規模の経済とは?固定費が減る理由とメリット・デメリット・具体例

規模の経済の具体例

現実の事例としては「液晶パネル」が該当するかもしません。

1990年代後半までは、日本製の液晶パネルが世界を圧倒していました。韓国メーカーが追随していたものの、生産量は日本の半分ほどです。

しかし2000年代に入り、世界的に液晶の需要は低迷します。

多くの日本メーカーは、液晶パネルの生産設備の投資を控えました。それでも投資を行っていたのは、シャープの亀山工場くらいで、2000年代に入ってから日本の液晶パネル生産量は横ばいになります。

その隙をついたのが、韓国・台湾の液晶パネルメーカーでした。

韓国メーカーは液晶パネル生産工場への、さらなる大規模な投資を行います。それに続くように、台湾メーカーも液晶パネル生産への大規模投資を行いました。

そして2002年には、韓国も台湾も液晶パネルの生産能力が日本に追いつきます。

その後も、韓国・台湾のメーカーは継続的な設備投資を続け、2006年には日本の生産パネルの世界シェアは10%にまで落ち込んでしまいました。

このような結果になったのは、韓国や台湾メーカーが国を挙げて大規模な投資を継続的に行い、規模の経済の効果を最大限に引き出したからです。

日本の生産能力を超える頃には、韓国・台湾メーカーは日本より安価に大量の液晶パネルを生産できるようになりました。また同じものをたくさん作ることで得られる「経験曲線効果」も相まって、品質も大幅に高めることができました。

その結果、日本の液晶パネルメーカーは、韓国・台湾メーカーに負けることとなったのです。

補足

厳密にいえば、この話を「規模の経済」だけで説明することはできません。

各国の政策や制度の影響、技術的な要素、半導体などの他の事業の動きなどなど、複雑な要因が組み合わさっています。

しかし規模の経済を実現するための投資の失敗によるダメージは、小さくなかったと考えられます。

サービス業や小売業における規模の経済

上記の事例では製造業を取り上げましたが、サービス業や小売業でも同様に規模の経済性が現れます。

例えば、1つの店舗のサイズを大きくすることで一坪あたりの運営コストが下がったり、集客力の向上で顧客を獲得するコストが下がったりします。

また同じ店舗を量産するチェーン展開では、物流センターやセントラルキッチンなどの固定費を共有することで、1店舗あたりの運営コストを大きく引き下げることができます。

生産でもサービス提供でも、供給量が増えることで1単位あたりの固定費が減れば「規模の経済」と呼べます。

あとは、前述したように「フランチャイズ(FC)」という形で、運営ノウハウなどの「情報」そのものを商品として売ることで、規模の経済を効かせるという方法も存在します。

範囲の経済や経験曲線効果と規模の経済の違い

似ている経済用語として「範囲の経済」があります。範囲の経済は、複数の事業を別々の企業がやるより、1つの企業でまとめてやる方が効率的にできるという考え方です。

もう一つ混同されやすい用語として「経験曲線効果」というものがあります。経験曲線効果は、同じものを作れば作るほど経験値が蓄積され、生産効率が改善する効果のことです。規模の経済は「固定費」が関係していましたが、経験曲線効果では関係ありません。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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