財務分析で数値を出したとしても、比較対象がなければそれが高いのか低いのかわかりません。そのため財務分析では、過去の自社の財務状況との比較だけでなく、競合他社などの財務データとも比較する必要があります。
おすすめの情報源は、
- EDINET(無料)
- 会社四季報(有料)
- 帝国データバンク(有料)
- 中小企業実態基本調査(無料)
- J-Net21(無料)
などです。
ここでは財務分析に使える情報源と、その情報の取得の仕方をわかりやすく説明します。
財務分析に必要な外部の情報
財務分析には、
- 期間比較分析:今年度と前年度のように同じ長さの期間で比較する
- 相互比較分析:自社と競合他社のように複数社間で比較する
- 標準比較分析:自社と業界平均のように標準となる数値と比較する
という3つの比較方法がありますが、「相互比較」や「標準比較」は外部の財務情報を取得しなければいけません。
そのため今回は、
- 上場企業の財務データを探す
- 中小企業・未上場企業の財務データを探す
- 小規模事業者・個人事業主の財務データを探す
という3つのシーンについて解説します。
上場企業の財務データを探す
比較的簡単に手に入るのが上場企業の財務データで、
- EDINET(無料)
- 会社四季報(有料)
が代表的な情報源になります。
もしあなたが上場企業に勤めていて、同じく上場している競合他社との財務分析をするのであれば、上記の情報源が役に立つと思います。
EDINETの有価証券報告書(無料)
上場企業の財務データを無料で手に入れることができるのが金融庁の「EDINET(エディネット、Electronic Disclosure for Investor’s Network)」です。
上場している企業は「有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ、略称:有報)」と呼ばれる書類を必ず提出しなければいけません。
この有価証券報告書などの財務書類の電子データを集めて開示しているのが「EDINET」になります。
参考
EDINET 金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム金融庁
以下が財務データの検索手順になります。
まずEDINETのページを開いたら、「書類検索」というタブを押してください。そして表示されたページに、検索したい企業の名前を入れて検索を行います。
そうすると該当する書類の一覧が表示されるので、その中から「有価証券報告書」を探してみてください。
有価証券報告書を選択すると、下記のようなページが表示されます。
そのページの左のメニューの中から「財務諸表」というリンクを探してクリックすれば、その企業の貸借対照表や損益計算書が表示されます。
ここから財務分析に必要な数字を拾っていけば、分析データの比較に使うことができます。
ちなみに「連結」と書かれているのは、子会社などが含まれている状態です。そのため財務分析に使おうとしているデータが、その会社単体なのかグループの連結の数字なのかも確認が必要です。
もしその会社本体だけの数値を見る場合には、「連結」と書かれていない財務諸表を見つけてください。
また多角化している企業では、トータルの売上高に様々な事業の売上が含まれていることがよくあります。
そういった場合には、有価証券報告書の別のページに「事業セグメントごとの売上」といったような資料が掲載されていることがあるので探してみてください。
東洋経済新報社「会社 四季報」(有料)
「売上高」や「営業利益」といったメジャーな財務情報をはじめとして、様々な財務分析指標と共に簡潔に情報をまとめたのが、東洋経済新報社が発行する「会社 四季報(しきほう)」です。
四季報は有料の書籍ですが、EDINETから頑張ってデータを探すよりも簡単に企業の財務データを参照することができます。
最新の四季報のラインナップと価格については、以下のアフィリエイトリンクよりご確認ください。
中小企業・未上場企業の財務データを探す
中小企業の財務データは上場企業の財務データのように公開されていないので、探すのが難しくなります。
また大企業であっても「未上場」の企業については、先ほどのEDINETで探しても見つかりません。
このような場合には、民間の調査会社が集めたデータを購入する方法があります。
その中でも比較的簡単な手続きで情報を購入できる「帝国データバンク」をご紹介します。
帝国データバンク(有料)
帝国データバンクは、企業の情報を調査している民間の会社です。
帝国データバンクのデータベースには、上場・未上場両方の企業の情報が集められています。すべての企業の情報があるわけではないことと、必ず最新の情報が見つかるわけではないということには注意が必要ですが、多くの企業の情報を見つけることができるはずです。
以下が帝国データバンクで有料の企業情報を取得する手順になります。
まず帝国データバンクのホームページのメニューから「TDB企業サーチ」というページを探して移動してください。
TDB企業サーチのページが表示されたら、検索したい企業名を入力して「検索」ボタンを押すと、その下に企業名が一覧で表示されます。
そして該当する企業の情報が表示されれば、その情報を購入することができます。
ちなみに同様の民間調査会社としては「東京商工リサーチ」も有名です。
しかし帝国データバンクほど気軽に企業データをダウンロードできる仕組みがなさそうなので(見逃してたらごめんなさい。)、まずは帝国データバンクを確認してみるのが良いかもしれません。
中小企業実態基本調査(無料)
「中小企業実態基本調査」とは、中小企業庁が定期的に行っている調査とその調査結果のことです。
この中小企業実態基本調査では、産業別に財務データがまとめられているので「平均値」などを探すのに向いている資料になります。
統計資料は下記のページから、無料でダウンロードすることができます。
ちなみに財務データについては、上記のページを開いて、
- 確報
- 年次
- 調査の概要
を開くと表示されます。
これらのものは毎年のようにデータが更新されているので、最新の情報を確認することで業界ごとの経営環境を確認することができます。
小規模事業者・個人事業主の財務データを探す
小規模事業者や個人事業主の財務データについては、手に入れることがほぼ不可能です。
なぜなら先ほどの民間の調査会社などの調査があっても、規模の小さい会社の多くは調査協力しないからです。そのため調査会社のデータベースを検索しても、データが存在していないことが多いのです。
では財務分析ができないのか?と言えば、そうでもありません。
業種ごとの典型的な収支モデルから標準的な財務分析指標を計算すれば、小規模な事業であってもある程度の財務分析が可能になります。
J-Net21「業種別開業ガイド」(無料)
業種別の典型的な収支モデルを公開しているのが、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)の運営する「J-Net21」です。
参考
J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト中小企業基盤整備機構
こちらのサイトでは、業種別の開業ガイドの中に「モデル収支例」が掲載されていて、財務分析の参考にすることができます。
以下がJ-Net21で収支モデルを探す手順です。
まずJ-Net21のホームページの左上の「メニュー」から「起業・創業に役立つ情報」をクリックしてください。
そして移動したページの真ん中あたりにある「業種別開業ガイド」を選択します。
そうすると業種別の目次が表示されるので、その中から目的の業種を見つけてください。
業種のページが表示されたら、ページの下の方に売上計画の例として収支のモデルが見つかるはずです。
このような数字を使えば、簡易的にいくつかの財務分析指標を計算することができます。
小規模事業者や個人事業主の収支モデルについては、気休め程度の情報かもしれませんが、大まかな数字のイメージは掴めるはずです。