規模の経済・範囲の経済・経験曲線効果の違いとは?図解すると一目瞭然

範囲の経済

範囲の経済(Economies of scope、エコノミーズ・オブ・スコープ)は、1つの会社で複数の製品を作ることで、別々の会社でそれぞれの製品を作るよりコストが下がる状況のことです。「範囲の経済性」とも呼ばれます。

製品を作る時の費用は、

  • 製品の変動費:その製品を1つ作るために必要な原材料などの費用
  • 製品の固定費:その製品を加工するために必要な機械設備などの費用
  • 会社全体の固定費:生産以外の事務、人事、広告、販売などの費用

です。

  • 製品Aだけしか作らないA社
  • 製品Bだけしか作らないB社

の2社があるとします。それぞれ、製品1個あたりの変動費を1円(下図、白色)、製品を作るための固定費を5円(下図、グレー)、そのほか会社全体で必要な固定費を10円(下図、水色)とします。それぞれの会社で事務、人事、広告、販売などの生産に直接関係しない費用が発生しています。

範囲の経済:バラバラに作った場合

それぞれの固定費は、製品を生産した数で分割されます。A社が製品Aを5個作った場合の、製品1個あたりの費用は4円になりました。B社も同様です。

次にC社も見てみましょう。C社は製品Aも製品Bも生産しています。C社は製品を作る以外の費用は、製品Aと製品Bで共通化できます。製品を2種類作るからといって、社長は2人も必要ありません。

範囲の経済:1社で作った場合

製品ごとの変動費や固定費は、作った製品の数で分割されます。さらに会社全体でかかる固定費は、全ての製品で分割されます。

その結果、製品Aも製品Bも製品1個あたりの費用は3円になりました。これは先ほどの、別々の企業が作った場合より安くなっています。単純に価格競争になってしまうと、A社もB社もC社には負けてしまいます。これが「範囲の経済」の効果です。ビジネスの範囲を広げることで、コストが削減されます。

これをグラフで表すと下記のようになります。

範囲の経済:バラバラに作った場合のグラフ

別々の会社で別々の製品を作った場合の、製品1個あたりの費用をC1とします。

これら2つの製品を、1つの会社が作って範囲の経済の効果が現れると、下記のグラフのようになります。

範囲の経済:1社が作った場合のグラフ

製品Aと製品Bのどちらにも必要な固定費などが、共有することで分割されました。その結果、製品1個あたりの固定費も削減され、費用が C1 から C2 に下がりました。

大企業が中小企業よりもコスト面で有利なのは、先ほどの規模の経済だけでなく、範囲の経済の効果も聞いていると言えます。

ちなみに様々な製品を作ることで、逆に費用がかさんでしまう状態を「範囲の不経済」と呼びます。範囲の不経済についてはこちらの記事も参考にしてください。

経験曲線効果

経験曲線効果(Experience curve effects)とは、経験値が積み上げられることで効率が向上して、コストの削減効果が生まれることです。「経験効果」とも呼ばれます。

2つの部品を組み合わせて、1つの製品を作るとします。部品はそれぞれ1円で、製品10個分の部品が用意されています。

経験曲線効果:初めて作った時

当然初めて作った時には慣れていないため、すべて上手く作れるとは限りません。試行錯誤しながら部品を組み合わせ、製品10個分の部品で販売できる状態のものが5個完成しました。残りの5個は不良品で廃棄することになりました。

つまり10個分の材料費20円で、5個完成したので製品1個あたりの費用は4円です。

それからしばらく同じ製品を作り続けました。部品を組み合わせるコツをつかみ、失敗しやすい作業は工夫をしました。そしてたくさんの経験を積んだことで、最初の頃より確実に、しかも早く作れるようになりました。

経験曲線効果:経験を積んだ後

最初の頃のように失敗をすることは滅多になくなりました。製品10個の材料を用意すれば、売ることのできる製品を10個完成させることができます。

つまり10個分の材料費20円で、10個完成したので製品1個あたりの費用は2円です。最初の頃と比べて、製品1個あたりの費用が半分になりました。これが「経験曲線効果」です。

グラフで表してみると下記のようになります。

経験曲線効果のグラフ

経験を積んだことで、無駄が減って製品1個あたりの費用が C1 から C2 に下がりました。この経験はどの生産量でも活かすことができます。新しい工場を作ったとしても、経験曲線効果は失われません。

経験曲線効果のより詳しい説明は、下記の記事をご覧ください。

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