規模の経済とは?固定費が減る理由とメリット・デメリット・具体例

規模の経済のデメリット

しかし規模の経済もメリットばかりではありません。規模の経済を実現するための大きな初期投資は、大きなリスクにもなります。

初期投資の大きさ=リスクの大きさ

規模の経済を求めるためには、大量に生産できる機械や設備に投資する必要があります。業界にもよりますが、最初に数億とか数十億の投資が必要なビジネスもあります。

もちろん必ず儲かるとわかっている商売なら、銀行もお金を貸してくれるかもしれません。でも世の中には「必ず」というようなビジネスは存在しません。

もし仮に銀行がお金を貸してくれたとしても、初期投資を回収する前に製品が売れなくなってしまえば、大きな負債を抱えてしまうリスクがあります。

つまり、

  • 小さい初期投資の規模の経済 < 大きい初期投資の規模の経済
  • 小さい初期投資の失敗リスク < 大きい初期投資の失敗リスク

というように、投資が大きければ規模の経済性も大きくなりますが、その分失敗した時のリスクも大きくなってしまいます。

補足

実は、初期投資をしなくても規模の経済を生み出す方法があるんです。しかも、どんな業種にも対応できる魔法のような方法が。

それは「フランチャイズ(FC)」方式を採用して、FC本部になること。特定のノウハウ一式をパッケージ化して「加盟店」という商品を大量生産するのです。つまり「情報」の規模の経済性です。

店舗や工場の投資は加盟店のオーナーが支払うので、資金調達のリスクはありません。さらに加盟料やロイヤリティまで受け取れます。

…ではデメリットが無いかというと、そうではありません。一番怖いのは訴訟リスクです。儲かっているときはみんなハッピーですが、儲からなくなったときには加盟店から訴えられる可能性も。やはり簡単にローリスク・ハイリターンというわけにはいきません。

売れなくなると赤字が爆発的に増える

こちらは最初のメリットの裏返しです。順調に売れている時は、利益がたくさん出て儲かりますが、売れなくなった途端に大きな赤字が発生します。

先ほどの例と同様に200円で売れるお菓子を作っているとします。今度は景気が悪くなり、今まで1万個売れていたものが5,000個しか売れなくなりました。

5,000個つくる場合の変動費は 10円 × 5,000個 = 50,000円 です。固定費 100万円は変わりません。

  • 変動費 50,000円 + 固定費 1,000,000円 = 総費用 1,050,000円
  • 総費用 1,050,000円 ÷ 生産量 5,000個 = 平均費用 210円

1個あたりの平均費用が 110円だったのが210円に上がってしまいました。

この平均費用だとお菓子1つあたりの利益は、

  • 1万個作った時:売値 200円 ー 費用 110円 = 利益 90円
  • 5千個作った時:売値 200円 ー 費用 210円 = 赤字 -10円

となりました。5,000個全て売り切っても 5万円の赤字になります。

だいぞう

それなりの数が売れても赤字に…。売れる量が半分になっただけで、利益はマイナスにってしまいますね。

もしもっと景気が悪くて 1,000個しか売れなかった場合はどうでしょうか? 1,000個つくる場合の変動費は 10円 × 1,000個 = 10,000円 です。

  • 変動費 10,000円 + 固定費 1,000,000円 = 総費用 1,010,000円
  • 総費用 1,010,000円 ÷ 生産量 1,000個 = 平均費用 1,010円

1個あたりの平均費用が 110円だったのが1,010円に上がってしまいました。

この平均費用だとお菓子1つあたりの利益は、

  • 1万個作った時:売値 200円 ー 費用 110円 = 利益 90円
  • 千個作った時:売値 200円 ー 費用 1,010円 = 赤字 -810円

となりました。1,000個全て売り切っても 81万円の赤字になります。

つまり売れなければ、固定費の費用がそのまま赤字になってしまうのです。

だいぞう

たくさん売れたらたくさん儲かりますが、売れなくなった時が大変…。固定費の割合が大きいとハイリスク・ハイリターンになることがわかります。

規模の不経済の影響

最初の方で説明した、規模の経済の逆の効果である「規模の不経済」も起こることがあります。

例えば先ほどのお菓子を生産する機械の生産量の限界が、10万個だったとします。

10万個以上生産したければ、2台目の機会を買う必要があります。つまり固定費が更に100万円増えるということです。

ということでお菓子を10万個生産した場合と、12万個生産した場合でお菓子1つあたりの平均費用を比べてみましょう。ちなみに10万個生産した場合の平均費用は 20円でした。

120,000個つくる場合の変動費は 10円 × 120,000個 = 1,200,000円 です。機械は2台必要になるため、固定費は 1,000,000円 × 2台 = 2,000,000円になります。

  • 変動費 1,200,000円 + 固定費 2,000,000円 = 総費用 3,200,000円
  • 総費用 3,200,000円 ÷ 生産量 120,000個 = 平均費用 26.66…円

生産量を増やしたのに、1個あたりの平均費用が 20円だったのが約27円に上がってしまいました。

これが規模の不経済です。

この他にも作業する人が増えると、人員の管理費用が増えたり、場所を確保するための賃料や、作った製品を置いておくための在庫費用などなど、生産量を増やすと他の費用も大きく増えることがあります。

1 2 3 4 5 6