模倣困難性とは?VRIO分析で競合に真似されない経営資源

だいぞう

模倣困難性とは、自社の特有の経営資源ケイパビリティに対して、競合他社による「直接的複製(同じやり方をコピーする)」や「代替による模倣(別のやり方でマネる)」などが難しい性質のことです。

もっとわかりやすく表現すると、

  • 競合他社が真似がしにくい自社のビジネスの強み

のことを、

  • 模倣困難性の高い経営資源

と呼ぶことができます。

ここからは、バーニー教授のVRIO分析の考え方を中心に「模倣困難性(もほうこんなんせい)」について解説します。

模倣困難性とVRIO分析

模倣困難性は文字通り、模倣(真似すること)が困難な(難しい)性質ということです。英語では「Inimitability(イニミタビリティ)」と呼びます。

ビジネスはほとんどの場合、

  • ライバルに負けていても良い

ということにはなりませんよね。

ライバルに負けないためには、ライバルを上回る「何か」が必要になります。

それは、営業力だったり、技術力であったり、優秀な人材だったりと、会社によって様々な経営資源を指します。ビジネス用語だと「ケイパビリティ」や「コアコンピタンス」と呼ばれるものです。

コアこピンタンスとケイパビリティ ケイパビリティとコアコンピタンスの違いとは?図解で比較

ケイパビリティやコアコンピタンスのようなライバルを上回る経営資源があれば、戦いを有利に進めることができます。そして、ライバルよりも多くの顧客を獲得できるかもしれません。

そういった経営資源のことを、

  • 競争優位性の高い経営資源

と表現したりします。

補足

「模倣困難性」のよくある間違った使い方は、

  • 模倣困難なビジネスモデル
  • 模倣困難な商品・サービス

といった表現です。

もちろん、日本語としてはまったく間違っていません。

しかし、経営学の文脈で語る場合は、「模倣困難」は「経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)」に対して使われる言葉になります。

つまり、

  • 模倣困難な強み
  • 模倣困難な経営資源

正しい使い方になります。

理由は、後述している経営資源を分析するためのフレームワーク「VRIO分析」やRBV(リソース・ベースト・ビュー)が考え方の根底にあるからです。

しかし、その競争優位な(ライバルを上回っている)状況が、いつまでも永遠に続くとは限りません。

ライバルが真似をしてしまえば、自社の競争優位性がなくなってしまいます。どんなに優れた経営資源であっても、ライバルも手に入れることができるなら、それは「優位」とは言えません

そうならないために重要な考え方が、経営資源の「模倣困難性」、つまり「真似のされにくさ」です。

VRIO分析の3つ目の問い

経営資源を「強み」と「弱み」に分類するためのフレームワークとして、「VRIO(ブリオ)分析」というものがあります。

VRIO分析とは?やり方と具体例をフレームワークでわかりやすく図解

VRIO分析では、

  1. 経済価値への問い:その経営資源は機会や脅威に適応できるか?
  2. 希少性への問い:どれくらい多くの競合がその経営資源を持っているか?
  3. 模倣困難性への問い:同じ経営資源を他社が得るために多くのコストがかかるのか?
  4. 組織への問い:その経営資源を戦略にフル活用できる組織なのか?

という4つの問いに答えることで、経営資源が「強み」なのか「弱み」なのかを判断することができます。

その中の3番目の問いとして登場するのが、「模倣困難性」に対する問いです。

VRIO分析の模倣困難性

VRIO分析の問いかけをフローチャートで表したのが、上記の図になります。

このフローチャートの「獲得にコストが必要?」と書かれているのが、「模倣困難性」に対する問いになります。もう少し詳しく言えば「同じ経営資源を他社が得るために多くのコストがかかるのか?」という内容です。

ちなみに、ここでの「コスト」とは、単に費用のことだけではありません。時間だったり手間暇だったり、その経営資源を手に入れることと引き換えに失うもの全てを指しています。

さらにその次の「組織はそれを活用できる?」という問いの先にあるものが「持続的な独自の強み」です。先ほどの言葉を使うと「持続的な競争優位性」とも言えます。

つまり「強み」の理想的な状態とは、

  • 強みを持っているだけでは不十分

であり、

  • 経営資源が模倣困難
  • 組織がそれを活用できる

状態にあることと言えます。

「強み」が強みであり続けるためには、模倣困難性」はとても重要な要素なのです。

模倣の可能性:3つのパターン

模倣(真似)の可能性には、3つのパターンが存在しています。

それは、

  • 完全に模倣可能
  • 不完全に模倣可能
  • 模倣不可能

の3つです。

完全に模倣可能」とは、様々なコスト(費用や時間)がかかるかからないは別として、全く同じ経営資源を手に入れることができる状態です。これは模倣の可能性として、一番ハードルが低い状態になります。完全に模倣可能な経営資源は、持続的な競争優位であり続けることが非常に難しいと言えます。

不完全に模倣可能」とは、全く同じとまではいかないものの、違った方法で似たような強みを手に入れることができる状態です。これは模倣の可能性としてのハードルは高いですが、こちらも持続的な競争優位であり続けることは難しいかもしれません。

模倣不可能」とは、模倣ができない状態のことです。持続的競争優位としては、この模倣不可能な状態が一番理想的だと言えます。

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