルマスをどうやって越えるかが、事業拡大の鍵になります。

クリティカルマスに到達するまでの戦略

クリティカルマスを越えるための戦い方は、

  • サービスリリース直後にクリティカルマスに近い(or超える)利用者数を集める
  • ネットワーク効果がなくても価値や効用が生まれるサービスを設計する

の2つに分かれます。

前者は実現可能性が低いのでほとんどの事業者は選びませんが、前述のPayPayの立ち上げのようなケースも稀に存在しています。

後者は、多くの事業者にとって現実的な戦い方になると思います。まずはネットワーク効果が働かなくても、利用者が価値や効用を得られる状況を作り、その間に地道に普及活動を進めます。

競合他社が複数存在する場合には、市場シェアの獲得がクリティカルマスへの到達スピードにかかります。そのため、特にスタートアップの場合は、資金調達が重要になります。

Facebookでの具体例

Facebookは世界一のシェアを誇るSNSに成長しましたが、その成功理由の1つにクリティカルマスのコントロールが挙げられます。

Facebookは、初めはハーバード大学の学生限定のサービスとして、2004年1月に限定リリースされました。当時の学生数 は、学部生が約6,600人、大学院生が約12,000人ほどでしたが、リリース後24時間で1,500人の学生が登録 しました。

さらにリリースから1ヶ月で学部生の半数(3,300人)以上が登録し、ハーバード大学の学部生という限られた市場でクリティカルマスに到達したと言われています。

その後、2004年3月(リリース後2〜3ヶ月)でスタンフォード大学、コロンビア大学、イェール大学とアメリカの一部の名門校にサービスを拡大。今度は4つの名門校という小さな市場の中で、クリティカルマスを維持し続けます。

その後も、アイビーリーグ(アメリカ東海岸の私立名門大学8校)、ボストン地域の大学、全米の大学と徐々に市場を拡大しつつも、常に利用者の数がクリティカルマスを下回らないようにコントロールしながら事業拡大を続けました。

筆者は当時、アメリカに留学中だったのですが、自分の大学もFacebookに対応した途端、短期間でクラスメイトの半数以上が登録していたように記憶しています。

当時は各大学のFacebook内に講義ごとのコミュニティが存在していて、学生同士でその日の宿題の答えや抜き打ちテストの対策を教えあったりしていました。なので、登録や招待の理由も単に「みんなが使っているから」というわけではなく、「宿題が楽になりそう」「試験対策になりそう」という理由が多かったと思います。

今思えば、これがネットワーク効果に頼らない価値や効用であり、ネットワーク効果が機能しない状況でも利用者が増える理由の1つだったのでしょう。

当時は世界的なSNS戦国時代で、Friendster(フレンドスター)、MySpace(マイスペース)、GoogleのOrkut(オーカット)、hi5(ハイファイブ)、そして日本ではmixi(ミクシィ)などがしのぎを削っていましたが、結果はみなさんのご存知のとおり。

もちろんFacebookが躍進した理由は、クリティカルマスのコントロールだけではありません。

しかし、SNSとしては後発組ながら、Facebookがネットワーク効果を発揮し続けることができたことに一役買っていたことは伺えます。

もしFacebookが狙った市場が最初から大きければ、クリティカルマスに達するのに時間がかかりすぎていたでしょうし、途中で失速していたかもしれません。

このように、ネットワーク効果を有効に機能させる場合には、早期にネットワーク効果を得るためにターゲットを限定する、というのも戦略の選択肢となります。

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